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後のお話
おまけ:ニアの悔恨 ※ニア視点からの三人称
基本的に、自キャラは皆大好きだ。とことんクズとしか思えない奴でも、クズはクズとして報いを受ける事を含めて好きだ。
そんな訳で、私は自キャラには基本見合う人生を歩んでもらいたいと思っている。ゲーム上のエンドの先にも開ける未来を妄想する事はよくやっていた。自家二次創作でBLゲーを作った時だって、一年以降について考えなかったわけではない。
だが、そんな中で、ルイの話だけはちょっと違った。
相方が好きだから、メリバ感が出るようなエンドに持っていったら。ルイには、学園を中退して上級生の男妾になる未来しか見えなかった。それは、私が知るルイという少年の幸せな未来としては、とても納得できないものだ。
だから、この世界でルイ君に会った時。
心から思った。
薄ぼんやり、これで良いのかなって思ってたものが、変えていけるのかもしれないと。
私の好きな私のキャラ達を、幸せにしてあげられるかもしれないと。
だから、私にとって、ルイ君は救世主みたいなものだ。
私のどうしようもない悔恨を、切り開いていく手助けを笑って請け負ってくれた。
大切な親友だ。
でも、それとこれとは別なんだ。ごめん。
心の中で散々言い訳を並べたて、ニアは今、アクスの部屋を覗いている。
(私は調子に乗ったりしていない。王太子の婚約者だって言ったって、私自身はそこらの平凡貴族で血筋が特別良い訳じゃない。何かあれば速攻、死を含む手段で切り捨てられかねないのだ。そんなのは解っている。だから私にはこの世界で怖いモノばっかりだ。だからこれは仕方がない)
放課後、突然声をかけられて、アデルの部屋へ連れられてきた時は、まだ暢気に構えていた。きっとまた、クルスを追い詰めるために観察させる気だな、と考えていただけだ。
まさか、
「隠されると気になるのが人だろう?」
と、言い出したアデルに、アクスの部屋を覗くよう言われるとは考えも付かなかった。
(端的に言って前門の虎後門の狼だっての)
従わないという選択肢は、ニアには無い。だが、もしアクスに知られたらと考えると、死のイメージしか湧かないのだ。針山に張られた綱を目隠しで渡れと言われている気分である。
(許してねルイ君)
ニアは心の中で親友に三メートル級のジャンピング土下座をかまして謝り、綱に腕と足を絡めてしがみつきながら懸命に渡る事にする。というか、それ以外にやりようがない。
(大丈夫。ルイ君は許してくれる。たぶん。アクスは、駄目だろうけど…そこは知られないよう細心の………国家権力に全力で縋っていこう。そうしよう)
そんな訳でルイとアクスの情事を覗き見たニアは、後日、どうしてもルイに伝えたい事が出来た。
なので、昼飯時に、某セールスマンばりに指を突き付け忠告する。
「予言を授けよう」
「え?」
一方、突然ニアに指差しでそんな事を言われて、ルイは首を捻った。
ちょっと前に魔法とか目撃したから、何かそういうターンに入ったのかな、と思いつつ微笑ましいなという顔を返す。
「何だね、その顔は…真面目な忠告だよ。ルイ君。下克上には気を付けて」
「はぁ…下克上ですか」
本当に真剣に言っているらしいニアの態度にルイはきょとんとした。
下克上、と言われるからには、上下がある。そして、気を付けろという事は ルイが克される上なのだろうが、自分にとって下に当たる人物に覚えがない。せいぜい、イングとフレアは後輩だな、というくらいだろう。
(いや、待てよ…つまり、後輩に気を付けろってことなんじゃ………あ、まさか)
ルイは一つ、もしや、という事を思いつく。
その深刻な事に気付いた、という顔を見てニアも深々と頷いた。
「アデル様とか情報ですか…」
「うん。まぁ、そう。だから、今後気を付けて」
「はい」
この時のやりとりで、悪いのは誰かといえば、ニアだろう。
圧倒的に言葉が足りていないのだ。普段覗きといえばルイが一緒なのがほとんどなので、ありえないのだが、何故か脳内でルイとアクスの情事を覗いた時にルイも一緒に覗いていたという補正がかかってしまっていた。そのため、全くそんな事はないのだが、前提条件を共有していると思い込んでいた。
もっとも、互いに確認をしなかった点を考えれば、二人共悪いとも言えるが。
(俺、留年しそうなのかぁ。自分の婚約者はともかく俺まで庇う気ねぇよって事だよな。あーあ、点の取れる勉強法とかもう遠い昔だっつの…ちょっと真面目に勉強するかぁ)
ルイは、自分がほどほど取れれば良いやと手を抜いていた学業の件で留年の危機なのだと解釈した。テストの成績がほどほどで出席率が悪い、それがルイの今の状況だ。出席率の悪さについてはアデルのせいもあるのだが、そのアデルからニアが留年の件を言われたのだろうと思い込んでいる。
(ルイ君アクスに対して優位な感じだとは知らなかったからなぁ)
だが、正しくは、今は精神年齢が上なせいでアクスに優位に立ってる風だが、気をつけろと伝えたかったのだ。
全く言葉が足りていない。
(もうすぐ卒業して、騎士団入って揉まれたら、精神的に成長するのは絶対アクス方だし。その間私達は学園でのうのうとしてるだけの二年。変化がなければ精神的にも停滞するのは当然だから、卒業したら絶対アクスの方が優位になるに違いない)
騎士団は、専任幕僚長という名誉職を除いて、基本的に完全実力主義だ。現在十二ある師団の内、師団長が貴族身分にあるのは六師団だけ、とくればその徹底ぶりがうかがえる。まぁ、最終統括は当然国王ではあるのだが。
(身分の通用しない世界で二年揉まれたアクスと、学園でヌクヌクと過ごしたルイ君かぁ………忠告しない方が展開としては面白かったかも…いや、ダメだ。そこは親友の身が優先だ)
自分の中で葛藤し、使命を果たした気でいるニアだが、後年、この時の下克上の意味に気付いたルイは顔を覆って叫んだ。
「全っ然、わっかんないっすわぁ!」
結果的には、ニアだけがオイシイ思いをした、という事だ。
「てへぺろ」
「俺、ニアさんの享年解りました」
「きゃー待って待って言わないで! 絶対当たってそうで怖い!」
死してなお持ち続けた悔恨を晴らしてくれた親友との楽しい日々を、ニアはニアなりに守り続けていく決意を持って、今日もBL小説を書いている。アルカリ・ジャック三世として。
□fin
そんな訳で、私は自キャラには基本見合う人生を歩んでもらいたいと思っている。ゲーム上のエンドの先にも開ける未来を妄想する事はよくやっていた。自家二次創作でBLゲーを作った時だって、一年以降について考えなかったわけではない。
だが、そんな中で、ルイの話だけはちょっと違った。
相方が好きだから、メリバ感が出るようなエンドに持っていったら。ルイには、学園を中退して上級生の男妾になる未来しか見えなかった。それは、私が知るルイという少年の幸せな未来としては、とても納得できないものだ。
だから、この世界でルイ君に会った時。
心から思った。
薄ぼんやり、これで良いのかなって思ってたものが、変えていけるのかもしれないと。
私の好きな私のキャラ達を、幸せにしてあげられるかもしれないと。
だから、私にとって、ルイ君は救世主みたいなものだ。
私のどうしようもない悔恨を、切り開いていく手助けを笑って請け負ってくれた。
大切な親友だ。
でも、それとこれとは別なんだ。ごめん。
心の中で散々言い訳を並べたて、ニアは今、アクスの部屋を覗いている。
(私は調子に乗ったりしていない。王太子の婚約者だって言ったって、私自身はそこらの平凡貴族で血筋が特別良い訳じゃない。何かあれば速攻、死を含む手段で切り捨てられかねないのだ。そんなのは解っている。だから私にはこの世界で怖いモノばっかりだ。だからこれは仕方がない)
放課後、突然声をかけられて、アデルの部屋へ連れられてきた時は、まだ暢気に構えていた。きっとまた、クルスを追い詰めるために観察させる気だな、と考えていただけだ。
まさか、
「隠されると気になるのが人だろう?」
と、言い出したアデルに、アクスの部屋を覗くよう言われるとは考えも付かなかった。
(端的に言って前門の虎後門の狼だっての)
従わないという選択肢は、ニアには無い。だが、もしアクスに知られたらと考えると、死のイメージしか湧かないのだ。針山に張られた綱を目隠しで渡れと言われている気分である。
(許してねルイ君)
ニアは心の中で親友に三メートル級のジャンピング土下座をかまして謝り、綱に腕と足を絡めてしがみつきながら懸命に渡る事にする。というか、それ以外にやりようがない。
(大丈夫。ルイ君は許してくれる。たぶん。アクスは、駄目だろうけど…そこは知られないよう細心の………国家権力に全力で縋っていこう。そうしよう)
そんな訳でルイとアクスの情事を覗き見たニアは、後日、どうしてもルイに伝えたい事が出来た。
なので、昼飯時に、某セールスマンばりに指を突き付け忠告する。
「予言を授けよう」
「え?」
一方、突然ニアに指差しでそんな事を言われて、ルイは首を捻った。
ちょっと前に魔法とか目撃したから、何かそういうターンに入ったのかな、と思いつつ微笑ましいなという顔を返す。
「何だね、その顔は…真面目な忠告だよ。ルイ君。下克上には気を付けて」
「はぁ…下克上ですか」
本当に真剣に言っているらしいニアの態度にルイはきょとんとした。
下克上、と言われるからには、上下がある。そして、気を付けろという事は ルイが克される上なのだろうが、自分にとって下に当たる人物に覚えがない。せいぜい、イングとフレアは後輩だな、というくらいだろう。
(いや、待てよ…つまり、後輩に気を付けろってことなんじゃ………あ、まさか)
ルイは一つ、もしや、という事を思いつく。
その深刻な事に気付いた、という顔を見てニアも深々と頷いた。
「アデル様とか情報ですか…」
「うん。まぁ、そう。だから、今後気を付けて」
「はい」
この時のやりとりで、悪いのは誰かといえば、ニアだろう。
圧倒的に言葉が足りていないのだ。普段覗きといえばルイが一緒なのがほとんどなので、ありえないのだが、何故か脳内でルイとアクスの情事を覗いた時にルイも一緒に覗いていたという補正がかかってしまっていた。そのため、全くそんな事はないのだが、前提条件を共有していると思い込んでいた。
もっとも、互いに確認をしなかった点を考えれば、二人共悪いとも言えるが。
(俺、留年しそうなのかぁ。自分の婚約者はともかく俺まで庇う気ねぇよって事だよな。あーあ、点の取れる勉強法とかもう遠い昔だっつの…ちょっと真面目に勉強するかぁ)
ルイは、自分がほどほど取れれば良いやと手を抜いていた学業の件で留年の危機なのだと解釈した。テストの成績がほどほどで出席率が悪い、それがルイの今の状況だ。出席率の悪さについてはアデルのせいもあるのだが、そのアデルからニアが留年の件を言われたのだろうと思い込んでいる。
(ルイ君アクスに対して優位な感じだとは知らなかったからなぁ)
だが、正しくは、今は精神年齢が上なせいでアクスに優位に立ってる風だが、気をつけろと伝えたかったのだ。
全く言葉が足りていない。
(もうすぐ卒業して、騎士団入って揉まれたら、精神的に成長するのは絶対アクス方だし。その間私達は学園でのうのうとしてるだけの二年。変化がなければ精神的にも停滞するのは当然だから、卒業したら絶対アクスの方が優位になるに違いない)
騎士団は、専任幕僚長という名誉職を除いて、基本的に完全実力主義だ。現在十二ある師団の内、師団長が貴族身分にあるのは六師団だけ、とくればその徹底ぶりがうかがえる。まぁ、最終統括は当然国王ではあるのだが。
(身分の通用しない世界で二年揉まれたアクスと、学園でヌクヌクと過ごしたルイ君かぁ………忠告しない方が展開としては面白かったかも…いや、ダメだ。そこは親友の身が優先だ)
自分の中で葛藤し、使命を果たした気でいるニアだが、後年、この時の下克上の意味に気付いたルイは顔を覆って叫んだ。
「全っ然、わっかんないっすわぁ!」
結果的には、ニアだけがオイシイ思いをした、という事だ。
「てへぺろ」
「俺、ニアさんの享年解りました」
「きゃー待って待って言わないで! 絶対当たってそうで怖い!」
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