ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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《蒼穹の門》をくぐると、瓦礫の山と風化した彫像が俺たちを迎えた。床は割れ、天井の一部はすでに崩落している。だが、それでもなお、城は「何か」を守っているような、張り詰めた空気に包まれていた。

「……ここ、やばいぐらいに静か」
 沙耶がポニーテールを揺らしながら小声で言う。普段は元気な彼女の声にも、不安がにじむ。

「この城全体が、封印の外殻なんだろう。内部に近づくほど、魔力の密度が上がってくる」
 ロメオが手にした探知器を確認し、眉をひそめる。

「どこから探索する? 手分けするか?」
 明が『紅蓮のミスリルブレード』を肩に担ぎ、ギラギラとした真紅の瞳で周囲を睨みながら言った。

「いや、ここでは全員で行動した方がいい。……魔力の干渉が激しすぎて、何が起きるかわからないし、どんな強敵が現れても不思議はないよ」
 俺は答え、先導する。

「ちっ、手間だな」
 明は鼻を鳴らすが、それでも歩調を合わせてくる。彼にしては珍しく、警戒心を見せていた。

 城の奥へ進むと、装飾の施された二重扉に行き当たった。封蝋が割れており、かつては強力な結界で守られていたことが伺える。

「……この扉の先が、たぶん『ルドゥス王家の記録室』だ」
 ロメオが慎重に扉を押し開けた。

 重々しい音とともに、室内が露わになる。

 そこは半ば崩壊しながらも、書架と巻物棚が整然と並ぶ広間だった。壁には王家の紋章が刻まれ、天井には星辰を模した魔法陣が描かれている。

「……すごい。全部、手書きの記録? この数……」
 有紗が柔らかく目を見開き、そっと指を巻物の端に触れる。

「火気厳禁! 絶対に火の魔法とかは使うなよ!」
 ロメオが警告する。

「わかってるわよ。誰かさんみたいに剣に火を点けたりしないから」
 純子が明にチクリと刺す。

「あん? うっせーよ、金髪女」
 明が肩をすくめると、純子は「何よ、赤毛」と返してから、奥の祭壇状の台を指差す。

「あ、こっち、何かあるわ!」

 そこには古ぼけた石板と、ひときわ大きな書物が安置されていた。その表紙には、銀の魔術式と――王冠を戴いた蛇の紋章。

「これが……ルドゥス王家の『封印記録書』……」
 ロメオが両手で抱き上げ、慎重にページをめくる。

「……『王は契約せし。封印の地に、神魔の門を閉ざす』……?」

「封印の地……『青き天の封印』は『神魔の門』を封じているのかしら?」
 純子の言葉に俺は不吉な連想をして眉を寄せた。

「ここに、封印の間の位置も記されている……『中央大聖堂、地下、黒鉄の門を越えし先』だ」

 ロメオに導かれて再び廃城の通路へ戻り、指示された方角へ進む。途中、崩落した回廊や、動く石像の罠をかいくぐりながら――俺たちは中央の大聖堂へとたどり着いた。

 天井高く、柱が聖なる幾何紋様で装飾された空間。かつては祈りが捧げられていたのだろうが、今は冷気が支配する、静謐と死の聖域。

「ここから地下へ……」
 祭壇の裏側に、鉄の階段があった。

「罠、もうないといいけど」
 有紗がそっと呟く。その隣で、沙耶が黙って姉の腕を握っている。

「ビビってんのか?」
 明が笑うが、笑みに力はない。彼自身も、ただならぬ気配を肌で感じ取っていた。

 降りた先に現れたのは、巨大な黒い門だった。表面には古代文字で《禁域》と刻まれている。どこまでも無言の圧力を放ち、こちらの存在を試すかのように、冷たい空気が肌を刺した。

「……ここが、封印の間、開けてはならない扉か」
 ロメオが小さく呟いた。

 誰も軽口を叩かない。ただ、巨大な黒い門の前に立つだけで、意識を吸い込まれるような錯覚に陥っていた。誰も動けず、ただ沈黙がしばらくその場を支配していた。

「……門の内側から、微弱な魔力の波動が漏れてる。封印が完全に機能しているなら、絶対にこんなことは起きないはず……」
 ロメオは探知器を確認しながら、眉をひそめる。

「封印が、緩んでるってことか?」
 明が剣を握り直す。肩にかけていた紅蓮のミスリルブレードが、わずかに熱を帯びる。

「緩んでいる……というより、何かが揺さぶっているような気配だね」
 ロメオの口調はいつになく硬い。

「……それって、中から出ようとしてるってことじゃない?」
 有紗が震える声で言う。その隣で、沙耶が黙ってうなずいた。

「中に、何が封じられてるの?」
 純子が問うが、ロメオは即答しない。

 代わりに、彼は懐から古ぼけた羊皮紙を取り出した。さきほど記録室から持ち出した写しだ。

「封印の詳細までは書かれていなかったが……『王は契約せし。神魔の門を閉ざす』とある」

「じゃあやっぱりこれが……『青き天の封印』?」沙耶が声を出し、ロメオは首を縦に振った。

「記載があったのは確かだけど、重要なのは……」

 皆の視線が、再び黒い門に注がれる。

 門の表面には、誰かの手で描かれた新しい血のような跡があった。爪で引っかいたような痕。誰かがここに、最近訪れた――そんな不気味な痕跡。

「……何者かによって、封印が干渉された可能性があるね」
 ロメオが眉根を寄せる。

「出ようとしてるのは、神魔クラスの強敵かもしれないってことか」
 俺は黒鉄の『神魔の門』を睨んで低くつぶやく。

「まさか、ベリアル……?」有紗の言葉に、場が静まり返った。

 それは、あり得ないと笑えない。封印の外で蠢く者がいるとすれば、ベリアルと契約を結んで闇に落ちた者か、これから契約を結ぼうとしている者……という可能性が、考えられる最悪のシナリオ。

「いずれにせよ、ここを放置して引き返すわけにはいかない。この封印は……今もこれからも、開けちゃいけない」
 ロメオは『神魔の門』を見つめながら、はっきりと告げた。
「この奥にあるものは、ただの遺産じゃない。災厄だ。俺たちが手に負える範囲じゃない。いったん引き、聖女様に報告して結界の対処をしてもらう必要があるよ」

 沈黙の中で、俺たちは、ロメオが設置した探知機を残してゆっくりと後退した。

 その夜、廃城の一室に身を寄せながら、俺たちは黙って天井を見つめた。

 闇の奥に潜む何かの気配が、確かにこちらを見ている気がした。
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