首無し王と生首王后 くびなしおうとなまくびおうごう

nionea

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18.

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 半歩ほど前に出て中央に立っている桃色のドレスを着た令嬢を正面に、礼をとる。
「アケチ・アンネリザです。本日はお招き下さいまして、誠に有難うございます」
 家格は同格なので、言葉は待たずに礼を戻すが、なるべくゆっくりと顔を上げるよう心がける。
 完全にアンネリザの顔が上がったところで、一歩、桃色のドレスが前に出た。
「ようこそお越し下さいました。私が、リンドブル・メリーラッツァです」
 事前に得ていた情報では、もうすぐ十八歳になる十七歳とのことだったが。落ち着きのある声のせいか、愛らしい桃色の割にすっきりとしたラインに仕立ててあるドレスのせいか、その非の打ち所のない完璧な所作のせいか、大人の女性という雰囲気がひしひしと伝わってきた。金桃派の中では、メリーラッツァが一番歳下であるはずなのだが、堂々としたものである。
 他の令嬢が皆栗毛な中で、ふわりと波打たせた銀髪のメリーラッツァは飛び抜けた美貌を持っていた。アンネリザは生まれた時から美女に囲まれて生きてきたため、中々に美女の認定基準が高いのだが、そんな彼女からみても、メリーラッツァは美しかった。ただ、淡い青の瞳が、挑戦的といおうか意地悪気というおうか、良い印象を与えはしなかったが。
「どうぞ、おかけになってください。奇しき縁にて、この花の館でご一緒することになったのです。皆で楽しくお喋りをいたしましょう」
「はい」
 メリーラッツァの言葉を合図に、アンネリザとナナリスを除く女性達が動き出し、席に座っていく。円形の机を中心に、メリーラッツァの左右にに二人ずつ、先ほど立ち並んでアンネリザを迎えたのと同じ並びだ。当然のようにメリーラッツァの正面の席が空いているので、そこへ向かう。
 本来、他の令嬢達がそうであったように、侍従達が椅子を引いてくれるのだが、コレトーはここには居ない。内心で悪態を吐きつつ、どうしたものかと視線を向けると、ナナリスが小さく頷いて、完璧な所作で侍従の代役をこなしてくれた。アリエーナが推すのだから女中としての優秀さは疑いようもないが、ナナリスはやっぱりアンネリザの心強い味方のようだ。
 この騒動が終わったら、ナナリスにも何かお礼をしなくては、と考えつつ、アリエーナ仕込みのゆったりとした所作で、椅子へかける。座面中程までにかけ、すっと背を伸ばし、扇に手を添えて腿の上に置く。刺すような視線が自分の粗を探している事をひしひしと感じながらも、何も感じていないようにやり遂げ、視線で令嬢達を見回してから微笑む。
 全員が着席すると、各人の前にお茶が運ばれてくる。装飾の美しい白磁のカップに、花の香りを着けた紅茶が湯気を立て、小ぶりな砂糖壺と蜂蜜壺が添えられている。茶菓子も揃いらしい小皿に乗って、それぞれの前に置かれた。
 配膳役が引き上げたところで、メリーラッツァが口を開く。
「まずは、自己紹介でもいたしましょうか。私達は顔見知りですけど、アケチ伯の末姫様とは初めましてですし」
 メリーラッツァの視線を受け、彼女の右隣に居た緑のドレスを着た令嬢が小さく頷く。
「では、私から。オックス伯爵家当主次女、ミミリーと申します」
 名前を聞いて、事前に教わっていた情報を必死に思い出す。たしか父親が営法府長官の秘書をしていた。父娘揃って補佐的な役割が向いているのだろうか、ドレスの色も化粧も押し出しも、実に控え目である。もっとも、メリーラッツァの取り巻きとも言うべき令嬢達なのだから、当然かもしれないが。
 そんなミミリーの視線を受け、彼女の正面、メリーラッツァの左隣の薄めの緑のドレスを着た令嬢が小さく頷く。
「私、アント伯爵家が三女、フィアナと申します」
 現当主の妻、つまりフィアナの母親がリンドブル家の出身だ。
 フィアナの視線は向かい側、ミミリーの右隣へ向けられる。
「私はモンシーヌ伯爵家の次女、フォーですわ」
 こちらは、アント家とは逆に、リンドブル家へフォーの姉が嫁いでいる。次期当主と目されているメリーラッツァの父親、その後妻だ。
 フォーの視線を受け、最後となった令嬢が口を開く。
「私、リネット伯爵家が長女、カリコですわ」
 父親が営法府の下にある山野局の長官だ。
 理解しやすい繋がりを持っている面々だったので、アンネリザも事前情報は覚えている。頭の中で彼女達の姿に家名を貼りつけながら、今日が終わってもちゃんと覚えておけるかは解らないが、この場では間違えないよう記憶できた。呼びかける機会があるとは思えないが。
「では、冷めない内に、どうぞ、召し上がって下さいませ」
 自己紹介の終了で、メリーラッツァが飲食の開始を促す。主に推められて飲まないは失礼なので、全員がカップを手にするのを見ながら、アンネリザもカップに口をつける。
(香りが死んでるわ…)
 ただ、飲む気にはなれず、本当に口をつけただけでそっとカップを戻したのだが。
「私達、アケチ家の末姫様にお会いできる日を、本当に楽しみにしておりましたのよ」
 アンネリザがカップを置く動作を見届けて、微笑みながら放たれたメリーラッツァの言葉に、周りの令嬢達が笑いを含みながら肯定の声を上げる。
(元々短い時間しかないわけだし、最初から攻勢をかけてきたわね。まぁ、コレトーを連れてくるなと言った時点で全員私の敵な事は確定事項だけど)
 嘲るような、見下すような、敵意に満ちた雰囲気に、ついに攻撃開始か、とアンネリザは思った。だが、顔には一切出さない。ただ、不思議そうに小さく首を傾げるだけだ。
「だって、ねぇ」
「ええ本当に」
 自分達だけ解っているという顔でくすくすと笑い合う。
 アンネリザの斜め後ろに控えているナナリスは、重ねて内側にしている右手をぐっと握り締めて湧き上がる苛立ちを抑えた。そっと主人を窺うと変わらず不思議そうに首を傾けている。
「ちょっと、王都では聞きませんのよ、男の侍従だなんて」
 フォーの言葉に、ナナリスはぐっと奥歯を噛み締めた。
(まぁ、私みたいに露出の少ない令嬢を攻撃するなら当然の緒よね。でも、そう。変わり映えのしないドレスの事でも言ってくるかと思ってたんだけど…そうなのね。あーあ…大人しくするつもりだったけどなんだか無性に腹が立ってきたわ)
 だが、アンネリザは苛立った様子もなく、不思議そうな顔のまま口を開く。
「然様でございますか」
 たったそれだけの返答に、当てこするような言い方では通じないと感じたのか、元々そのつもりだったのか、彼女達の言葉が露骨にコレトーを扱き下ろし始める。
「やはり身元の確かな者でないと不安ではありませんか。それなりに名の知れた家の者でないと、何があるか」
「それに、男の侍従だなんて、まるで、ねぇ?」
「ああ、そういえば、少し前に有りましたわねぇ、そんな事件」
 アンネリザにはなんの事か解らない。だが、ナナリスにはすぐに思いつく醜聞があった。
 王都でそれなりに羽振り良くやっていた子爵の家で、令嬢の侍従だった青年が、その令嬢と父親と関係を持ち金銭を貢がせていたという話だ。ある日青年が失踪して初めて解った被害額は家を傾けかねない程で、件の子爵家では恥を忍んで青年の捜索を公に依頼した。もっとも、事件から一年経った今でも発見には至っていないが。
「自分の主人とその父親と関係していたという話でしょう?」
「まぁ、それでは本当に男娼ではありませんか」
「でも美しい青年だったという話でしょう? あんな、あら、失礼…」
「まぁ、少々トウが立っていらっしゃるわよねぇ」
 ナナリスはこれ以上言われたら怒鳴り散らしてしまいそうだと思いながら上にした手の影で拳を握り締めていたが、視界の端で捉えているアンネリザは相変わらずだ。いや、扇子を開いて口元を隠し、そっとナナリスの方を見た。その仕草に、すぐに耳を近付ける。帰りましょうと言われたら迷わず頷こうという思いだったが、アンネリザの言葉は意外なものだった。
「ねぇ、ナナリス。だんしょうって何かしら? 皆様がああしてお話しているのだから有名なことなのでしょう?」
 扇子を開いて話すという行為は、どうぞ聞こえないふりをしてくださいね、という合図に過ぎず。実際には傍の者には聞こえている。特に、アンネリザが扇子を開いてからぴたりと無言になった令嬢達は、しっかりと聞き耳を立てていた。
 アンネリザの発言に対する反応は様々だった。
 まず、訊かれたナナリスは、どう答えて良いのか解らず言葉を詰まらせた。ミミリーとフォーは驚いた顔で見つめ合い、その後揃ってメリーラッツァの方を見た。カリコはぽかんとアンネリザを見つめ。フィアナは、何と言うか気になっているのだろう、ナナリスを見ていた。
「アケチ家の末姫様は男娼をご存知ありませんの?」
 訝るような、どこか呆れたような、そんな表情でメリーラッツァが訊いてきた。本来、扇子を広げた内側の会話を話題にするのはマナー違反だが、思わず声に出てしまったのだろう。
 その言葉を受けて、恥ずかしがりながら、アンネリザが頷いてみせる。
「その、私、領内を出たのは先のお見合いの場と今回だけで、王都で流行っている事など、本当に何も知らなくて。お恥ずかしい限りです」
 その、どこか見当違いな恥ずかしがり方に、本当に知らないのだと判断したのだろう。令嬢達が互いに目配せをした後、頷き合った。
「ごめんなさいね、ご存知無い事を話題にしたりして、退屈でしたでしょう?」
 先ほどまでの意地の悪い笑みを引っ込め、どこか上っ面ではあるが、優しげな笑顔を浮かべて令嬢達が口を開く。
「そうよね、こうした場では全員が共通して知っている事を話題をするべきだったわね」
「でしたら、先の舞踏会の事など、よろしいのではありません?」
「そうね、此処にいる皆が参加していましたもの。それが良いわね」
 親切心というよりは、初めから話題にするつもりだったのだろう。攻撃的な姿勢を改めたのも、優しさではなく単純に敵に値しないと判断しただけ。アンネリザを侮るような態度が改善されない事にナナリスは腹を立てたが、当の本人がそれなら解りますと言わんばかりに、笑顔で頷いているので、何を言うことも出来はしない。
「あの時、アケチの末姫様は、陛下とお下がりになったでしょう?」
「そうそう、あの後、会場はその事で持ち切りでしたのよ」
「どのようなお話をなさったのですか?」
 時間があまりないせいか、敵でないと判断したら知りたいことだけ聞ければ良いと考えたのか、知りたいあまりに気が急いているのか、中々の矢継ぎ早さで、アンネリザがレンフロと何を話したのかを訊いてきた。
 個人的な会話の内容を訊くような事は行儀の良い行為ではないが、アンネリザとしてもお茶会に招待してきた令嬢達は、皆それが訊きたいのだろうと覚悟はしていた事なので、行儀が悪い等と咎めはしない。というか、初めからその事を伝えるのが目的だ。
「どのようなですか?」
 焦らすというより、訊かれている事がいまいち解らないという態度で、アンネリザは何度も首を捻る。
「ええ」
「是非教えてくださいな」
 アンネリザの両側にあたる、フォーとカリコが勢い込んで前のめりになっている。
「でも、皆様と同じだと思いますよ?」
 アンネリザの言葉に、その場の誰もが歳相応のきょとんとした、素と思われる表情を浮かべた。
「え?」
「皆様って、どなたの事かしら?」
「地方領からお越しになっていた皆様です」
 令嬢達が再び目配せをし合っているが、アンネリザの発言が解らないとその表情が語っていたので、無言で目配せをし合う意味はあまり無いように思える。最終的に、カリコに視線が集中し、詳しく聞く役となったのだろう。アンネリザに困惑した笑みを浮かべながら話しかける。
「あの時、陛下と共に下がったのは、貴方だけだったのですけど? その、皆様というのはどういうことかしら」
「え…」
 カリコの言葉にアンネリザが驚きの表情を浮かべたあと、恥じ入るように俯いた。
「まぁ、そうでしたの。嫌だ、私、私だけだったなんて、そんな」
 その僅かに青ざめるような焦り様は、国王と親密だったのが自分だけだと知った態度には見えない。
「貴方だけだと、ご存知ありませんでしたの?」
「はい。あの、陛下は別室で私に領内の話を所望されました」
「は?」
 何を言ってるんだという顔を露骨にしてしまい、誤魔化すように咳払いをしたカリコは引きつった笑みを浮かべる。
「うんっ、ああ、そうでしたの?」
「はい。私、お見合いの場では緊張してしまって、ろくにお話をできませんでしたから、詳しく聞かせて欲しいと仰られて。私、できる限り懸命に話しましたけど、何分緊張してしまって、話し終えましたらすっかり疲れてしまってそのまま帰りましたので、その、てっきり、私の他にも地方領からいらした方は話を訊かれているのだと…わざわざ訊き直さなければならないほど話せなかったのは、私だけだったなんて」
 ああ、恥ずかしい、と顔を覆ってみせる。
 そんなアンネリザの様子に気を効かせて、ナナリスがメリーラツァの侍従へ視線を送る。僅かに頷いた侍従は、そっと彼女の主人へ耳打ちする。それを受けて、メリーラッツァはアンネリザは次のお茶会の予定が有るから、ここまでにしましょうと場を締める。
 恥じ入りながら礼をして、ナナリスに支えられつつアンネリザが退場する。来た道を戻って、水仙の棟へ帰るのだ。
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