ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

文字の大きさ
35 / 265

35

しおりを挟む

 装備と準備を整える必要のない(『お取り寄せ』でいつでも準備できる)俺たちは、ギルドを出ると、そのまま軽部村への調査依頼に向けて歩を進めた。

 山本村よりさらに奥、北の山間にある小さな村――軽部村。

 依頼書には「最近、連絡が途絶えている」としか書かれておらず、危険度の詳細も不明。だが、俺たちはEランクになったばかりだ。ここで実績を積み、さらなる依頼に繋げたいという想いは全員にあった。

「今のとこ天気もいいし、順調だね」
 有紗がにこやかに言うが、俺はなぜか背筋が少しだけ寒くなった。

 道中、鳥の声も虫の音もほとんどしない。森の中なのに、耳に届くのは自分たちの足音と、風が枝葉を揺らす音だけ。

「……あれ? なんか静かすぎない?」
 沙耶が首を傾げると、明も口を尖らせる。

「気配が薄い。動物がいないっていうか……妙だな」

 辺りには、野兎の巣跡や、踏み荒らされたような小道がいくつかあった。だが、そこに生き物の気配はまるで感じられない。

「最近何かあったのかも……って、あんた聞いてる?」
 純子が俺の横顔を覗き込む。

「あ、ああ……ごめん。ちょっと気になって」

 得体の知れない静けさが、じわじわと足元から這い上がってくるようだった。

 そして昼過ぎ。ついに軽部村の入口が見えてきた。

「……ここが、軽部村?」

 視界に入ったのは、木造の小さな家がいくつか並ぶ、静かな集落。だが、煙は上がっておらず、人の姿もない。

「……変だな、昼間だってのに誰もいないのか?」
 明が眉をひそめる。

「どこか……おかしい」
 有紗の表情も固くなり、沙耶はぎゅっと弓を握り直す。

 俺は静まり返った村を見回しながら、確かに何か違うと感じていた。道には誰かが通ったような跡がある。洗濯物も干されていた。完全に廃村というわけじゃない。

 なのに、まるで……人の気配だけが綺麗に消えている。

「……ひとまず、村の中心まで行ってみよう。何か手がかりがあるかもしれない」

 心の中に、薄い霧のような不安が広がっていく。まだ何も起きていない――でも、何かが確実に“起きた後”なのだと、肌が告げていた。

 村の中心には広場があり、小さな祠と、朽ちかけた掲示板がぽつんと立っていた。だが、その周囲にも、人影は一つもない。風が草を揺らす音ばかりが、やけに大きく聞こえる。

「……静かすぎるな」
 明が眉をひそめてあたりを見回す。

「とりあえず、今夜はどこかで休もう。調査は明日から本格的に始めよう」
 俺の提案に、皆が小さくうなずいた。

 数軒ある民家のうち、一番手前にあった家を選び、戸をそっと開けて中を覗く。

「失礼しまーす……って言っても、誰も出てこないか」
 沙耶が遠慮がちに声をかけたが、応える声はない。

 中に入ると、室内は驚くほど整然としていた。床には埃一つなく、壁にかけられた布も風に揺れている。誰かが今朝まで住んでいたような気配が、そこには確かにあった。

「見て。囲炉裏に火を入れた跡がある」
 有紗がしゃがみ込んで、灰の中に手をかざす。「まだ少し、あったかいかも……」

「……ほんとにさ、ついさっきまで誰かいたみたい」
 純子がそっと食卓に手を置いた。木の器の中には、半分かじられたパンがそのまま残っていた。傍らには、ひび割れたマグカップと、冷えたスープの痕跡。

 俺は一瞬、背筋が寒くなるのを感じた。まるで、誰かが慌てて姿を消したような……あるいは、連れ去られたような。

「布団も敷いたままだし、箪笥の中もちゃんと服がある。逃げたっていうより……置いていかれた?」
 明が不穏そうに呟く。

「人だけが、すっぽりいない……なんか、怖い」
 沙耶が俺の腕にぴとっとくっついた。

「でも、獣に襲われた痕とかはなさそう」
 純子が冷静に周囲を見渡す。

「この感じ、異常なだけで荒らされた形跡はないよな……」
 俺も窓の外を見ながら、押し寄せる違和感を必死にかみ殺す。

 ――何かが、あった。この村で。
 けれど、それが何か、まだはっきりとは分からない。

「とりあえず、戸締りはちゃんとして、交代で見張りしよう。何かあったら、すぐに声かけてくれ」
 皆、黙ってうなずいた。

 それぞれが寝床を準備しながらも、沈黙は夜の気配とともに深まっていく。
 その沈黙の中で、俺たちはまだ知らなかった。夜の帳が下りると同時に、それが近づいてきていることを――。
 ――夜。
 月は雲に隠れ、星もほとんど見えなかった。

 用心のため、俺たちは交代で見張りを立てることにした。最初の見張りは明と俺。

 家の外に立ち、冷たい空気を感じながら村を見渡す。

「……なあ、卓郎」
 明が低く囁いた。

「……あれ、見えるか?」

 彼が指さした先、民家の裏手。誰か――人影のようなものが、一瞬、立っていた。

「……っ!」

 俺たちが駆け寄ると、そこには誰もいなかった。ただ、裏の土に、不自然な引きずられたような跡が残っていた。

「これ……誰か、引きずっていった跡だ」
 明がつぶやく。俺は言葉が出なかった。

 家に戻ると、純子が焦ったように手帳を持って出てきた。

「これ、あの家で見つけた。誰かの……日記帳みたい」

 ページをめくると、内容はこうだった。

『――最近、森の中から変な音が聞こえる。夜になると、低いうなり声のような……獣じゃない、何か別の――』

『村長が神父さまと何かを相談していた。古い儀式について、とか……あれはやらないはずじゃ……』

『今夜、何か来る。みんな、そう言ってる。でも、逃げようとする者はいない。まるで、もう覚悟を決めたみたいに』

『私は、生きたい。だから、これを読んだ誰かへ。どうか――』

「……これ、マズいやつだな」
 明が顔をしかめた。

 そしてその瞬間、村の奥の祠の方角から――

 ごぉぉぉ……という、風のような、でも決して自然ではない、うねる音が聞こえてきた。

「聞こえた……?」
 有紗が囁き、沙耶が弓を構える。

 俺は無言でうなずき、仲間たちを手で制した。何かが起きている。この村で。確実に。

 次に、俺たちが目にするのは、想像を超える現実かもしれなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...