ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 狂戦士との激戦を終え、再び静寂が遺跡に戻った。

 瓦礫の中を慎重に抜けながら、俺たちは広間の奥にある通路へと進む。明かりが届かぬほどの深さ――ここが、遺跡ベル=カランの最奥部であることを、誰もが直感で理解していた。

「空気が……変わった」
 有紗が小さくつぶやく。冷気とは別の何か――時間さえも止まっているような、重苦しい圧が辺りに満ちていた。

 やがて通路の果て、石扉の前にたどり着く。

 その扉には精緻な文様と、中央に半球状のくぼみが彫られていた。

「ふむ、これは……」
 ロメオが目を輝かせ、カバンから石板の破片のようなものを取り出した。

「この『楔型封印盤』、まさかここで使えるとは……! この形、ぴったりだ!」
 彼が破片をくぼみに押し込むと、扉全体が青白く発光し始め、重い音を立ててゆっくりと開いていく。

「開いた……!」
 純子が驚きの声を上げた。

 その先はドーム状の部屋。中央には高さ2メートルほどの石碑がそびえ、その表面には、複数の古代文字がうっすらと輝いている。

「これが……『語る石版(ストーン・オブ・エコーズ)』……」
 ロメオが息を飲んだ。

「なんか……話しかけてきそうな名前だな」
 俺が半ば冗談で言ったそのとき――

 ゴウン……という低い振動音とともに、石版が淡い光を放ち始めた。

「封印、解除確認……選ばれし者よ、その記憶を問う」

「喋ったーー!?」
 沙耶が盛大にびびって俺の背に隠れた。

「いや、まさに語る石版……これは記憶保存型の魔導遺物……!」
 ロメオがうっとりした声で解説しながら、石版の前に進む。

「この地を汝が選んだ理由を述べよ。さすれば、知の断片を開示する」
 石版の声は無機質でありながら、どこか人間的な響きを持っていた。

「ロメオさん、お願い……」
 有紗が促すと、ロメオは一歩前に出て、胸を張って答えた。

「我々は、千年前に失われた文明ベル=カランの真実を知るために、ここを訪れた。破滅の記録、古代人の選択、そして……未だ語られぬ歴史の欠片を集めるために」

 数秒の沈黙ののち――

「動機、確認。知識への渇望、承認」

 石版の文字が流れるように動き始め、光の粒がロメオの手元に集まっていく。

「情報開示――第一断章、封印されし鍵に関する記録、転写中……」

「やった……! 記録がダウンロードされている!」
 ロメオが興奮を隠しきれず、小刻みに震えている。

 その瞬間、石版の周囲が淡く光り、壁面に幻影が浮かび上がった。そこには、かつてこの地に住んでいた人々の営みと、黒い霧に包まれて滅んでいく都市の姿が描かれていた。

「……あれが、この文明の終焉……」
 純子が呟く。

「黒い霧……これ、最近の魔物暴走と関係あるんじゃ……」
 明が険しい顔になる。

「次なる鍵を解く資格を得よ。六つの言葉を集めよ」

 そう告げて、石版の光は静かに収まった。

 ロメオはその場に膝をつき、震える手でメモを取りながら言った。

「……これは……すごいぞ。語る石版は、まだ情報を持っている……! これからもっと深い真実に、我々は迫れる……!」

「つまり、これは……序章ってことか」
 俺が息を吐きながら呟くと、仲間たちは無言でうなずいた。


 語る石版が静かになったあとも、俺たちはその場からしばらく動けずにいた。

 石版に映し出された黒い霧の記憶が、脳裏にこびりついて離れなかったからだ。

 やがてロメオが立ち上がり、手帳を閉じてこちらを振り返る。

「皆さん、どうやら我々は、『六つの言葉』を集める旅に出ることになりそうですな」
 彼は興奮を抑えきれない様子で笑った。

「言葉って、どこにあるの?」
 沙耶がちょっと不安げに尋ねる。

「……石版にヒントがあったわ」
 純子が、壁に刻まれた薄い模様を指差す。そこには、円を中心に六つの文様が放射状に広がっていた。

 そのうち一つだけが淡く光っている。

「これは……『風の谷』の紋章?」
 ロメオが目を凝らして言うと、有紗が小さくうなずいた。

「聞いたことある。東の山脈にある谷、今は無人の集落が残ってるだけって……でも、そこに?」
 有紗が眉をひそめる。

「きっと『第一の言葉』は、そこに隠されているってことだ」
 俺がそう言うと、皆が小さく息を呑んだ。

 ――六つの言葉。

 それが何を意味するのか、まだ俺たちは知らない。

 でも、あの黒い霧の記憶が現実の脅威と繋がっているとしたら……。

「行こう。風の谷へ」
 俺がそう言うと、皆はうなずき、遺跡を後にした。

 再び地上へと戻ると、空には夕日が差し込み、長い影を引いていた。

「ロメオさん、ちゃんと下調べしといてよね」
 純子が少しキツめに言うと、ロメオは敬礼しながらにっこり笑った。

「もちろんですとも! 帰ったら風の谷に関する文献、全部洗い直します!」

「気を付けてね。周りに迷惑かけないようにだよ」
 沙耶が小声でツッコミを入れ、俺と明が笑いをこらえる。

「調べ終わったら、また、指名依頼してください。俺たちも、このことは気になってますしね」

「また、その時は、よろしく頼むよ。すぐ調べるからね」

 俺たち『フォーカス』の、新しい冒険、『語る石版』が告げた六つの言葉を探すこと。その第一が待つ、風の谷への旅が始まろうとしていた。

 それは歴史を掘り起こす旅であり、同時に、世界の真実へと近づく試練の道だった。


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