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#15.ゲームの始まり
しおりを挟む『残り少ない冬休みを、有吉さんと過ごしたいな』
有吉英司は、貴水彰の妹・千鶴から別荘に招待された。
彼は貴水グループのトップに君臨する自分の姿を夢想した。夢を現実にする足掛かりは、向こうから転がり込んで来た。その貴水家の令嬢、貴水千鶴から交際を申し込まれたのだ。
「こういうのを棚から牡丹餅とか逆玉とかって言うんだろうな。『貴水さま』の腰巾着に甘んじていた甲斐があったってもんだ。その貴水さまだが、未成年の男娼を部屋に引っ張り込んだのがバレるのを懼れて、結局俺のことは不問に付したんだろうな。ふん、チョロいもんだ。
それにしても、お嬢さま……意外と大胆な性格だったんだな。見た目からして、奥手な方だと思ったんだが、女は色気づくのが早いのか? いつも美形の兄と比べられて不憫だが、もうニ三年もすりゃあ化粧の仕方でも覚えて、それなりに化けんだろうが、今はあれで我慢しといてやるか」
下劣な品性そのままの独り言を垂れ流しながら、有吉は予め渡されていた鍵で別荘に入った。
千鶴はまだ到着しておらず、管理人も不在だった。
別荘は千鶴の十八歳の誕生日に父親から贈られたもので、小さなコテージだと有吉は聞いていた。
「はんっ、これが十八の小娘に贈ったバースディープレゼント? コテージなんてもんじゃねぇだろ。宮殿じゃんかよ。金持ちって、やっぱ頭おかしいな」
コテージと言うよりは、パレス。それはまさに、壮麗な白亜の宮殿だった。
背景には深い森、正面にはプライベートビーチが広がり、室内は全て高級な調度品でコーディネートされ、落ち着いたアッパークラスの雰囲気を醸し出していた。
改めて有吉は貴水家の財力に戦いた。だが、あわよくば、これもいずれは自分のものになるかもしれないと唇の片方の端を上げてほくそ笑んだ。
ブロロッ……!
「雷……か?」
突如鳴り響く爆音に不審を抱き、有吉は窓の外を覗き見た。
雷鳴かと思われた音は、大型バイクのエンジン音だった。その数、十三台。フルフェイスヘルメットを被った戦闘服姿の男たちが、これ以上はないという禍々しさを纏って次々とバイクを降り、別荘の入り口に向かって来ていた。
「暴走族だ!」
セキュリティは万全のはずだった。自分はここに着くまでに二か所の門でチェックを受けた。なのに、それを突破して来たということか。だとしたら、とんでもなく厄介な、極めて凶暴な集団だ。有吉は身の危険を感じた。そして、隠れる算段をした。
プルッ♪
折しも、危機回避の出鼻を挫くかのようなタイミングでスマートフォンが鳴った。
「くそっ! こんな時に」
毒づきながら発信者を見て、慌てて電話に出た。
「千鶴さん!」
『有吉さん、もうすぐ行きます』
「大変です!」
『どうかなさいまして?』
焦る自分の声とは裏腹に、電話の向こうの千鶴の声は苛立たしいほどゆったりしていた。有吉はサイレントで舌打ちをした。
「怪しい者たちが、敷地内に侵入しています! 警察に連絡を!」
『その必要はありません。ゲームですから』
「ゲーム?」
『ええ、ゲームです。あなたも、お好きでしょう? 楽しんでね』
電話はそこで切れた。
妙に落ち着き払った千鶴の声音が不気味でさえあった。
「ゲーム、だって?」
有吉は千鶴の言葉を反芻した。軽い響きに掩蔽された邪悪さに、何故かぞくりと鳥肌が立った。自分も以前、何処かで、この言葉を使わなかったか?
「有吉英司だな」
突然、有吉のいる部屋の扉が開き、黒い覆面の男たちが現われた。
その中のひとり、二メートルはあろうかという大男が、くぐもった低い声で言った。
「さあ、ゲームを始めるぞ」
つづく
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