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第2章
第18話 スペシャルステージ
しおりを挟むガコッ
ゆきのマイクが床に落ちた。
袖から見守っていたマネージャーは異変に気づいた。
「ゆき……!?」
観客も異変に気づき、静まりかえっている。
どうする、ゆきを止めに会場に出る?それとも…… マネージャーが考えを巡らせていると。
フッと、会場が真っ暗になった。
「え」
暗闇の中マネージャーの横を何者かが通り過ぎる。
「あなた……」
「下がっていなさい。あとはワタクシがやる」
「……!!……悪いわね。任せるわ」
「……フっ」
気品と自信に溢れ出すその声の主をマネージャーは知っている。ある意味ではこの業界において誰よりも信頼できるの者。
マネージャーは彼女にこの場を任せることにした。
……
暗闇の中、彼女、金城まおは、ゆきに近づく。
そして、静まった会場の中。まおはゆきにだけ聴こえる声で語りかける。
「あなた……その様子じゃあ、まだ、ダメみたいね」
「まお、ちゃん……私……」
「何も言わなくていい。この場は私がおさめる。今は歌う必要もない。だだ、ほんの少し付き合って貰うわよ。……いける?」
「……うん。……大丈夫。ありがとう。まおちゃん」
「…私が色々やっているうちに呼吸を整えておきなさい。……それじゃあ。いくわよ」
再び会場にあかりが灯る。
ステージには、月城ゆき、そして金城まおの2人が並ぶ。
え、まお様…? てかさっきゆきちゃんの様子変じゃなかった?2人が一緒にいるなんてレアだわ…!
突然の事に会場は混乱する。
金城まおはその手に持つ剣を天に向けて叫ぶ。
「本日は、スペシャルステージよ!!!」
おおおおおーとどよめき。
「月城ゆきvs金城まお、インザリアル!…映画では味わえない、本物の闘いの世界を、あなたたちに見せて上げるわ!!」
ぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおと会場が湧く
な、なんだってー? まさかのコラボステージ!?ゆきたんとまお様の闘いが生で……!?んなのコンサートなんかより激レアじゃねーか!!
会場から様々な歓喜の声が上がる。
ゆきとまお、それぞれがトップの人気を誇るアイドルだが、その方向性の違いにより。2人が同じステージに立つことはほとんどない。
それだけにこのコラボはファンにとって衝撃的なことだった。
金城まおは叫ぶ
「さあ、たちなさい、月城ゆき……!そして、私と闘うのよ!……金城まおは、アナタに決闘を申し込むわ!」
「まおちゃん……。……うん。わかったよ。受けて、たつよ」
ゆきは答えた。2人の決闘が、正式に決まった。
……
ゆきの落としたマイクを中心に2人は、向かい合い位置に着いた。
「月城ゆき……あなたにマイクは握らせない。今日こそ、私があなたを倒し、この、金城まおが。トップアイドルへの1歩を踏みしめるのよ…!」
「まおちゃん……。うん。まおちゃんの本気の気持ち、伝わってるよ……、だから。私、本気で、闘うよ!」
その言葉が皮切りに、2人のバトルが始まった。
ゆきは、能力で空中に星の欠片をだし、そしてそれを勢いよく飛ばす。そのスピードは流れ星を連想させた。
金城まおは、自身の剣で、星の欠片をカキン、カキンと音を響かせ、弾き飛ばす。
その飛ばされた星の欠片は観客の方へとんでいく。
観客の誰もが、それは私のだ、いいえ私のよと、ソレを手に取ろうとする。
観客側では、星をかけた、新たなるバトルが勃発した。
金城まおは光の玉をゆきに飛ばす。
ゆきは、玉を交わす。玉は床に落ちるとドォンと小規模な爆発を起こす。
ゆきが玉に気を取られる間に
金城まおはゆきに近づき剣を振るう。
月城ゆきは、能力、星のきらめき(スターフィールド)の結界を左手に纏う。
ソれは盾のような形となり、金城まおの剣から、ゆきを守った。
ガキィンと剣と盾が弾かれ2人はその衝撃で後ろに飛ばされる。
……
ゆきは、会場の観客を見る。
金城まおによる攻撃の激しさのおかげで、さっきのような、フラッシュバックを起こすこともなくなった。だが、それでも、ゆきは、不安な気持ちを捨てきらなかった。
そんなゆきのもとへ、容赦なく金城まおの攻撃はやってくる。
「くっ」
まおの放つ剣型の金色に輝く小さな閃光弾。それをゆきは、自身の周りに星のきらめき(スターフィールド)で結界を展開して防ぐ。
ドォンドォンドォン!!と白い爆発が辺りに広がる。
煙が落ち着いたとき、金城まおは再び、ゆきの目の前に立っていた。
「は」
「余所見している場合?」
ガキィンと剣と盾が交わる音がなる。
「くっまおちゃん…!」
「そんなんじゃあ、全力だせないわよ!いまは、ワタクシにだけ集中しなさい!!」
ガキィンと、再び剣と盾が衝突した。
その後も2人の戦闘は続いた。
剣と盾と、それぞれの光の玉がステージを縦横無尽に駆け回る激しくそして美しい攻防。
薄暗い会場で輝く2人の輝きを纏う闘いは、見るもの全てを圧倒させた。
「ゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
「やあああああああああああああああああああああ」
2人は、ただひたすらに全力で闘い続けた。
まるで、なにかを振り切ろうとするかのように・・・。
そして……
「くっ…………こんな、はずでは。ゆ、き……」
ドサッ
金城まおは倒れた。
そして、
「うっ……、まお、ちゃ……ん……」
金城まおが倒れた後に、月城ゆきも倒れた。
戦いは、決した。
…………
一瞬の沈黙、そして。
わあああああああああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ
会場から歓声があがる。
相打ちだああああああああああああぁぁぁ
まじかよぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおお歴史的保存版だこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
大きな歓声が湧き上がる中
マネージャーがステージに立ち言った
「えーという訳で、本日のステージは終了となります。えー、私は、ゆきのマネージャーです。……ハプニングもあり予定外の内容になってしまいましたが、皆さんいかがでしたでしょうか……って、この歓声なら、聞く必要もなさそうね。…それでは本日は特別に、2人に変わって私から。……皆様、本日は誠にありがとうございました」
2人とも動けなくなってしまったので、仕方なくマネージャーがステージにたちその場を収めて本日のステージは終了となった。
うおおおおぉぉぉおおおおおぉぉおおおおおまお様ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁゆきちゃあああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁんマネージャーかわいいぃぃぃぃいいいいいいいいいいい
その日の歓声はなかなかやまなかったという。
…………
スペシャルステージ後、
月城ゆきと金城まおは、翼プロ前で向かい合っていた。
「……まおちゃん、今日は、ありがとう」
「…………フン。そんな腑抜けたアナタの顔を見に来たんじゃないわ、私は。……さっさと。戻ってきなさい……」
「……うん」
そして、金城まおは去っていった。
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