ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 翌朝――。

 朝靄に包まれた村の広場には、冷んやりとした空気が漂っていた。まだ太陽が顔を出しきらない空の下、俺たちは荷物をまとめ、村の入口へと集まっていた。

「ふぁあ~……眠い……けど、いい天気になりそうだね!」

 沙耶が欠伸をしながら背伸びをしている。朝露で濡れた草を踏む音が心地よく響いた。

「昨日のアレのせいで、なんか寝た気がしねーわ……」

 明がうんざりした顔で肩を回す。昨夜の騒動のせいで、皆疲れていたが、それでも旅は待ってくれない。

 俺は荷物を背負い直し、森の奥を見据えた。

 この先にあるのが、次なる目的地――『霧の谷』。

「ここから北に向かって、丸一日歩けば霧の谷に入るはずだ。道は狭くなるけど、明るいうちなら問題ない」

「うん、地図でもそうなってた。谷の入り口、崖沿いを通るから、落ちないように気をつけないとね」

 有紗が小さく注意を促すと、純子が軽く笑って応じた。

「大丈夫でしょ。あたしは足元、しっかりしてるから!」

「いやいや、調子に乗ると落ちるってのは、お約束だからな?」

 俺が軽口を返すと、純子が軽く舌を出した。

 そこへ、昨夜の村長が駆けつけてきた。肩で息をしながら、小さな包みを差し出してくる。

「これ……少しじゃけど、携帯食と薬草じゃ。旅の途中で使っとくれ……本当に、昨日のことはすまんかった」

「……ありがとうございます。気にしてませんよ。ちゃんと見送ってもらえるだけで、充分です」

 そう言うと、村長は深く頭を下げ、俺たちを見送るように広場の端へ下がった。

 
「よし、行こうか。霧の谷へ」

「おー!」

「さあ、今日も頑張ろー!」

「足元注意でな」

「……あ、でもその前に、霧の中で出るって噂の『幻のキノコ』、ちょっと気になるな……」

 そんなことを言いながら、俺たちは旅の続きへと歩き出した。

 

 昼過ぎ、森を抜けて山道を進んだ俺たちは、やがて谷の入口にたどり着いた。

 そこには、切り立った崖と崖の間に伸びる一本の山道――そして、その先から立ちのぼる、白い霧。

「うわ……マジで霧の谷って感じだね……」

 沙耶が思わず声を漏らす。霧は昼間だというのに濃く、数メートル先もよく見えない。

「これ、地図にあった通りだわ。昼でも視界が悪いって書いてあったよ……」

 純子は慎重に足を踏み入れる。谷を渡る風が肌を撫でるたびに、どこか不気味な音が耳をかすめた。

「……なんかさ、音が変じゃない?」

 有紗が立ち止まり、耳をすます。

 ――ヒュゥゥゥ……ゴォ……

 風の音に混じって、何かの囁き声のような、不規則な音が交じっている。

「……気のせいだろ?  たぶん風が岩に当たって、変な反響してるだけじゃねーの」

 明が言いながらも、腰の剣に手をかけているあたり、警戒してるのがわかる。

「でも……この感じ、ちょっと嫌な予感するわ……」

 純子の眉がピクリと動く。彼女はこういう時、なぜか勘が当たることが多い。

 それでも、俺たちは進むしかなかった。

 谷に入ってから三十分ほど。辺りはすっかり白い世界に包まれて、空も地面も区別がつかなくなっていた。

「……あれ?  なんか道、変じゃない?」

 沙耶が足を止める。確かに、さっきまであった小道が、いつの間にか無くなっている。

「さっきまでの道、まっすぐだったよな……でも、今は……斜め?」

「これって……」

 有紗が低くつぶやいた。

「霧の中に入ると方向感覚が狂うって、噂があったよ。もしかして、本当に……」

 そのときだった。

 ――ゴソッ。

 霧の奥、岩陰がわずかに動いた。

「動いた!  なんかいる!」

 俺の声に反応して、全員が即座に構える。

 矢を構える沙耶と純子、剣を抜く明。俺と有紗も、周囲を警戒して身構える。

 だが次の瞬間、霧の中から現れたのは――

 灰色の毛に覆われた、異様に大きなイタチのような生き物。目が赤く光り、口元からは粘つく唾液が滴っている。

「霧イタチよ……!  幻惑の気をまとう、厄介な魔獣だわ!」

「うわ、こっちに来るよっ!」

 3体、いや、5体……?  霧のせいで数も正確に把握できない!

「囲まれてる!  全員、集中して!  バラけたら終わりだわ!」

「了解っ!」

 霧の中、俺たちの戦いが始まった。


「明、右から来るやつ任せたわ! 有紗は後方支援、沙耶は広域で威嚇射撃を!」

「了解っ!」

 純子の指示に即座に反応し、それぞれの位置へ散っていく仲間たち。濃霧の中でも、俺たちは何度も連携訓練をしてきた。焦らなければ、勝てる――はずだった。

 ――バッ!

 左側の霧の中から、1体の霧イタチが飛びかかってくる!

「甘いっ!」

 俺は体を沈めるようにして剣を横薙ぎに振り、霧イタチの腹部をかすめ斬る。だが、手応えは想像よりも軽い。霧イタチは、実体の一部を霧に溶け込ませる特性があるらしく、攻撃が通りにくい。

「硬いってか……薄いのか? 厄介だな!」

「たぶん、本体の核心部を狙わなきゃダメだよ!」

 有紗が後方から弓を構えながら叫ぶ。その言葉に、沙耶が呼応するように矢を引き絞った。

「だったら――中心狙ってうち抜くっ!!」

 ――ヒュンッ!

 鋭い風を切る音と共に、一本の矢が霧の向こうへと放たれる。

 ドシュッ!

 鈍い音がして、霧の中から一体の霧イタチがのたうち回りながら崩れ落ちた。確かに、急所に命中していたようだ。

「ナイスよ沙耶! あとは……!」

 が――その瞬間。

「う、うぅ……目が、まわる……」

 明の様子がおかしい。何かに惑わされたように、ふらふらと剣を振り回し始めた。

「明!?  しっかりしろ!」

「たぶん……あれ、霧イタチの『幻惑の吐息』よ!」

 純子がそう叫んだと同時に、別の個体が明の背後から跳びかかる!

「くっそ、間に合ええぇッ!!」

 俺の飛び蹴りが間一髪で霧イタチの顔面を捉え、吹き飛ばした。

「ふぅ、ギリギリ……おい明、目を覚ませ!」

「わ、わかってるっ……ちょっとクラッときただけだ!」

 明が目を擦り、再び戦線に戻る。

 俺たちはそのまま息を合わせて、徐々に敵を減らしていった。

「ラスト一体……!」

 最後の一匹は、体を霧に紛らせながら逃走を試みる。しかし、俺たちはもう見切っていた。

「今よ、有紗!」

「はいっ、いくよ!」

 ビュン!

 有紗の矢が白く輝き、霧を裂くようにして一直線に飛ぶ。

 ――ズバッ!

 そして有紗の矢は、霧イタチの胸を貫いた。

 やがて、辺りを覆っていた霧が、少しずつ晴れていく。

 俺たちは、静まり返った谷に立ち尽くしていた。

「……終わった、ね」

「うん……何気に、本格的な連携戦だったかも」

 疲労と安堵が混じる中、みんなの顔に笑みがこぼれた。

 
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