美少女にフラれたらなぜかダウジング伊達メガネ女子が彼女になりました!?〜冴えない俺と彼女と俺をフった美少女の謎の三角な関係〜

かねさわ巧

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第39話 壁の落書き

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 真宮まみやさんがいるこの空間は、数ある空き部屋の中の一つで、今は妹の物置になっている。

 果奈かなが買い物をしてきた商品の空き箱や興味のなくなった、ぬいぐるみ、読まなくなった雑誌など、色々なものが散乱している状態だ。

 真宮さんは、その散乱した部屋の端にしゃがんでいて、振り向いた彼女の目には涙が浮かんでいるように見えた。

 こんな表情の彼女を見ることなんて、今日までなかったから、突然のことに言葉が出てこない。

 ていうか、なにかあったのだろうか……。

「真宮さん……その……大丈夫?」

「え? あ……あぁああっ! 春時はるとき! この部屋ちらかってるけど掃除してる? 目にゴミが入っちゃったじゃない!」

「え? まぁ、この部屋は完全に果奈の物置と化しているからな……」

 ゴミ? ……てっきりなにかあったのかと思ってしまった。

「それより、なにかよう?」

「あ。そうだ! ほら、これ真宮さんのだろ?」

 ポケットから取り出したスマホを見ると、真宮さんは少し驚いたような表情を見せた。どうやら落としていたことに、気がついていなかったようだ。

「なんで春時が、あたしのスマホを持ってるのよ」

「なんでって……俺の部屋に落ちていたんだよ」
 
「ふーん、まぁ、いいわ。早く返してよ」

 彼女は立ち上がり、手のひらを上に向けてきたのでスマホをそっとのせる。

「ありがとう」

「どういたしまして。というか、この部屋に決めたのか?」

「そう……ね。ここがいいかな」

「そうなんだ。でも、見たとおり果奈のもので、ちらかっているし、他にもっといい部屋あると思うけど」

「ここでいいの。ここがいいんだよ」

 彼女は、さっきまでしゃがんでいた壁の方向をチラッと見たので――目をやると、そこには、うさぎの落書きが書かれている。

「あ、それ気になる? その落書きは俺や果奈がここに引越してくる前からあったものなんだよ」

「消さなかったんだね」

「え? あぁ……果奈が、それを気にいってしまって、そのままにしていたんだ」

「そっか……」

 そういえば真宮さんのスマホカバーにも、うさぎの絵がプリントされていたし、本当にうさぎが好きなのかもしれないな。

「それじゃあ、明日からこの部屋を借りるわね」

「あれ? 今夜じゃなかったっけ?」

「まずは部屋の掃除をしないとね! この感じだと夜まで、かかりそうだもの」

「たしかに……それじゃあ妹に、この部屋を真宮さんが使うことを伝えてくるよ。ここ、果奈が物置として使っているからさ」

「そうしてくれると助かるかも。あたしからも、あとでお願いしておくね」

「うん」

 明日か……まぁ、そのほうが園崎杏奈そのざきあんなも今夜は家に帰るだろうし、いいかもな。

 それにしてもアパートを借りているのに、なんで俺の家に泊まる必要があるというのだろう。家賃もったいないよな。

 だいたい、二人の両親は心配しないのかな? 

「そうえいば真宮さんの両親って、どこに住んでいるの?」

「話してなかった? あたし、両親いないのよ。小学生のとき、事故にあってさ」

「ご、ごめん。余計なこと聞いちゃって」

「いいよ。べつに気にしてないから」

 そうだったのか……だから一人暮らし? というか二人暮らしだよな。

「真宮さん。俺、ちょっと果奈の部屋にいってくるよ」

「そう」

「うん、また来る。掃除手伝うから」

「ほんと! やった! さすが、あたしの彼ね!」

 なんだか気まずくなってしまって、俺は部屋を出た。

 彼女の話を聞いて、なにを話したらいいのか分からなくなってしまったんだ……。
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