昭和アウトローガールズ☆

くとぉ

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5章 報復と服従 

③タイマン

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三人の一年生達は、呼び出した相手を見るなり、その美貌に少し驚き…

それから…少し舐めた雰囲気になり、くだけた態度を取り始めた。

礼子を良く知らないのだろう。

ここに来るまでの間、クラスメイトに売られた喪失感そうしつかんや不安感、教師に平然と脅しをかける小柄な三年生と、後ろから今にも飛び掛からんばかりに睨みつけてくる赤く髪を染めた二年生に圧を掛けられ…

他二人に囲まれ、戦々恐々(せんせんきょうきょう)とした心地だったのだが、香の横に立つ、背の高い長く美しい黒髪の美少女の服装を見て少々気が抜けてしまった。

不良の格好では無い。

制服やスカートは学校指定の物で特に改造の跡も無い。

この二年生には見覚えがあった。

学校の校庭か何かで、何度か見かけた事がある。

他の一年の男子が噂をしていた。

二年生に凄い美女がいるといった話しも聞いた事があった。

だが…今間近で見ても、その美貌以外は、標準の制服を着た一般生徒にしか見えない。

この女を説得して、周りで怖い顔をしている上級生の囲みさえ解けば、ここから離れる事が出来る。

そう……舐めた事を思っていた。

「貴女達が香をハメた子達で間違いないわね?」

冷たい眼差しの美少女が言葉を放つ。

その見た目とは違う…いや見た目通りか?

威圧感に少々気圧されはしたが、所詮は不良では無いとタカをくくる。

普通の生徒だと自身に言い聞かせ、いいわけを始めた。

状況からして五人を従えてる時点で普通ではない。

……だが……

礼子が普通の二年生であってくれなければ、自分達の身が危ない。

そう思い込む事が。彼女達が唯一現状で縋りつける希望なのだ。

黒髪にピアスの…山田麻希が言い訳を始める。

「え、あ…えっとぉ~ちょっとした…いたずらって言うか…ねぇ…」

続いて赤茶髪の加藤恵が補足しつつ様子を伺う。

「ね~!香って可愛いからぁ~少しからかっただけなんスよぉ~」

紫髪の小柄な市川詩織は…二人に追随する。

「そうそう!別にそんなつも…」

最後まで言い切る事は出来なかった。

紫髪の娘は小刻みに身体を震わせる事になり、その後の言い訳を喋る事が出来なかったのだ。

紫髪の娘が釈明の途中に、黒髪の二年生が近くに来る姿を見た。

視界から外れた直後、すぐに激しい炸裂音が屋上に響き、三人の真ん中…先頭にいた仲間の山田が数メートル吹っ飛んだ。

礼子がスタスタと近づいて来るのは頭で理解はしていた。

釈明の途中で暴力を振るわれるとは思ってもいなかったのか?舐めていたのか?礼子のビンタが早過ぎたのか?

「え?!?」

ピアス穴を開けたリーダーらしい一年生が屋上の床の上に激しく吹っ飛ぶ。

数秒後、目に涙を浮かべながらもヨロヨロと身を起こす。

吹っ飛んだお陰で逆にダメージが軽減されたのかも知れない。

礼子は残った二人を指差し、ゆかりと加代子に命令する。

「ゆかり、加代子、その子達の身体抑えといて!」

唯と瑞稀に指示しないのは二人とも非力だと知っているから。

街の娘は案外大した事が無い。

かつて自分が千里達三人に抵抗するだけの知識や勇気があればと…時々にでは有るが、そんな意味の無い事も考えた事もある。

しかし、あの時の礼子は何も知らない温室から出たばかりの雛鳥ひなどりでしか無かったのだから、今更考えても仕方の無い事ではある。

ゆかりと加代子が二人を羽交い締めにする。

礼子はクスクスと笑いながら羽交い締めにされた二人に刑の執行を告げる。

「貴女達の言い訳なんて、どうでも良いの、ここは裁判所さいばんしょじゃなくて執行台しっこうだいなんだから、一体何を勘違かんちがいしていたの?」

二人の少女は絶望し後悔していた。

気に入らないくらいであんな事するんじゃ無かった。

あの強烈なビンタをこれから食らうのだと思うと足の力が抜け、膝がガクガクと震え出す。

それでもまだ甘い事を考えていた。

これが終われば開放される。

と…。

「おい!テメェ!」

最初にふっ飛ばされたピアスの麻希が、目に涙を滲ませ恫喝気味どうかつぎみに叫ぶ。

礼子がそちらの方振り返る。

娘の顔には手の跡が赤く付き、目に涙を滲ませ怒りをぶつけるが如く、礼子を脅しにかかる。

「こんなコトして!ただで済むと思ってんじゃないよ!ウチらの先輩が……清美ちゃんが黙って無いから!」

礼子にはその名前に心当たりがあった。

力を持っていて、下級生に名前を出される程の存在は、あの清美しかいない。

一年前の、あの屋上に召集で集まった当時の一年生の一人でも有る。

礼子の同学年、現在の二年生の女子の中で暫定ざんていトップと目されている女、男の様な見た目で、吉野と同じ二中出身だとも聞いた事が有る。

かなり荒っぽく、仲間は少ないが皆恐れている。

最近はC組とも揉めていた筈…

彼女達は礼子を避けているが、それは礼子を恐れての事では無い。

吉野や絵美が恐ろしいのと、単にあの光景がトラウマだからだろう。

礼子をけながらも舐めているフシがある。

廊下ですれ違えば態度で解る。

目つきで理解出来る。

そう、吉野の女でさえ無ければ…と。

実の所、吉野とは卒業式の日にキチンと別れている。

二人で話し合っての事で、そこに軋轢あつれきや何かがあったわけでは無い。

だが吉野の提案で一年ほどこの事は伏せておけ、と礼子や周囲の者に言い含めて、その事は伏せられたままになっていた。

(ラッキー♪こんなところで接点が出来るなんて!あの娘を叩けば…正樹さんの言う通りの存在になれる日も近い…フフ♪)

礼子はいい機会だと薄く笑い、唯と瑞稀に命じる。

「ちょっと2ーDへ行って菅原さん連れて来てくれる?この子達の先輩にも責任取って貰わないとね~♪」

そして、残りの二人の方に振り向くと思い切り手を振り上げ、それぞれの頬に平手を打ち下ろした。

屋上に二人の一年生の泣き声と派手な炸裂音が響く…



 ◆ ◆ ◆





授業中の二年D組の教室に、突然入って来た二人の生徒が、教師を無視して一人の不良娘の机の前に歩み寄る。

「あ、あの~」

「ちょ!バカ!ちげぇだろっ!もういい!私が話す!」

控えめに…間抜けな声を掛けようとする瑞稀を軽く蹴り。唯が前に出る。

「よぉ、菅原ぁ~?あんたの後輩の事で話があるんだけどさぁ~?ちょい顔貸してくんない?」

見覚えのある三年生の顔を見て嫌そうな、小馬鹿にした様な態度で答えるのは、男の様に短く刈った金髪に染め上げた少々イカつめの…いかにもな女子生徒。

このクラスは最も武闘派ふとうはが多く、序列が定まるまでかなりの期間を要した。

彼女は、二年D組の女子のトップ。

吉野と同じく山間第二中学出身の菅原清美…山間の他の中学だけでは無く尾形市にもその名を知る者が居るそれなりに有名な不良少女…

今の三年の女子に有名どころが居ない為、ポスト【チョーパンの絵美】の呼び声も高い。

「ぁあ!面倒くせぇなぁ!なんなんスカ…まぁ良いけど、っか後輩って誰よ、あんま時間取らせねぇで下さいよ…栗原先輩…」

彼女は席を立上がり、教師を無視し、二人に着いて教室を出て行った。



 ◆ ◆ ◆



二人の後に着いて来た菅原清美すがわらきよみが見たのは……

一年前の夏休みの光景が脳裏のうりに過る。

今…目の前には…

頬を赤く腫らし、涙に濡れ、全裸で正座させられている同じ第二中学出身の後輩達だった。

「先輩!」

「清美ちゃ~ん……ぅぅ」

「ひん…せんぱい…」

清美は凍りつき、愕然がくぜんとした。

が…すぐに短く刈り上げた金色の髪を震わせ怒りを吐き出し、同学年の女子から煙たがられている厄介な美少女を睨みつける。

「おい!篠田!どう言う事だ!」

「お仕置きだけど?…香にあんな事したんだから当然じゃない?」

ゆかり、加代子、瑞稀は知っている。

この菅原清美は二年のヤンキー娘達の中で暫定トップと言って良い存在だからだ。

「あんな事?そいつ等が何かやったんなら仕方ねぇ、ウチはお前と関わるつもりもねぇんだ。殴られてるみたいだし、制裁はもう良いだろ?…連れて行くよ…」

清美は吉野がまだ怖いのか、少し腰が引けている。

これでは礼子の目的は果たせない…

礼子はあざける様に嗤いわらい、清美を挑発する。

「駄目よ!この子達にはこれから香に謝って貰わなくちゃ…地面に頭を擦り付けてね♪」

「……篠田ァ!………テメェェ゙……」

更に挑発を繰り返す礼子。

(後少しかな?…)

「あ!そうだ♪校庭でこのまま走らせようかしら!!!」

礼子の度重なる挑発が功を奏し、清美は落とし穴に落ちようとしている。

真っ赤な落とし穴に…

「篠田ァ!!調子に乗んなよ!吉野さんの女だから手ぇ出さないでやってたのにっ!…テメェは!…この田舎モンが!…シャバい格好しやがって!裸にひん剥いて顔面潰してやんよ!」

(やった♪乗ってくれた♪)

清美は大股に歩み寄り礼子の胸ぐらを掴み…

そして礼子の顔面…鼻を狙って拳を突き入れる!

鈍い音がした。

…が、狙いは少し外れ、礼子の唇が切れ、少量の血が垂れる。

(あ、やっぱり♪……この子…大した事無い♪)

「あぁ!ニヤついてんじゃねー!」

礼子がニヤついているのを見て清美は更にもう一撃入れようと右の拳をふり上げた。

だが…それは不発に終わる。

「捕まえた♪」

礼子は清美の左腕をガッチリ掴むと、そのまま力付くで掴まれた胸元から引き剥がす…

セーラーのリボンがそのまま抜けたが気にしない。

「ゔぉぉおぉぉぉ!離せぇ!」

礼子は切れた唇から流れた血をペロリと舐める。

「離せと言われて離す人いるぅ~?喧嘩の最中だよっ!」

清美は予想もしていなかった力で、左腕の中程を上に掴み上げられ、背が高い礼子に片腕が吊るされたバランスの悪い状態で力も入らず、礼子の予想外の怪力に身動きも出来ない。

「クソッ!オラァ!」

なんとか抵抗しようと右の拳で礼子の顎の辺りを打つが…

「痛っ!あ~あ、痣になるかも…じゃあ…お返しね…っ!」

そう言い放ち、勢いを付けて清美の顔面にビンタを入れる。

腰が入って無いのか、先ほど一年生が食らった一撃程では無いが、充分に強烈な一撃で、顔面に手の平の跡が付き、清美の頬が赤く染まる。

「!ガァッ!!!」

苦痛と怒りで、火の様な視線を礼子に送るが………

二撃目で抵抗する気力は奪われた。

「ギィっ!」

三撃目で清美の目から涙が溢れる。

「ひぃ!」

四撃目で当たりどころが悪く、鼻から血が吹き出した。

「…あ…がぁ…」

五撃目で礼子の取巻きからも呻きが聞こえた。

「れ、礼子様…」

「うわぁ…」

「もうそのくらいで…」

「酷い…」

「あ…あの…先輩…」

そして六撃目…

「も…も、う、やめてぇ…わかっ、た、から…」

礼子は清美の顔を覗き込み…

「んー?わかったってなにがぁ~?これは私と貴女のタイマン?の結果でしょう?あの子達を許して欲しければ貴女もちょっと考えないとね♪」

そう清美に告げ、七回目のビンタをお見舞いする。

「な、何でもするからぁ…もう止めて…顔が、壊れちゃう…ぅ、ぅ、ぅ…」

礼子は清美から言質を取ると、唯を手招きし耳元で何事か指示する。

「確か体育教官室にポラ………」

「キシシ♪はい!礼子様♪」

唯が屋上の扉を開けて階段の下に駆けて行く…

そして、啜り泣く清美の左手を掴んだまま引きずり…

全裸で正座している三人の一年生の前に放り出した。

二年の女子の暫定トップと呼ばれていた清美の無残な姿。

瑞稀が顔を青くさせた、並外れた礼子の、篠田家の遺伝の力をモロに食らったのだ。

吉野正樹の自室のパイプベッドには、今も礼子が処女喪失の痛みに耐えて残した微かな凹みと壊れた柵が残っている。

この清美とのタイマンの結果はは、山間の【お嬢】…やがては【恐怖の女帝】へ至る、その切っ掛けであったかも知れない。

    
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