ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 俺は、剣を収めて地に膝をついた。あたりに敵はいない。魔族の姿は消えていた。魔族が〈黒刺狼〉の王に変化したのか? あるいは逃げたのか?

 焼けた空気を肺に入れ、ゆっくりと息を吐く。腕が、震えていた。緊張が解けた。

「おい、大丈夫か!?」

 明が駆け寄ってきた。顔は強張っていたが、どこか誇らしげでもある。
 俺はうなずいて見せる。

「……ああ。何とか、な」

 後方では、剛志と重蔵が周囲を確認し、胡堂たちも警戒態勢を維持していた。
 京二が黒焦げになった地面を見下ろして言う。

「……瘴気、引いてる。完全に、消えたみたいだ」

「他の黒刺狼も……全部崩れて消えた。あの王がやはり核だったんだ」
 胡堂の声が低く響いた。

 すると、重蔵が小さく叫んだ。

「おい、あの女……!」

 皆の視線が、一斉に商隊の馬車に向く。
 女が、ゆっくりと立ち上がっていた。まだふらついていたが、その瞳には確かな意志が宿っていた。

 薄い外套の裾が風に揺れる。
 女は焚き火の近くまで歩いてきて、俺たちを見回した後、唇を開いた。

「……あなたたちが、あれを倒したのね」

 声は澄んでいた。低く、響くようで、どこか悲しげでもあった。

「ありがとう。あの獣は、〈黒刺狼〉の王。瘴気の中で繁殖し、死を呼ぶ使い魔を従える、“封印獣”の一つ……」

「封印獣?」
 俺が問い返すと、彼女はうなずく。

「ずっと昔――この大陸には七つの災厄が封じられていた。瘴気に満ちた古代の神殿に。あの王は、その一つ。……私の故郷は、その封印の地を守っていた一族だったの」

「じゃあ……逃げてきたのは」
 剛志が呟く。

「封印が……破られたのか? 理由はまだわかりません。けれど、何かが起きているのでしょう。瘴気が強くなり、霧があちこちに現れて、封印の獣たちが……目を覚まし始めています」

 女の目が、焚き火の光を映して揺れていた。

「このことを……教会に知らせなければなりません」

 女が静かに言った。

「王国中央教会……《聖印庁》に伝えれば、何か分かるかもしれません。封印の知識も、彼らが最も多く持っています」

「教会か……」

 俺は思わず呟いた。《聖印庁》という名は聞いたことがある。神聖フェルミナ王国の教会本部とは異なり、王国全土に散らばる教会の本部であり、聖女や預言者といった特別な存在が所属しているとされる機関。神託を司り、封印や聖遺物の管理も行うという。

「それなら、このまま次の街まで載せていこう。俺たちの行路に変わりはないのだしな」

 胡堂が提案すると、重蔵も「そうだな。ダルフェリアの街なら、教会支部があるし騎士団が駐屯してる」と肩をすくめた。

 商隊の男たちが馬車の修理に取り掛かり始めた。俺は傷ついた馬に「ヒール」を使い、なんとか街まで持たせる手はずを整えていく。

 夜が明けていく中、一行は再び出発した。

 空には霞がかかっていたが、あの霧の瘴気とはまるで違う。太陽が昇るにつれ、暖かな光が道を照らし始めていた。

 俺たちは、馬車の両側を囲むようにして歩いた。女は助手席に座り、目を閉じて何かを考えているようだった。

「なぁ卓郎」

 明がひそひそ声で話しかけてきた。
「教会って言ったけどさ、本当に信用していいのか? 封印の話とか、妙に詳しかったし……」

「……分からない。でも、神聖騎士勲章をもらった俺たちが、放っておいていい話じゃない。瘴気がまた現れたら、今度は俺たちだけじゃ止められないかもしれないし」

 明はしばらく黙っていたが、最後に「ああ、そうだな」とだけ言った。

 そして、昼過ぎ――街が見えてきた。

 白い壁と尖塔が連なる町並みが、丘の向こうに広がっていた。

「……あれが、ダルフェリアの街です」

 女がぽつりと呟く。

 近郊では中規模ながら、教会支部と騎士団が駐屯する重要拠点。商人たちも徐々に表情を明るくし始めていた。

「やっと、まともな飯にありつけるな!」
 重蔵が叫ぶと、剛志も「風呂も!」と笑った。

 街の門に着くと、衛兵たちが警戒しながらも、商隊の証明と被害報告を見てすぐに通してくれた。特に〈黒刺狼〉の痕跡を話すと、衛兵長が緊張した面持ちで女に何度も確認を取っていた。

 そのまま、馬車は教会前まで進んだ。

 大理石造りの白い建物。その上部に金色の十字架と、七芒星の紋章。聖印庁直属の支部である証だった。

 女が降り、俺たちに深く頭を下げた。

「ありがとう。あなたたちのおかげで、多くの人が救われると思います」

「名前、教えてくれますか?」

 俺が尋ねると、女はほんのわずか微笑んで答えた。

「……美里愛です」

 教会の前で美里愛を見送ったあと、俺たちは馬車の荷台の陰で短い作戦会議を開いた。

「で、俺たちはどうする?」
 重蔵が腕を組んで尋ねる。

「予定通りだ」
 胡堂が即答した。
「商隊の目的地は『姫の宮都市』だったはずだ。物資の納入と取引、俺たちは、その護衛が仕事だ」

「俺たちも予定通りってことでいいんだな?」
 明が言うと、胡堂はうなずいた。

「そうだな。教会支部が事態を共有してくれるとは思うが……念のため、『姫の宮都市』で教会に改めて報告すべきだろう。何より、まだ封印獣の全容が見えてない」

 京二がぽつりと付け加える。
「ダルフェリアの街には、教会の文書館もある。古文書を調べるには適してるところだな……」

「それに、補給もしなきゃだしね」
 剛志が自分の背負い袋を叩いて笑った。
「矢の予備も尽きかけてるし」

 胡堂が静かに笑った。
「そう言うと思ったぜ。明日の出発までは自由に行動してもかまわないだろう」

 商隊のリーダーに報告すると、彼らも快く了承してくれた。街での物資補給と馬の交代を済ませた後、一行は再び馬車を組んで南へと向かう。

 目指すは――南の海辺の街『姫の宮都市』である。
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