ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 一方その頃、ギルド南の一角にある「近接戦特化スキル道場」では――。

 明は訓練場の中央で、深く吸った息を吐き、炎のような瞳をギラリと燃え上がらせる。目の前に立つのは、鍛え抜かれた身体と静かな気迫をまとう師範代。

「俺は、空を飛ぶ敵を切り飛ばして―! 弓矢使いに守られてばかりじゃ情けねーんだ」

「その気持ち、俺にもわかるぞ。俺も昔、そういう思いをしたものだ。だが、このスキルを覚えて俺は変わった。『断空輪だんくうりん』。これは、剣を回転させて斬撃の衝撃波を発生させる遠距離攻撃技だ。衝撃波は弧を描く」

 あ、それ、たぶん卓郎が使ってた技だ。よし身につけるぜ!

『断空輪』は、師範代の手でゆっくりと実演された。彼の手の中で剣が一閃、風を裂きながら半月の衝撃波を描き、空中の標的を叩き落とす。木の柱に吊るされた袋が、真横からの風圧を受けて引きちぎれたように裂けた。

「……おお……」
 明が、思わず息を呑む。

「だがな、これは力だけじゃダメだ。剣の角度、体のひねり、タイミング。全てを一致させて初めて、断空輪は飛ぶんだ」

 師範代は、剣を背中に戻すと、静かに明を見据えた。
「お前が目指すのは、飛ぶ敵を倒せる剣士なんだろう? だったら、まずは地に足をつけることを覚えろ。剣士にとって、立ち位置が全てだ」

「……わかった。教えてくれよ、師範代。俺、絶対覚えるからさ!」

 明は何度も何度も剣を振った。だが――。

「まだまだ、甘い!」

 師範代の一声と共に、足元に投げられた木の輪が、突然跳ね上がる。明は驚いて飛び退いたが、避けるだけで精一杯。

「断空輪は、不意を突く相手にも放てなきゃ意味がない。構えなんかする暇はないんだ」

「なら、俺は構えなくても出せるようになってやるさ!」

 額の汗をぬぐいもせず、明は木の輪へと突っ込んだ。
 剣を横に振る。回転が足りない。体勢を崩す。バランスが悪い。

 師範代は何も言わない。ただ、静かに次の木の輪を投げる。

 その日、明は十回転び、十五回剣を地面に叩きつけ、二十回深呼吸した。

 けれど――二十一本目の剣筋。
 明の紅蓮のミスリルブレードが、きれいに弧を描いた。風が、鳴った。

「……今の、少し……」

「飛びかけたな。あと一歩、いや半歩ってとこか」

「よっしゃ……絶対、覚えてみせる」

 明は歯を食いしばりながらも、笑っていた。瞳は、ますます燃えている。

「明日も同じ時間に来い」
「来るまでもねえ、夜明け前から待ってるさ!」

 熱気に包まれた訓練場に、明の笑い声と、木の輪が跳ねる音が重なって響いた。


 その翌朝、空が白むより早く、訓練場にはすでに一人の気配があった。
 まだ霧が立ち込める中、明は紅蓮のミスリルブレードを握り、黙々と素振りを続けていた。風を斬る音がリズムよく響き、足元には昨夜の練習の跡がまだ残っている。

「……来てやがるとはな。まったく、お前ってやつは」

 師範代が現れた時には、すでに百本以上は振っていた。明の額からは汗が滲み、息は荒く、それでも背筋は伸びていた。

「おはよう、師範代」

「斬撃が飛ばせるようになったじゃねーか。よし、じゃあ今日は動く的を使うぞ。昨日よりも難しいが……その分、得るものも大きい」

 訓練場の奥に設置されたのは、弾力のある縄で吊られた木製の標的。左右に揺れながら、時折、上下にも跳ねるように動く。

「この標的に、断空輪を当ててみろ。衝撃波の軌道を制御できるかどうか、それが鍵だ」

 明は頷き、一度深く息を吸う。そして剣を構え――踏み込んだ。

「はっ!」

 風を切る一閃。だが、衝撃波は宙を舞い、標的の下をかすめて外れた。

「くっそ……!」

 焦る気持ちを抑え、再び構える。剣を回す角度、手首の返し、足の位置。すべてを思い出しながら、何度も挑む。だが標的は容赦なく揺れ、命中はまぐれ頼みの一撃しかない。

「考えすぎてるぞ、明。剣はお前の体の一部だ。撃つんじゃない、届かせろ」

 師範代の言葉が、胸に響く。
 届かせる――その意識で、明は再び踏み込む。

 剣が回る。風が鳴る。衝撃波が放たれる。

 ゴンッ!

 今度は、標的の中心に見事に命中した。揺れていた標的が、勢いよく回転しながら縄ごと跳ね返る。

「……やった!」

「よくやった。だが覚えておけ、それで終わりじゃない。この技は、応用してこそ価値がある。断空輪はお前の可能性を広げる武器だ」

 明は笑った。そして、うなずいた。

「覚えて、使いこなして、絶対にみんなを守る。空飛ぶ敵でもなんでも、全部斬り落としてやる!」

 その言葉に、師範代も微笑を浮かべる。

「よし。今日は徹底的にやるぞ。標的の速度も倍にしてやるからな」

「……は? ちょっと待て、それは――」

 師範代の号令と共に、次なる訓練が始まった。
 跳ねる標的、風を裂く衝撃波、明の声。そして再び、剣を振る音が訓練場に響き渡る。

 その姿は、確かに「空をも斬る剣士」への第一歩だった。

 訓練場に日が傾き、空が朱に染まる頃。
 明は、一本の剣を手に再び立っていた――《紅蓮のミスリルブレード》。鍛冶師グレンから修理され戻ってきた、彼の象徴とも言える剣だ。

「……やっぱり、こいつの力をだしきってこそだ」

 手に握るだけで、掌に熱が宿る感覚。赤黒く光る刀身が、まるで脈打つように微かに震えている。
 明は深く息を吐いた。夕焼けに照らされながら、師範代が静かに歩み寄る。

「《紅蓮のミスリルブレード》で、また断空輪の稽古か?」

「いや……今日は、その先だ。俺、フレイムバスターと合わせられる気がする」

 その言葉に、師範代の眉がわずかに動く。

「……なるほどな。剣の炎と、遠距離斬撃。その融合か」

「そう。炎を乗せた断空輪を……いや、それだけじゃない。爆ぜる斬撃にするんだ」

「ほう。やってみろ、明」

 明はうなずき、剣を構える。
 次の瞬間、刀身に紅蓮の炎が巻き上がった。スキル《フレイムバスター》が発動し、剣が赤熱する。

 同時に、足を踏みしめ、剣を横に振りかぶる。

「――断空輪!」

 そして、炎をまとったまま剣を回転させる。

「……じゃ、足りねえっ!」

 明は吠えるように叫び、力をさらに込めた。
 剣が旋回し、空気を焼き、衝撃波と共に炎が爆ぜた!

 ――ゴオオォォン!!!

 轟音が鳴り、放たれた火輪が空を切り裂き、訓練場奥の鉄製の標的を一撃で吹き飛ばす。爆風と熱気が訓練場全体に広がった。

「な……!」

 師範代が目を見開いた。

 その斬撃は、まるで灼熱の車輪。紅蓮の炎を纏い、空中で爆ぜ、広がる熱と衝撃で敵を焼き斬る、爆撃の如き技。

 ――《灼輪斬(しゃくりんざん)》。

 明は肩で息をしながら、燃えさしの残る地面を見つめた。

「……やった。これなら、空を飛んでようが何だろうが……全部、焼き斬れる」

 師範代は唇の端を上げ、満足そうに頷いた。

「お前、本物になってきたな。明。だが――その技、実戦で使いこなせるかは……お前次第だ」

「もちろん。使いこなしてみせる。俺は、前に進むんだ。あいつらのためにも!」

 夕日が、明の背を照らす。
 炎をその身に宿し、剣に込める少年の影は、確かに強く、熱く、そして頼もしかった。











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