ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 訓練エリア内に姿を現したベリルの分身たち――その数、六体。

 全てが銀色の美しい毛並みで、同じようにしっぽをくねらせながら小刻みに動き回っている。どれも素早く、電撃をまとっており、下手に手を出せばこちらが感電する。

「くっ……完全に攪乱されてる……!」

 純子が歯を食いしばる。すでにネット矢も残り一発だ。

 俺はネット矢を『お取り寄せ』で手に入れると5本ずつ3人に手渡した。

「なくなったら、いくらでも補充するからどんどん撃って」

 有紗も沙耶も次々にネット矢を放ち、ベリルをネットに捕らえるがそのたびに偽のベリルは煙になって消えていく。

「どんだけ偽物なんだよ! ほんものいないんじゃねーか?」
 明が呆れて文句を言った。

 そうか! 見えてるベリルは全部幻だ!

 その気ずきが俺に別の方向からのトライをさせる。

 隠れているベリルを探すんだ。本物はどこかに隠れているという仮説を信じて周囲の気配に注意を払う。

 どこだ、どこだ、どこだ。

 明も純子も見えているベリルを追っている。だが、捕まえたベリルは煙となって消える。

 そして……俺は変な魔力? 気配? を見つけた。何食わぬ顔で近付きーー俺は手にしたネットをここだと思うところに被せてみた。

「ニャァッ!」

 本物らしいベリルが姿を現し、軽く飛び跳ねた。――振り返るように俺を見上げる。

「へへへ……!」
「ニャ?(捕まっちゃった?)」

「みーつけた」
「ニャアア(逃げちゃうもんね)」
 ビリビリビリッ!

 きちんと締まってなかったせいで、被せたネットが弾け飛んだ。

「――逃がさないっ!」

 沙耶が横から回り込み、捕獲用の痺れ玉をベリルに投げつける。黄色い煙がベリルを包みベリルの体が硬直した! 一瞬だけ、動きが止まる!

「ニ、アアアアア!?」

「いまだっ!」

 純子が最後のネット矢を弓に番え――

「捕獲……っ!」

 ビュッ!

 正確無比な一射。ネットがベリルに命中し、全身を絡め取った!

「――確保っ!!」

 俺が即座に駆け寄り、ベリルの動きを封じるように魔力封印のお札を貼り付ける。
 猫は「ニャ……」と不満げな声を上げたが、抵抗は止まった。

 沈黙――そして。

「おっけー☆ クリアです♪」

 拍手混じりの声が響いた。見ると、百合子が紅茶を飲みながらぱちぱちと拍手していた。

「いやー、よくやったわねぇ。ちゃんとチームで戦ってた。完璧じゃなぁい?」

「……マジで、猫一匹捕まえるのにここまで消耗するとは思わなかった……」

 明が地面にへたり込み、頭をかきむしる。

「でも、すごく勉強になった。分身の魔法、あんなにリアルなんて……」

 有紗も目の光を戻しながら、そっと矢筒を確認する。

「猫……ふわふわだった……」

 沙耶はぐったりしながらも、満面の笑みだった。

「試験の内容としては、だいぶ狂ってるけどね……」

 純子がネットに絡まったベリルを見下ろしながら、ぽつりとつぶやく。

 そのベリルは、ネットの中から、

「にゃ……」と、まだ不満げにつぶやいた。

 ――こうして、俺たちのBランク昇格試験は終わった。

 たかが猫、されど猫。舐めていたら、きっと落ちていた。

「合格おめでとー♡ じゃ、次は報告と登録の手続きねー。ギルドホールに戻りましょっか!」

 百合子が紅茶を空にして立ち上がった。

 俺たちは顔を見合わせ、ぐったりしながらも笑った。


 訓練棟からギルド本部へ戻ると、ロビーには先に試験を終えたチームや、まだ出番を待つ冒険者たちの姿があった。

 俺たちが戻ると、空気がわずかにざわめく。

「おい、あいつら……」

「まさか、あの猫を……?」

 視線が集まり始めるのがわかった。中には、あの金髪オールバックの男もいる。ベリル捕獲の話を聞いたのか、目を見開いてこちらを凝視していた。

「ふん……マジかよ」

 小さくつぶやく彼の肩を、仲間のひとりがぽんと叩いて何か囁いていた。どうやら、試験に落ちたらしい。

「おっかえり~」

 受付カウンターでは、いつの間にか先回りしていた百合子が、お菓子をつまみながら手を振っていた。

「ふふふ、見事だったわよぉ。猫、ちゃんと生きてるし、毛並みもふわっふわ。感動しちゃった♡」

「……なんだか、褒められてる気がしないわね」

 純子が小声でつぶやいたが、表情はどこか誇らしげだ。

「試験結果、正式に報告書に記載しまーす。個々の役割評価、連携行動、対応判断力、全部満点。異論なしで――」

 百合子はハンコをポンと押した。

「――チーム『フォーカス』、Bランク昇格、認定でーす♡」

「やった……!」

 沙耶が小さくガッツポーズ。有紗も、控えめに笑顔を浮かべた。

「よっしゃあああああ! これで依頼の幅も、報酬も、ぜんっぜん違うぞ!」

 明が飛び跳ねるようにガッツポーズを決める。

 俺はそのテンションに苦笑しながら、みんなの顔を見る。

 緊張、努力、疲労、そして確かな達成感。全員の目が、いつもよりずっと強く、頼もしく見えた。

「お疲れさま。ちゃんと、リーダーしてたじゃん」

 俺がはぽつりと純子に言った。

「そ、そうかな」

「うん。俺たち、純子の指示なかったら多分あの猫にもっとビリビリされてたぜ」

「うん。私も、落ち着けたの、純子の指示のおかげだった」

 沙耶と有紗も、少し照れくさそうに笑う。

「……だよな。ま、オレもリーダーの命令があったから無駄に突撃せずに済んだし」

 明は鼻をこすりながら、つぶやいた。

「……ありがとう。みんながいたから、できたよ」

 純子はそう言って、自然に笑っていた。

「ねぇ、スイーツ……って話、覚えてる?」

 有紗が控えめに提案する。

「あっ、私も!  甘いの食べたいっ」

 沙耶がぱっと顔を明るくする。

「じゃあ、お祝いがてら、スイーツ食べ放題の店……行くか?」

 俺がそう言うと、みんなが一斉に「行く!」と返してきた。

「よっし、じゃあ今日は食って飲んで、寝るまでが試験だ!」

 明が拳を突き上げる。

 そうして俺たちは、ギルドのロビーをあとにし、少し遅めの――でも最高の打ち上げに向かった。


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