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26.飲み込めない

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 アデル様の恐怖の笑顔から三日後。
 俺とニアさんは、ちょっと直ぐには飲み込めない状況にいた。
「あの、ニアさん。これは、想定通りのイベントでは」
「ないね。全然違うね。正直私ももう何一つ呑み込めない」
 ちなみに、今俺達はハイグレード男子寮の一室に居る。
 正確には寮の一室であるアデル様の部屋で、寝室に隣接してる使用人室を改造した所から、その寝室をマジックミラー越しに覗くために椅子に座って居る。
 そして寝室のベッドの上にはベッドサイドに手首をつながれて眠っているクルスと、ドМ犬モードなカイルが居る。
 大事な事なので、もう一度。
 ここはアデル様の部屋である。
「ただ一つ言える事があるよルイ君」
「はい」
「私とてもwktkしてる」
「解ります」
 ちなみに部屋の主であるアデル様は、ベッドの横に置かれた安楽椅子で寛ぎながらその光景を見ている。俺達とはちょうどベッドを挟んで反対側なので、視線を上げたアデル様がにっこりとした笑顔をこちらに向けると、俺達はその都度ビクッとしてしまう。
 呼び出しを食らって土下座をかましたあの日、何を勘違いしているのか知らないが俺はお前達に協力を要請したいだけだ、と言われて顔を上げた。
 そして知らされた、アデル様によるカイル調教の裏側。
 カイルをひたすら快楽に弱い上にケツへの刺激無しではイケない体に調教して、クルスに抱かせるつもりだったらしい。これだけ聞くとまるでアデル様が超上級者っぽいかもだが、そもそも、カイルが好きなのはクルスで、クルスはクルスでカイルの事が好きらしいんだよ。
 俺とニアさんにとっては寝耳に水の驚きの事実だったが、アデル様からすれば八歳くらいの頃から解ってた事実だ。
「兄からすれば、ゆくゆく公爵となる自分の側にいるより、王となる俺の側近で居る方が良いだろうって考えだった訳で。カイルに至っては不敬だとか考えてたみたいだからな。もう動かしようもない既成事実を体で作るくらいすれば良いかと考えた」
 アデル様の考え方怖ぁい。
 でも、そういう事なら喜んで協力します、ってな訳で現在に至る。
「あ、クルスが目を覚ましましたよ」
「こっからが正念場って訳だね。ルイ君。しっかりメモってね」
「勿論です」
 ちなみに俺達は、二人でこの一連を観察して詳細に記録するようアデル様から言いつけられている。この世界にはまだ映像を記録する媒体が無いから、どうしても文章頼みになるんだ。
 あ、うん。
 実は俺達の覗きとか、挙句紙に書き出してウホウホしてた件とか、それはそれで普通にバレてたんだよ。処罰とかは特にしないけど、協力しろよって、お願いされたんだ。
 忖度ってさ、俺は、大事な能力だと思ってるよ。
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