魔術師の少女が仕事にも恋愛にも全力でぶつかっていくお話。

imu

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兄と妹。※

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※多少残酷表現あり。
____________________



「ねぇ、セシリア、いつも思うのだけど、なんで貴女は攻撃特化で魔術師に登録しているの?」

「え?どうしたんですか、いきなり。」

「だって貴女、どちらかと言うと治癒系の魔術の方が得意じゃない?」

「…そうですね、前線に立ちたかった、って言う理由じゃ納得してくれませんよね。」

「うん。」

「えっと…話せば長くなるんですが…それは……。」




___________

_____

それは、今から14年程前。


ヨシュクラダンカ王国の東の森のさらに奥。

隣国との国境付近に位置するその小さな村は、村人が30名ほどの小さな村だった。

産まれながらに魔力を持っていた私は、魔力を持っていなかった両親から気味悪がれ棄てられたのだと、そう村の者に教えられた。

その私を森の中で見つけ、育ててくれたおばあさんは、私が3つの時に亡くなった。老衰だった。

だがそれも、お前が来たからだと、そんな力があるからだ、と、まだ、魔力が、魔術が理解されていないこの村では、呪いだと、私を嘲罵した。

幸運だったのは、触れることを恐れられ、酷い暴力はふるわれず、おばあさんの家を追い出されなかった事だろうか。


そんな日々が数ヶ月続いた。

川の水を飲み、忌み嫌われる魔術を使い、動物を仕留める。ただ、火で焼くだけのそれは、味気なく、偶に獣臭かった。

たまに村人に見つかり、獲物を横取りにされるが、3歳の少女にはそれを止める事ができなかった。

そんな生活の楽しみといえば、森の中にある湖の近くで採れる、果物だった。

森に住む魔物に見つからないよう、細心の注意を払って辿り着くその場所には、季節ごとに色とりどりの果物が実をつけていた。



一年中穏やかな気候のヨシュクラダンカ王国だか、この端にある村は季節を感じることができる。

冬。

4歳の誕生日を迎えた。

勿論、祝ってくれるものはいなかった。
それを悲しむこともなく、当然のように受け入れる。

この、誕生日という日は、おばあさんが私を拾ってくれた日だ。
本当の誕生日産まれた日は、知らない。

いつものように川で水を飲む。
冬の川は、とても冷たい。
震える手で水を汲み、器に入れる。
こう言う時に、村の井戸を使えたらな、と思うが、きっとムリだろうな、と考える。

桶を触ろうとしたら、ほうきで叩かれたのだ。

あの時はとても驚き泣いてしまった。
懐かしい記憶だな、と思う。

今は、泣くことも、笑うことも、出来なくなっていた。



うさぎを狩り、火で炙る。

食べようと、肉を摘んだ。そんなときだ。


キャァァァァァア!!
ウワァァァァァア!!


村の方から、悲鳴が聞こえた。

急いで村に戻ってみれば、村は、日が暮れ始めた空と同じ、赤く、紅く、燃えていた。

沢山の悲鳴に、人が、人を、殺していく景色。非現実的なその景色は、独特な燃える臭いに、現実だと気付かされる。

どうすることも出来ず、ただ、立っているだけの私は、ほかに人がいないか探せ!という声に我にかえる。

慌てて大きな木の根の間に隠れ、見つからないように息を潜めた。



チュンチュン  チュンチュン

そんな小鳥の鳴き声に目を覚ます。

あんなに必死だったのに、この体はいつのまにか眠ってしまったらしい。

ここはどこだと、辺りを見渡せば、昨日、自分が隠れた所だった。

村はどうなったのかと、恐る恐る見に行けば、ただの炭とかした家に、人だった物。

昨日の、この原因を作った奴等は、もうすでにいなくなっていた。

あたりに漂う異臭に吐き気がこみ上げる。

何もない場所に吐き出せば、少しはスッキリした。

「やっぱり……燃えちゃった……。」

私が、少しとは言え住んでいたおばあさんの家も、例に漏れず燃え尽きていた。

これから、どこで寝たら良いんだろう、と思っていると、遠くから騒がしい音が聞こえる。

昨日の奴等が戻って来たのかと、隠れる場所を探す。

しかし、辺りに隠れる場所が見つからない。

必死に探し、動き回った。

足音は、近い。

私は、近くの井戸の裏に、身を隠すことしかできなかった。




「あたりに人がいないか探せ!」

「少しでも息があるものは、こちらに連れてこい!」


数十名の足跡、声が聞こえる。
遠くから聞こえていた音は、馬の足音だったようだ。

ここが見つかるのも時間の問題。

今はこちらに人がいない。森に逃げるなら今だ。

そう思い、立ち上がった時だ。

「ねぇ、君、ここの村の子かなぁ?」

昔一度だけ食べた、真っ白なバニラのアイスみたいな少年が、こちらを見て、微笑んでいた。



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