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第37話 窓から見える景色
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突然、はじまった部屋の争奪戦のために、俺は階段を駆け上がった。
まさか自分の部屋を占領されるだなんて想像すらしていなかったが、冷静に考えてみれば、真宮さんの性格からして可能性は十分にありえる。
覚悟を決めてドアを開けた――。
「いない……」
良かった……どうやら俺の部屋には興味がなかったみたいだ。
まぁ、この家にはたくさんの部屋が余っているから、わざわざ使用されている場所を選ぶというのも変な話ではあるし、普通に考えたら、そんな奴はいないだろう……。
「あきさみよー!」
ん? 果奈の部屋の方から沖縄弁? ……まさかっ!
言葉の意味が気になったけど、急いで廊下に出て、向かいにある果奈の部屋へ飛び込む――。
「果奈っ!」
「お兄ちゃん!」
壁側のベッドの前に果奈、そして真宮さんが奥にある窓の前に立っていた。
妹は動揺していたのだろう。俺の姿を見ると、お兄ちゃん呼びをしてきた。
このまま、その呼び方が定着してくれたらいいんだが……。
「にぃにぃ! ま、真宮さんが……」
どうやら俺の考えは甘かったようだ。
「えーと……真宮さん、どうして果奈の部屋にいるんだよ」
「あたし、この窓から見える景色が好きなんだよね」
真宮さんは、なぜか伊達メガネを外して感傷に浸るように、窓の外へ目を向けた。
……景色?
「なにか見えたっけ?」
「お兄ちゃんは外の景色なんて興味ないもんね。わぁの部屋からだと東京ソラの塔が見えるんだよ」
「へー、気がつかなかった。俺の部屋からだと見えないな」
「当たり前だよ。にぃにぃの部屋は反対側にあるんだから」
「言われてみればそうか……」
「春時、なにアホなことを聞いてるのよ……ねね! ソラの塔って夜になるとライティングが綺麗よね」
「ソラの塔ってライティングなんてしていたか?」
「え……まさかライティングのことを知らない男がいるなんて……」
「にぃにぃ……ウソでしょ……」
果奈にまで白い目で見られてしまった……って、まてよ……塔を見るだけなら隣の部屋だって問題ないよな?
「えーと……ところで真宮さん。なんで、わぁの部屋にいるの?」
それだ……今は、景色がどうのと話している場合じゃない。
真宮さんがこの部屋にいるということは、果奈の部屋を自分の生活空間にするという意思表示になるんだ。
そもそも妹は詳しい事情をわかっていない。リビングでの会話を聞いていたとはいえ、この流れに混乱しているだろう。
ここは兄が守ってやらなくては。
「なぁ、真宮さん。まさかとは思うけど、果奈の部屋を取ろうとしているわけじゃないよね? もしそうなら、許可できないけど」
「……果奈の部屋……かぁ……べつに果奈ちゃんの部屋を取るつもりなんてないわよ。少し驚かせたかっただけ」
「そ、それならいいけど……こういう悪ふざけはやめてくれよ。果奈が可愛そうだろ」
「……そうよね。ごめんね果奈ちゃん! ちょっとイタズラがすぎちゃったみたい! 今度、バーガークイーンで好きなもの奢っちゃうから許してね!」
「ほんとぉ! うっさん!」
「あはは。果奈ちゃん、うっさんってなに?」
「嬉しいってことですよ!」
「そっか!」
言うと、真宮さんは伊達メガネを顔に戻して、あっさり部屋を出ていってしまった。
いったい、なんだったんだ……。
ふぅ……とりあえず、俺と果奈の部屋は無事のようだし、母親の部屋以外であれば、どこを使っても構わない。
好きなところを選んでもらおう……って、なんで俺はそれを許可しているんだ?
これじゃあ、このまま家に住みつかれてしまうじゃないか……うーん、なんとかしないと。
と、とりあえず部屋で少し考えよう。
「果奈。俺はとりあえず自分の部屋に戻るから」
「うん、わかった」
あ……。
「なぁ、果奈。さっき叫んでた、えーと、あきなんたらって、どういう意味なんだ?」
「あきさみよー! のこと? あれは、驚いた! とかいう意味だよ」
「へー、でも、出来れば驚いたときは、わかる言葉で叫んでくれ。本当にピンチだったときに判断ができないからな」
「でも、もう覚えたでしょ?」
「まぁ……そ、そうだな」
「じゃあ、大丈夫だよね?」
「うん……あれ?」
なんか俺、うまいこと言いくるめられたような……ま、まぁ、いいか。
そういえば、園崎杏奈はともかく、仲里さんは、どこにいるんだろう?
ドアが開けっぱなしにされたままになった俺の部屋に入る――。
「え⁉︎ ど、どうして……」
俺は目を疑った……なぜなら、そこには仲里さんがいたからだ……。
まさか自分の部屋を占領されるだなんて想像すらしていなかったが、冷静に考えてみれば、真宮さんの性格からして可能性は十分にありえる。
覚悟を決めてドアを開けた――。
「いない……」
良かった……どうやら俺の部屋には興味がなかったみたいだ。
まぁ、この家にはたくさんの部屋が余っているから、わざわざ使用されている場所を選ぶというのも変な話ではあるし、普通に考えたら、そんな奴はいないだろう……。
「あきさみよー!」
ん? 果奈の部屋の方から沖縄弁? ……まさかっ!
言葉の意味が気になったけど、急いで廊下に出て、向かいにある果奈の部屋へ飛び込む――。
「果奈っ!」
「お兄ちゃん!」
壁側のベッドの前に果奈、そして真宮さんが奥にある窓の前に立っていた。
妹は動揺していたのだろう。俺の姿を見ると、お兄ちゃん呼びをしてきた。
このまま、その呼び方が定着してくれたらいいんだが……。
「にぃにぃ! ま、真宮さんが……」
どうやら俺の考えは甘かったようだ。
「えーと……真宮さん、どうして果奈の部屋にいるんだよ」
「あたし、この窓から見える景色が好きなんだよね」
真宮さんは、なぜか伊達メガネを外して感傷に浸るように、窓の外へ目を向けた。
……景色?
「なにか見えたっけ?」
「お兄ちゃんは外の景色なんて興味ないもんね。わぁの部屋からだと東京ソラの塔が見えるんだよ」
「へー、気がつかなかった。俺の部屋からだと見えないな」
「当たり前だよ。にぃにぃの部屋は反対側にあるんだから」
「言われてみればそうか……」
「春時、なにアホなことを聞いてるのよ……ねね! ソラの塔って夜になるとライティングが綺麗よね」
「ソラの塔ってライティングなんてしていたか?」
「え……まさかライティングのことを知らない男がいるなんて……」
「にぃにぃ……ウソでしょ……」
果奈にまで白い目で見られてしまった……って、まてよ……塔を見るだけなら隣の部屋だって問題ないよな?
「えーと……ところで真宮さん。なんで、わぁの部屋にいるの?」
それだ……今は、景色がどうのと話している場合じゃない。
真宮さんがこの部屋にいるということは、果奈の部屋を自分の生活空間にするという意思表示になるんだ。
そもそも妹は詳しい事情をわかっていない。リビングでの会話を聞いていたとはいえ、この流れに混乱しているだろう。
ここは兄が守ってやらなくては。
「なぁ、真宮さん。まさかとは思うけど、果奈の部屋を取ろうとしているわけじゃないよね? もしそうなら、許可できないけど」
「……果奈の部屋……かぁ……べつに果奈ちゃんの部屋を取るつもりなんてないわよ。少し驚かせたかっただけ」
「そ、それならいいけど……こういう悪ふざけはやめてくれよ。果奈が可愛そうだろ」
「……そうよね。ごめんね果奈ちゃん! ちょっとイタズラがすぎちゃったみたい! 今度、バーガークイーンで好きなもの奢っちゃうから許してね!」
「ほんとぉ! うっさん!」
「あはは。果奈ちゃん、うっさんってなに?」
「嬉しいってことですよ!」
「そっか!」
言うと、真宮さんは伊達メガネを顔に戻して、あっさり部屋を出ていってしまった。
いったい、なんだったんだ……。
ふぅ……とりあえず、俺と果奈の部屋は無事のようだし、母親の部屋以外であれば、どこを使っても構わない。
好きなところを選んでもらおう……って、なんで俺はそれを許可しているんだ?
これじゃあ、このまま家に住みつかれてしまうじゃないか……うーん、なんとかしないと。
と、とりあえず部屋で少し考えよう。
「果奈。俺はとりあえず自分の部屋に戻るから」
「うん、わかった」
あ……。
「なぁ、果奈。さっき叫んでた、えーと、あきなんたらって、どういう意味なんだ?」
「あきさみよー! のこと? あれは、驚いた! とかいう意味だよ」
「へー、でも、出来れば驚いたときは、わかる言葉で叫んでくれ。本当にピンチだったときに判断ができないからな」
「でも、もう覚えたでしょ?」
「まぁ……そ、そうだな」
「じゃあ、大丈夫だよね?」
「うん……あれ?」
なんか俺、うまいこと言いくるめられたような……ま、まぁ、いいか。
そういえば、園崎杏奈はともかく、仲里さんは、どこにいるんだろう?
ドアが開けっぱなしにされたままになった俺の部屋に入る――。
「え⁉︎ ど、どうして……」
俺は目を疑った……なぜなら、そこには仲里さんがいたからだ……。
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