ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 ギゼルの巨体が崩れ落ち、洞窟にはようやく静寂が戻った。
 俺たちは燃え尽きたように、その場に座り込んでいた。

「……終わった、よな?」
 明が荒い息を吐きながら、肩を落とす。

「うん……完全に沈黙してる」
 有紗が慎重に、矢を構えたままギゼルの残骸を確認する。

 そのとき──奥の壁に、カチリ、と金属の音が響いた。

「……扉?」
 沙耶が耳を澄ませて、目を見開いた。

 ギゼルの背後にあった石壁が、ゆっくりとスライドし、重たい扉が現れる。
 深紅の宝石がはめ込まれた重厚な扉。その向こうから、風が吹いてきた。微かに、鉄と香の匂いが混じっている。

「財部屋……か?」
 明がぼそりと呟く。

「これだけ強いボスが守ってたんだよ。きっとレアアイテムがあるに違いないよ!」
 沙耶は目を輝かせて、勢いよく立ち上がった。

「待って、何か……変だよ」
 有紗の声が硬い。

「え?」
 俺も首を傾げたそのときだった。

 ──ギィィ……

 扉が完全に開き、奥の闇から――“それ”は現れた。

 静かに、一歩、また一歩と。
 頭上に二本の黒い角を持ち、全身を闇色の皮膜に覆われた巨大な雌の影。
 瞳は宝石のように赤く、肩には金の装飾。体躯はギゼルを凌ぐほど。
 それは、威厳と狂気を纏っていた。

「な、なんだあれ……オーガ……メス?」
 明が唾を飲む。

「……あんなの、聞いてないよー……」
 純子が震える声で言った。

「……まさか、オーガクイーン?」
 俺の言葉に、誰も否定できなかった。

 オーガクイーンは俺たちを見下ろすように見据え、ゆっくりと口を開いた。

「──我が王を、倒したのは……貴様らか?」

 声は低く、地の底から響くような怨念のようでもあった。
 瘴気が再び濃くなる。空気が一瞬で重くなる。

「しゃ、喋った!? オーガってみんな人語をはなせるの?」
 沙耶が怯えながら矢を構える。

「やべぇ、あいつ、マジで……戦う気マンマンじゃねぇか」
 明が剣を構えた。未だ満身創痍のまま、汗が止まらない。

「回復は? ポーション……」
 有紗が焦ってバッグを探る。

「使い切った! 私たち、ギゼルで全部……!」
 純子の叫びが絶望を煽る。

「問う。貴様らは、何のために、王の安息を奪った?」

「はぁ!? あいつが襲ってきたんだろ! 自業自得だっつーの!」
 明が怒鳴り返す。

 オーガクイーンの瞳が、ぎらりと光る。

「勝手に我らのテリトリーに入ってきながら──ならば、我が怒りを、その身に刻め」

 瞬間、クイーンの背後に黒い魔法陣が展開される。
 圧倒的な魔力の奔流。雷光と瘴気と火の気配が同時に押し寄せた。

「やばいっ、来る──ッ!」

「回避ッ! 全員、左右に散開ッ!!」
 俺が叫ぶと同時に、轟音が洞窟を満たした。

 黒炎を纏った魔法陣が《オーガクイーン》の背後に浮かび上がり、瘴気とともに魔力が噴き出す。洞窟全体が揺れ、空間が悲鳴を上げていた。
 それでも、俺は冷静だった。

「──いくぞ。全力で、お前を叩き潰す」

 まずは布陣だ。指先を鳴らし、魔法陣を三重に展開。

「〈鉄壁〉、〈俊足〉、〈剛力〉……! ついでに──〈鈍足〉ッ!!」

 俺の周囲に青と金の光が奔り、肉体が強化される。重さが消え、脚が風のように軽くなり、腕に雷のような力がみなぎる。同時に、オーガクイーンの足元に黒い鎖のようなエフェクトが絡みついた。

「足止めは完了。次ッ……《アイスニードル》!」

 空中に現れた十数本の氷槍が音速でクイーンに殺到する。ズズッという音とともに、肩と腹に数本が突き刺さり、蒼い血が飛び散った。

「グゥゥゥ……!!」

 クイーンが唸る。その手が高く掲げられ、火の魔法陣が展開される──

「させるかよ。〈ディスペルマジック〉ッ!」

 俺が指を弾いた瞬間、相手の魔法陣が崩れ落ち、瘴気が一時的に霧散した。

「ヒール! 有紗、いけるか?」

「っ……うん、大丈夫! ありがとう卓郎くん……!」

 俺の放った癒しの光が有紗の裂傷を閉じる。その間にもクイーンは突進してきた。地響きを立てて、巨大な腕が振り下ろされる。

「見切った。《完全見切り》──発動!」

 世界がスローモーションになる。クイーンの動きが手に取るようにわかる。俺は一歩、左にステップし、剣を逆手に構えた。

「《鋼壁斬》ッ!!」

 青白い閃光が走り、剣がクイーンの右腕に深々と突き刺さる。装甲のような肌を割って、鮮血が飛散した。

「行くぞ。《アースショット》ッ!」

 足元から突き上げるような土石の弾丸が炸裂。重い一撃が腹部に命中し、クイーンの巨体がぐらつく。

 追撃は休ませない。

「《斬光断》ッ!!」

 剣に光をまとわせ、跳躍からの一閃。クイーンの胸元を一直線に裂いた。

「この距離なら──《ファイアバレット》《サンダーボルト》!」

 両手から連続で発射した魔弾と雷撃が、至近距離で炸裂。轟音が洞窟を揺らし、煙と火花が爆ぜる。

 だが、クイーンはまだ倒れない。怒りの咆哮とともに、地面から炎の柱を召喚しようと魔法を詠唱し始める。

「遅いッ! 〈ディスペルマジック〉!!」

 再び魔法構築を中断させ、俺は一瞬の隙を突いて踏み込む。

「これで終わらせる!!」

 全身の魔力を剣に流し込む。地が砕け、空気が裂けるような音を立てて──

「《鋼壁斬》!!」

 雷鳴のような一撃が放たれ、クイーンの胸元に炸裂。
 その瞬間、彼女の瞳が揺れ、膝が地面に落ちた。

 ドォン……ッ。

 地響きを伴って、その巨体が崩れ落ちる。瘴気が霧散し、ようやく、静けさが戻った。

 俺が息をついた瞬間、仲間たちが駆け寄ってくる。

「凄すぎだよ、たっくん……!」
 沙耶が瞳を輝かせる。

「うん……一気呵成ってやつだね……」
 有紗が感嘆の声を漏らす。

「受け身になったら、危ないと思ったからね」

「さすが俺のライバルってやつだな! 状況判断も最高だぜ。実際、俺たち四人の動きは疲労のせいで鈍かったからな」
 明がニヤリと笑った。

 俺は剣を収めながら、オーガクイーンの遺骸を見下ろす。
 その胸元には、ひときわ光る装飾品が残されていた。

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