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しおりを挟む「ぐるるる……」
低い唸り声がかすかに響く。
現れたのはブラックウルフの群れ。狼型魔物の代表格で、10から15匹ほどの群れをなし、連携して狩りを行う知能の高い魔物だ。
「うわ……マジかよ。あれ全部、敵かよ」
明が顔をしかめて低く呟いた。すでに剣は構えているが、先ほどの熊型魔獣との戦いで体力はそれなりに削れている。だがどこか嬉しそうでもある。
「こいつら、手強いよ。個体の力はそこそこだけど、連携がヤバいの」
純子が木の上から声を落として言う。弓をつがえながら、焦りを抑えるように深く息を吐いた。
「どうする? 一旦引く?」
有紗が控えめに提案する。だが、沙耶は逆に目を輝かせていた。
「やっちゃおうよ! たくさんいるってことは、素材もいっぱいだよ?」
……確かに、ブラックウルフの毛皮や牙は売れば高くつく。
「……よっしゃ! ここで迎え撃とうぜ。森の地形を利用すれば、数の差は多少埋められる」
明がノリノリで決断すると、みんなも頷いた。
「じゃあ、私は左右の動きを牽制するわ。木の上から援護する」
「私は真正面、突っ込んでくる奴を狙う!」
純子と沙耶がそれぞれポジションを確認し、木の上で素早く配置についた。
「俺はいつでも行けるぜ。さっきの熊よりマシだろ?」
明がニヤリと笑う。頼もしい相棒だ。
「よし、引きつけてから一気に叩く。最初に数を減らせれば勝機はある」
ブラックウルフの群れは徐々に距離を詰めてきている。先頭の一匹がこちらを見据え、牙を剥いて唸ると、他の狼たちもそれに呼応するように唸り声を重ねた。
そして――
「来るわ!」
沙耶が木の上から状況を伝える。
群れが一斉に駆け出した!
黒い影が森の中を疾走する。俺たちは身構え、最初の接触に備えた。
「今よ、撃って!」
純子の合図とともに、木の上から矢が一斉に放たれた。純子と沙耶、有紗の矢が空を切り裂き、先頭のブラックウルフたちに突き刺さる!
「ギャウッ!」
一匹、二匹が転倒し、後続が一瞬ひるんだ。
その隙を逃すまいと、俺と明は前に躍り出る。
「行くぞ、卓郎!」
「おう!」
斬撃が交錯し、牙が迫る。激しい戦いが、再び始まった。
ブラックウルフの一体が、明に飛びかかった。だが――
「遅ぇよ!」
明の剣が半月を描き、狼の腹を斬り裂いた。黒い体毛の中から鮮血が飛び散り、魔物は呻き声をあげて地面を転がる。
「左、もう一匹!」
俺が声を上げると、明がそのまま体をひねって剣を突き出した。しかし、今度の一匹は素早くかわし、横から俺に向かって跳びかかってきた。
「っ……!」
とっさに身を低くして回避。すぐに剣を振り上げて反撃しようとしたその瞬間――
「そっちは任せて!」
上から一本の矢が一直線に飛んできて、跳びかかっていた狼の目に突き刺さる。
「ナイス、純子!」
「いいタイミングだったでしょ?」
誇らしげな声が返ってくる。
だが油断はできない。まだまだ数は多い。
「囲まれてるわ!」
有紗が警告の声を上げる。
確かに、後方からも数匹が回り込んできている。完全に包囲するつもりだ。こいつら、見た目以上に頭がいい。
「沙耶、有紗! 後ろは任せた!」
「うん、任せて! 純子」
沙耶が矢を連射し、有紗も落ち着いた動きで狙いすました矢を次々と放つ。一発ごとの命中率が高く、後方の狼たちが次々と地に伏していく。
「くそっ、こいつ!」
明が叫ぶ。彼の前に現れた一体のブラックウルフは、他の個体より一回り大きく、動きも鋭い。
――リーダー個体か!
「明、そいつは俺も行く!」
明の剣をリーダー狼が受け止めるように噛みつき、そのまま体ごとぶつかってきた。明がバランスを崩した隙を突こうとしたその瞬間、俺は真横から斬り込んだ。
「うおおおおっ!」
俺の剣がリーダー狼の肩口に深く食い込む。だが、こいつもすぐには倒れない。咆哮とともに体をひねり、俺を振り払おうとする。
「ぐっ……重い!」
その時――
「こっちも手伝うよ!」
純子の矢が、再びリーダー狼の脚に突き刺さった。バランスを崩した瞬間、明が渾身の斬撃を浴びせる。
「おおおおおっ!!」
剣が狼の首筋に食い込み、リーダー個体が絶叫と共に崩れ落ちた。
その瞬間、残ったブラックウルフたちが一斉に後退しはじめる。リーダーを失ったことで統制が崩れたのだ。
「逃げていく……」
有紗が小さく呟いた。
「追わなくていいわ。ここまでで十分よ」
純子の指示が飛ぶ。
俺は肩で息をしながら、剣を地面に突き立てた。あたりには倒れた魔獣の死骸と、矢が突き刺さった痕跡が残る。
「ふぅー……全員無事でよかったぁ~!」
木の上から沙耶がひょいっと飛び降りてきて、ニコニコしながら手を振る。
「……ふぅ、よくやったな、みんな」
明も深く息をつきながら笑った。戦闘の余韻が体中に残っている。
「戦利品、いっぱいありそうだね!」
純子が目を輝かせて、狼の死骸を確認し始めた。
「じゃあ、卓郎。『買い取り』お願いね!」
俺は百点カードで『買い取り』をして回った。
「どうする。もう少しここで粘るか?」
明がポーションで、怪我した体を癒している。
「矢の補充が必要ね。今日はだいぶ矢が壊れたみたい」
「私も……」
有紗と沙耶が矢のお取り寄せをしたいと申し出る。
「オッケイ! 純子も矢は必要かい?」
「うん。私の分もちょうだい」
俺は10本ずつ30本の矢をお取り寄せした。
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