ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 朝の光が訓練棟の高窓から差し込むなか、俺たちは予定通りギルドに集合した。建物内の空気は、妙に張りつめていた。

 広い訓練エリアには、俺たちのほかにも数組の冒険者チームが既に待機している。皆一様に装備を整え、視線は鋭く、空気はピリピリだ。

「んだお前ら、Cランクになったばかりで、もう試験とか早くねぇか?」

 その中のひとつ、金髪オールバックで体格のいい男が、俺たちを値踏みするように見下ろして言った。肩には大剣、背中にはやたらとトゲトゲしい盾。後ろの仲間たちも黙って武器を点検している。

「なんだ、やる前からビビってんのか?」

 明がすかさず言い返す。既に前傾姿勢で、今にも飛びかかりそうな勢いだ。

 だが、俺はそっと明の肩に手を置いた。

「やめとけ。試験前に疲れるだけだ」

「……チッ」

 明は舌打ちするが、素直に引いた。珍しく俺の判断を尊重してくれたらしい。きっと、それだけ緊張しているんだ。

 その瞬間、訓練棟の中央に響いたのは、場違いなまでに軽やかな「パシン」という拍手の音だった。

「はいはーい、全員揃ってるわねー」

 現れたのは、金髪ポニーテールに小さな丸眼鏡をかけた、猫背気味の女性。手にはティーカップ、表情は眠そうで、どう見ても休日出勤のOLの風情だった。

「え、あなたが……試験官?」

 純子が半ば呆れたように声を漏らす。

「そうよん。私、Bランク昇格試験担当の百合子。Aランク冒険者でーす。よろしくねー」

 おそろしくテンションのゆるい自己紹介に、場の冒険者たちがざわめく。

 だが、百合子は気にせず、のんびりと紅茶を啜りながら言った。

「ではー、試験内容、発表しまーす」

 皆が一斉に前のめりになる。

 そして――

「――ネコを捕まえて♡」

「……はい?」

 訓練棟内が一瞬、凍りついた。

「この訓練エリアのどこかに、私の大事な『魔導猫ベリルちゃん』が隠れてます。それを制限時間内に、傷つけずに捕獲してちょうだい。逃げ足はAランク級、魔法も少し使うわよ♡」

「それ……ガチの魔獣じゃないか」

 明が引きつった声を出す。

「『魔導猫ベリルちゃん』って……触れただけでビリビリくる結界まとってるって噂の猫じゃない?」

 純子が眉間にしわを寄せる。

「ってか……なにその試験内容……!」

 沙耶は耳まで赤くして震えていた。

 そんな中、有紗が冷静に立ち上がる。

「でも、やるしかないわ。これが運じゃ受からないって意味ね」

 俺は深呼吸して、すぐさま状況を整理した。

「よし、作戦立てよう。全員で動くな。罠と同じだ、見つけた瞬間に囲んで逃げ道を断つ!」

「囲い込み役は任せて! 」

 沙耶がすぐさま前に出た。

「オレは突撃より、撹乱役に回る。にゃんこ、真正面からは無理だろ」

 明がニヤリと笑い、剣を肩に担ぐ。

「……私は、木の上か柱の上から狙う。飛ぶなら、捕獲ネットで撃ち落とす」

 純子が無表情に弓を構える。

「よし、ベリル……だっけ? そいつを絶対、捕まえよう!」

 俺は拳を握りしめ、叫んだ。

「スタート♡」

 百合子の軽い声と共に、訓練エリアがまるで迷宮のように姿を変えた。

 草むら、小川、倒木、石柱……自然地形と人工障害が組み合わされた巨大フィールドが広がっている。木々の上からは、視界をさえぎる布が揺れ、上空の見通しも悪い。

「姿は見えない……でも気配はある!」

 沙耶がしゃがみ込み、地面に手を当てる。

「小さな足跡、向こうの茂みに向かってる!」

「よし、有紗、沙耶、卓郎は上も気をつけて追ってちょうだい! 明と私は左右から回り込むわ!」

 純子の指示に皆が即座に動き出す。スタート直後の連携はまずまずだ。

 ――しかし。

 茂みに飛び込んだ明が、唐突に空中へ吹っ飛んだ。

「わっ、なにっ、うわああああああっ!!?」

 ズザァァアアッ!

 地面を5メートルほど滑った明が、電撃に焼け焦げたような髪を逆立ててうめいた。

「ビリビリ……きた……ッ! あいつ結界まとってやがる……!」

「さすが魔導猫……慎重にいこう」

 俺が結界に注意して、慎重に茂みに近づこうとすると――

「にゃーん♪」

 頭上から、愛らしい声が響いた。

「上か!?」

 見上げると、ひょいっと枝から枝へと飛び移る、銀色の毛並みを持つ小さな猫の姿が見えた。瞳は光の反射で妖しく揺らめき、尻尾の先から青白い魔力がほとばしっている。

 ――こいつが、ベリル!

「待てこらーっ!!」

 沙耶が猛ダッシュで追いかけるが、ベリルは信じられない速さで木から木へと跳ねていく。

「速すぎっ!? しかも……瞬間移動!? あ、違う、光学迷彩かこれ!」

 沙耶が翻弄される中、純子が弓を構えて狙いを定める。

「ネット矢、撃つ……!」

 ビュッ!

 空気を裂いて飛ぶ特殊なネット付きの矢――しかし、ベリルはふわりと体をひねって枝から枝へと回避。矢は木に絡まり、落ち葉をはらはらと落としただけだった。

「反応速度、異常……っ」

「ええい、イタチごっこになるぞこれ……!」

 俺も木の根元からネットを構えながら、後方の有紗に声を飛ばす。

「追い込める場所あるか!?」

「川辺にルートが集中してる。水を嫌がって、こっちに回り込む可能性が高いわ!」

 すでに小川付近にいくつかネット罠を設置し始めていた有紗が、冷静に答える。

「よし、そのルートにおびき寄せる! 明、囮になれるか!?」

「まっかせろ……ちくしょう、またビリビリきそうだけどな!!」

 明が顔をしかめながらも木陰から飛び出し、あえてベリルの視界に入るように走る。ベリルの瞳がくるりと回転し、興味深そうに明を見つめ――

「にゃっ!」

 跳躍!

 狙い通り、ベリルは明の動きに反応して飛びかかってきた!

「今だ! 囲め!」

 俺の叫びとともに、全員が一斉にベリルの周囲に集結!

 草むらから、倒木の影から、矢が、ネットが――ベリルの退路を完全に塞ぐ!

 が――

「ニャァァァン♡」

 キュインッ!

 空間が一瞬きらめき、ベリルの姿が消えた!

「なっ、またテレポートかよ!!」

 明が叫ぶ。

「違う、これは……幻影!? 分身魔法!?」

 有紗が目を見開く。

 訓練エリア内に、同じような猫の姿が三体、四体と増えていく――

「ど、どれが本物なのよぉぉぉぉぉ!!」

 沙耶の悲鳴が響いた。

「冷静になって! まだ時間はある……この中に本物がいる。見抜くのよ!」

 混乱の中でも、俺たちは踏みとどまった。
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