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二章
あかり と ともしび
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——翌年、12月——
よく晴れた寒空の下。研究室の上に位置する公園。その中に併設されたカフェの前で、神崎明は待っていた。
待ち合わせ時間の10分前。こんな寒い日に待たせるのは申し訳ないという気持ちから、少し前に到着した神崎。そうやって気を遣い過ぎる所が人付き合いに向いていないのだろうな、と自分でも思い、思わず苦い笑みが溢れる。
(外、明るいな)
生活の殆どを研究室で過ごす神崎にとって陽の光は明る過ぎる位で。外に出る度(これが、普通の人が過ごす世界なのか)と、どこか浮世離れしたような錯覚が起きる。
冷たく透き通った空気を胸いっぱいに吸い込むと、体の内側から洗われていくような気分になった。
日差しは暖かいが、時折凍てつくような風が大地を駆け抜けていく。息を吐くと、白い煙が湧き上がった。かと思ったら、風に乗って一瞬で見えなくなってしまう。見えないと分かっていても目で追っていった先。こちらへ向かって歩いて来る人影が見えた。
「あ、神崎先生ー!」
こちらを見つけると手を大きく振りながら、早足でどんどん近づいて来る。
「! 虹葉ちゃん。久しぶり!」
やって来たのは虹葉であった。
「お久しぶりです。今日はありがとうございます」
虹葉は神崎の前に到着すると、笑顔で会釈をする。
そんな虹葉を、神崎はしげしげと眺めた。
(よかった。変わらず元気そうだ)
屈託のない笑みを浮かべる彼女を見て、思わず安堵した。
「いいのいいの、アタシも虹葉ちゃんに会いたかったからね。いやー、ほんと久しぶり。前回のメンテが7月だったから、だいたい半年ぶり?」
「そうですね。あれから色々あって、話したい事もいっぱいあるんですけど……外も寒いですし、入りましょうか」
きっと、マフラーと手袋で完全防備の神崎を見かねたのだろう。
神崎は頷くと、店の中へと足を向けた。
* * *
各々飲み物を買った後、窓際のカウンター席へと落ち着いた二人。ほっと一息つく中、先に口を開いたのは神崎であった。
「今野くんとはどう? 変わりはない?」
「はい。おかげさまで。今野くんも、変わらず元気ですよ」
「そう。ならよかった。まぁ、心配はしてなかったけどね」
神崎は先程買ったコーヒーを啜る。
「それより良かったの? いろは用に付けていた計器を全部外しちゃって」
「はい。良いんです。確かに便利でしたけど、それじゃやっぱりフェアじゃないというか……分からない位の方がいい事もあるんです」
虹葉は申し訳なさそうに俯きながら答える。
「そう。やっぱり偉いよ。虹葉ちゃんは」
「そんな。神崎先生程じゃないですよ。感謝してもしきれないです」
「アタシは自分のやりたい事やってただけだよ」
「でも、神崎先生は私を救ってくれました。親と会わなくていいようにって、マンションまで用意していただいて……お金は社会人になったら、ちゃんと返しますので……」
「そんな物要らないって。やりたいからやってるだけなんだから。それより今は、人生を楽しんで? 学生時代なんて、一度しかないんだから」
「ありがとうございます」と微笑む虹葉。神崎は、本当にこの子はいい子だな、などとしみじみと思うのであった。
「それより、そろそろクリスマスだね。虹葉ちゃんは何か、予定とかあるの?」
「はい! 今野くんと、一緒にご飯を食べた後、イルミネーションを見ようって」
誰が見ても眩しくなる程の笑顔であった。神崎は微笑みながら、思わず目を細める。
「そういう神崎先生はどうなんですか?」
「アタシっ? アタシは……いや、アタシも……実は……あり、ます」
「本当ですか⁉︎」
虹葉の姿勢が急に前のめりになった。
「誰とです? とっても気になります」
虹葉は食い気味に尋ねる。キャー! という感激の悲鳴が聞こえて来そうな程、目を輝かせている。
「えと……渡来、先生、に。夕食、を、誘われて、います」
「渡来先生! その様子は、お付き合い、と見ていいですか?」
「あ、はい……。実は、半年くらい前から……そんな感じになりまして」
神崎は顔を真っ赤にしながら、段々と俯いていく。ただでさえ背筋が悪いのに、益々猫背になっていった。
「えーっ! そんな、この前はそんな事、一言も言ってなかったじゃないですか。でも、うん。いいですね! もう全力で応援していますね」
虹葉はそんな神崎の背中をバシバシと叩いた。
……ちょっと痛い。
「他人に食事誘われるのだって殆ど無かったのに。もう、今から緊張で死にそうです」
「大丈夫ですよ。普段通りにしていれば。渡来先生はエスコートしたい派だと見ました。だから、全部渡来先生に身を任せてしまえば大丈夫です。きっと」
「……その根拠と自信はどこから?」
「女の子の感です!」
「……はぁ」
神崎は背筋を少しだけ戻すと、コーヒーを口に含んだ。
「それに、一番大事なのは楽しむ事ですよ」
「楽しめる、かなぁ……」
「あまり意識し過ぎず、肩の力を抜いて、自然体でいきましょう!」
「自然体、ね……」
自然体。それは神崎にとって、最も難しい事の一つだ。他人の顔色を常に気にしながら生きてきた彼女には、もうずっと昔に忘れてしまった感覚なのである。
どこか遠い目をする神崎を見かねて、虹葉はこう質問をした。
「神崎先生は、渡来先生の事をどう思っているんですか?」
「どうって……」
「好きですか?」
「すっ……好き、だと、思い……ます」
「あっはは。そんなに畏まらなくてもいいのに」
虹葉は笑いながら、神崎の背中を再び叩く。
……やっぱり痛いな。
神崎は再び黙り込んでしまった。自らに自信が持てないのか、苦悶の表情が浮かんでいた。
それを見た虹葉は、もう一度。今度は少しだけ切り出し方を変えて、質問をする。
「渡来先生といると、幸せですか?」
「……(コクン)」
神崎は俯きながら、無言で頷いた。その背中は小さく、消え入りそうではあったが、確かに頷いていた。
それを確認すると、虹葉の目は一段と優しくなる。それから胸を張って、神崎に向かってこう宣言をした。
「私、幸せになるって、決めたんです」
「? 虹葉ちゃん?」
それはどう言う……と言いかけた神崎を制すように、虹葉は言葉を続ける。
「私、あの事件の前まで『私なんて幸せになっちゃいけない』って思ってたんです。本当、今思うと意味わかんないですよね。誰かに言われた訳でもないのに」
それを聞いた神崎は、咄嗟に顔を上げた。
その様子を見た虹葉は、(やっぱり……)と思いながら話を続ける。
「でも、あの事件の後。今野くんに、言われたんです。『幸せになるのは簡単で、特別な事なんかじゃない』って」
虹葉は上を見上げる。まるで、あの時を思い出しているように。
「それを聞いて、思ったんです。幸せを遠ざけていたのは自分だったんだ、って」
それから虹葉はミルクティーのカップを両手で包み込むと、自身の手元を見つめながらそう言った。その手は強張っていて、指先は冷え切っていた。
「だから、あの日から。私は幸せになるって、決めたんです」
顔を上げた虹葉の瞳は、真っ直ぐに神崎を捉えた。
外から差す光が虹葉の顔に差し込んでいる。その様子は、神崎にはまるで後光のように写って。目を見開き、息を飲み込んだ。数秒後。瞬きを終えると、目の前にはいつもと変わらない虹葉が微笑んでいた。
「……強くなったね、虹葉ちゃん」
「そ、そうですかね?」
神崎は大きく頷く。
「アタシも、頑張るよ」
そう言うと、優しく、自然に微笑んだ。
それを見届けた虹葉は、手元のミルクティーを口に含む。柔らかな暖かさが体全体に染み渡るようであった。
「あっ、そう言えば」
唐突に何かを思い出したように虚空を見つめる虹葉。それからこちらへ顔を戻すと、こう質問をした。
「最近話題になっているバーチャルアイドルの〝月日 いろは〟。あれ、いろはちゃんですよね?」
「……まぁ、気付くよねー」
神崎は口元を引き攣らせた。
「やっぱり! もう私、すっごいファンなんです!」
あまりにも透き通った目で見つめて来るため、どう反応していいかわからなくなってしまった神崎。そんな神崎をお構いなしと言わんばかりに、虹葉は熱を込めて語り始める。
「私の友達……あ、井ノ口さんって言うんですけど、初めは彼女から教えてもらったんです。見た瞬間、あ、これはいろはちゃんだって思って。今野くんにも見せたら、もう本当にびっくりしてて。神崎先生にも見せてあげたかったです。あんなに口を開けたまま固まってる今野くん見たの、初めてだったんで」
すごい勢いで捲し立てる虹葉に圧倒されてしまう神崎。何か言おうにも、そんな隙など与えてくれない。虹葉の弁舌は留まるところを知らないようであった。
「すごいですよね。あんなに画面を自由に動き回って。コメントにも『どうやってるの?』とか『謎技術』とかいっぱい付いてて、今めっちゃ話題になってるんですよ。私達としては、やっぱり本物は違うなって話してて。ほんっとーにカワイイし、見ていて笑顔になれるんです。これからも応援してます。あ、今度今野くんと一緒にサインもらいに行きたいんですけど、いいですか?」
「えっ……あ、いい……と、思う、よ?」
「やった~! ありがとうございます」
それからも、虹葉の熱弁は止まらなかった。
神崎は半ばついて行けずに聞き手一方であったが、不思議と嫌な感じはしなかった。それどころか、いろはが大勢の人から好かれている話を聞くたびに、誇らしい気持ちになるのである。
(後で、教えてあげなきゃ)
いろはの喜ぶ顔を思い浮かべると、自然と口元が緩んだ。
(こんなに沢山の人の注目を集める存在になるなんて。初めて会話した時のアタシに言ったら、きっと信じてくれないな)
いろはと初めて会話をした日の記憶が蘇る。
彼女は実に機械的で、合理主義で。アタシの質問した事にしか反応を示さなかったあの子が。
多くの自己崩壊を乗り越え、虹葉ちゃんの記憶との干渉を経て。
あたしはいろはだと胸を張って言える日がやって来るなんて。
きっと、想像も出来なかった。
「神崎先生、ニヤけてますよ?」
「えっ? はっ。なんでもない、なんでもないよ」
咄嗟に取り繕う神崎。でも、虹葉にはお見通しで。「いろはちゃんの事、考えてたんでしょ」とニヤニヤとした顔で指摘されてしまう。
神崎は「うっ」という呻き声と共に押し黙ってしまった。
(まぁでも、やっぱり嬉しいよね!)
虹葉にちょっかいを出される中、そんな事を思う神崎であった。
それはきっと、生み出した者としての喜びだと気付くのは、もう少し先のお話である。
その後も、とりとめの無い話題で盛り上がる二人。楽しい時間はあっという間に過ぎて行って。二人はまた会う約束をした後、帰路へと着くのであった。
——クリスマス当日——
俺は虹葉と夕食を食べ終えた後、そのまま近くの公園へと来ていた。
この時期は公園の一部がイルミネーションの装飾が施され、有名なデートスポットとなる。
多くのカップル達に混じって、二人も手を繋いで歩いていた。
木にはシャンパンゴールドの電飾が施されている。それが何本も連なっていて。普段は暗い公園も、この時ばかりは光で溢れていた。
それから歩みを進めると、煌びやかな光のトンネルが姿を現した。先程までの単色とは打って変わって、こちらは幾つもの色がグラデーションを織り成している。
「わぁ……」
虹葉は思わず感嘆を漏らした。トンネルの前で歩みを止め、見入っている。
「入ってみようか」
「うん!」
元気な返事と共に、虹葉は歩き出した。
トンネルの中はどこを見ても輝いていて、それを見る虹葉の瞳にも輝きが映り込んでいる。心からの笑顔を浮かべる彼女を見ているだけで、来てよかったと思った。
「すごいね! 綺麗だね!」
「うん。綺麗だ」
光の中を、二人で歩いて行く。握った手の温もりを噛み締めながら、ゆっくりと、歩いて行く。赤、青、黄、緑、白。目眩く変わっていく光の奔流。その中に流されるように、二人は歩いていった。
「あ、そろそろ終わっちゃうね」
出口が見えてしまった虹葉の声が、段々と小さくなる。
「そうだね、出たらちょっと休む?」
そう提案した俺に虹葉は素直に頷くと、握った手に少しだけ力を込めた。
トンネルを抜けた先、イルミネーションから少し離れた場所。街灯の下にあるベンチに、虹葉を座らせる。
それから周りを見渡すと、自販機が目についた。
「ちょっと待ってて」と言い残して、自販機へと急いで向かう。温かいミルクティーを2本買って戻り、片方を虹葉に手渡した。
それから俺も虹葉の隣へと腰を下ろす。
「今日は、どうだった?」
「ご飯も美味しかったし、イルミネーションも綺麗で。すっごく良かった!」
「そう。なら良かった」
「でも、私は怜の隣に居られれば。それだけで幸せです」
「! そうか……」
今だ。今しかない。
俺は意を決して立ち上がると、虹葉に向かい合い、片膝をついた。
虹葉は何が始まったのか分からずに、ソワソワとしている。
「虹葉、俺も虹葉の隣に居られれば、それだけで幸せだ。だから……」
俺はポケットに入れておいた箱を取り出し、両手で包み込んだ。
「だから、これからも。俺と一緒に、生きて欲しい。ずっと隣に居て欲しい」
そう言いながら、俺は箱を開いた。
中には、指輪が入っていた。いつの日か虹葉が欲しそうにしていた指輪。波のような意匠に、小さなダイヤが数粒寄り添うように施された、シンプルながらも美しい指輪。
「全く同じのって訳にはいかなかったんだけど……。どう、かな?」
なんて告白しようか、ずっと悩んでいたけれど。結局、今でも纏まってなくて。
でも、これが俺の本心で、変わらない願いだ。
虹葉は硬直したまま動かなかった。
……ダメだったか?
不安に襲われながらも、虹葉の次の言葉を待った。指輪の箱を持つ手が震えていたのはきっと、寒さのせいだ。
それから虹葉は一筋の涙をこぼした。涙は街灯の光を浴びて、輝きながら流れ落ちた。その様はまるで流れ星のようで。今日見た光の中で一際美しく見えて。俺は思わず息を呑んだ。
それから虹葉は顔をほころばせた後、こう返事をした。
「うん。もちろん。私の為に、ありがとう、怜」
……よかった。
ほっと胸を撫で下ろす。
「手、出して」
俺は指輪を外し、虹葉の薬指へと滑り込ませる。指輪はすんなりと、虹葉の指へと収まった。
虹葉は左手を上にあげ、街灯の光に透かせるように傾ける。まだ現実味を帯びていないようで、自身の指を不思議そうに眺めていた。
(ともかく、無事に渡せてよかった)
無意識に力が入っていたようで、安心した途端、身体中の筋肉に疲労の波が押し寄せて来た。
俺はへろへろになりながらも、ゆっくりと立ち上がった。
その時。
「怜! 愛してる!」
虹葉が飛び付いてきた。腕をしっかりと回し、胸に顔を埋めてくる。それは少し痛いくらいで。でも、幸せな、痛みだった。
「俺も、愛してる」
虹葉の体に腕を回しながらそう答える。
「怜……」
虹葉はこちらをじっと見つめた。虹葉の潤んだ瞳は、俺だけを捉えて離さなかった。
こんなに真っ直ぐ見つめられると、なんだかむず痒い気分になってくる。
「顔、赤いね」
「——うるさい」
虹葉は動揺する俺を茶化した後、ゆっくりと瞼を閉じていった。
これはきっと、そういう事だろう。
俺は顔を近づける。近づくにつれて、心臓の音がドクドクと高鳴る。心臓が口から飛び出そうという言い回しを、身をもって知った。
唇まで、あと数センチ。
これだけ近ければ、さっきからうるさく鳴り続けている心音が虹葉にも聞こえてしまうのではないかと心配になったが、ここで止める訳にはいかない。
もうすぐ虹葉の唇に届く。
そう思い、俺も目を閉じた。
……唇に、柔らかな感触が当たった。
その先にある熱はまるで灯火のようで。
凍えるような寒さの中でどんなにかき消されそうになっても、その灯りは、確かにそこにあった。小さくとも揺らぐことの無いその光は、暗闇の中でも灯り続けていた。
——温かい。
これからまた、どんな夜が来ても。この灯りを目指して進めば、きっと、迷うことはない。そんな安らぎと希望を感じさせる、温かな灯火。
——幸せになろう。一緒に。
俺はこれからも、長い道のりを進んで行くのだろう。この灯火を両手で包み込み、決して消えないように。大事に、大事に、守りながら。
よく晴れた寒空の下。研究室の上に位置する公園。その中に併設されたカフェの前で、神崎明は待っていた。
待ち合わせ時間の10分前。こんな寒い日に待たせるのは申し訳ないという気持ちから、少し前に到着した神崎。そうやって気を遣い過ぎる所が人付き合いに向いていないのだろうな、と自分でも思い、思わず苦い笑みが溢れる。
(外、明るいな)
生活の殆どを研究室で過ごす神崎にとって陽の光は明る過ぎる位で。外に出る度(これが、普通の人が過ごす世界なのか)と、どこか浮世離れしたような錯覚が起きる。
冷たく透き通った空気を胸いっぱいに吸い込むと、体の内側から洗われていくような気分になった。
日差しは暖かいが、時折凍てつくような風が大地を駆け抜けていく。息を吐くと、白い煙が湧き上がった。かと思ったら、風に乗って一瞬で見えなくなってしまう。見えないと分かっていても目で追っていった先。こちらへ向かって歩いて来る人影が見えた。
「あ、神崎先生ー!」
こちらを見つけると手を大きく振りながら、早足でどんどん近づいて来る。
「! 虹葉ちゃん。久しぶり!」
やって来たのは虹葉であった。
「お久しぶりです。今日はありがとうございます」
虹葉は神崎の前に到着すると、笑顔で会釈をする。
そんな虹葉を、神崎はしげしげと眺めた。
(よかった。変わらず元気そうだ)
屈託のない笑みを浮かべる彼女を見て、思わず安堵した。
「いいのいいの、アタシも虹葉ちゃんに会いたかったからね。いやー、ほんと久しぶり。前回のメンテが7月だったから、だいたい半年ぶり?」
「そうですね。あれから色々あって、話したい事もいっぱいあるんですけど……外も寒いですし、入りましょうか」
きっと、マフラーと手袋で完全防備の神崎を見かねたのだろう。
神崎は頷くと、店の中へと足を向けた。
* * *
各々飲み物を買った後、窓際のカウンター席へと落ち着いた二人。ほっと一息つく中、先に口を開いたのは神崎であった。
「今野くんとはどう? 変わりはない?」
「はい。おかげさまで。今野くんも、変わらず元気ですよ」
「そう。ならよかった。まぁ、心配はしてなかったけどね」
神崎は先程買ったコーヒーを啜る。
「それより良かったの? いろは用に付けていた計器を全部外しちゃって」
「はい。良いんです。確かに便利でしたけど、それじゃやっぱりフェアじゃないというか……分からない位の方がいい事もあるんです」
虹葉は申し訳なさそうに俯きながら答える。
「そう。やっぱり偉いよ。虹葉ちゃんは」
「そんな。神崎先生程じゃないですよ。感謝してもしきれないです」
「アタシは自分のやりたい事やってただけだよ」
「でも、神崎先生は私を救ってくれました。親と会わなくていいようにって、マンションまで用意していただいて……お金は社会人になったら、ちゃんと返しますので……」
「そんな物要らないって。やりたいからやってるだけなんだから。それより今は、人生を楽しんで? 学生時代なんて、一度しかないんだから」
「ありがとうございます」と微笑む虹葉。神崎は、本当にこの子はいい子だな、などとしみじみと思うのであった。
「それより、そろそろクリスマスだね。虹葉ちゃんは何か、予定とかあるの?」
「はい! 今野くんと、一緒にご飯を食べた後、イルミネーションを見ようって」
誰が見ても眩しくなる程の笑顔であった。神崎は微笑みながら、思わず目を細める。
「そういう神崎先生はどうなんですか?」
「アタシっ? アタシは……いや、アタシも……実は……あり、ます」
「本当ですか⁉︎」
虹葉の姿勢が急に前のめりになった。
「誰とです? とっても気になります」
虹葉は食い気味に尋ねる。キャー! という感激の悲鳴が聞こえて来そうな程、目を輝かせている。
「えと……渡来、先生、に。夕食、を、誘われて、います」
「渡来先生! その様子は、お付き合い、と見ていいですか?」
「あ、はい……。実は、半年くらい前から……そんな感じになりまして」
神崎は顔を真っ赤にしながら、段々と俯いていく。ただでさえ背筋が悪いのに、益々猫背になっていった。
「えーっ! そんな、この前はそんな事、一言も言ってなかったじゃないですか。でも、うん。いいですね! もう全力で応援していますね」
虹葉はそんな神崎の背中をバシバシと叩いた。
……ちょっと痛い。
「他人に食事誘われるのだって殆ど無かったのに。もう、今から緊張で死にそうです」
「大丈夫ですよ。普段通りにしていれば。渡来先生はエスコートしたい派だと見ました。だから、全部渡来先生に身を任せてしまえば大丈夫です。きっと」
「……その根拠と自信はどこから?」
「女の子の感です!」
「……はぁ」
神崎は背筋を少しだけ戻すと、コーヒーを口に含んだ。
「それに、一番大事なのは楽しむ事ですよ」
「楽しめる、かなぁ……」
「あまり意識し過ぎず、肩の力を抜いて、自然体でいきましょう!」
「自然体、ね……」
自然体。それは神崎にとって、最も難しい事の一つだ。他人の顔色を常に気にしながら生きてきた彼女には、もうずっと昔に忘れてしまった感覚なのである。
どこか遠い目をする神崎を見かねて、虹葉はこう質問をした。
「神崎先生は、渡来先生の事をどう思っているんですか?」
「どうって……」
「好きですか?」
「すっ……好き、だと、思い……ます」
「あっはは。そんなに畏まらなくてもいいのに」
虹葉は笑いながら、神崎の背中を再び叩く。
……やっぱり痛いな。
神崎は再び黙り込んでしまった。自らに自信が持てないのか、苦悶の表情が浮かんでいた。
それを見た虹葉は、もう一度。今度は少しだけ切り出し方を変えて、質問をする。
「渡来先生といると、幸せですか?」
「……(コクン)」
神崎は俯きながら、無言で頷いた。その背中は小さく、消え入りそうではあったが、確かに頷いていた。
それを確認すると、虹葉の目は一段と優しくなる。それから胸を張って、神崎に向かってこう宣言をした。
「私、幸せになるって、決めたんです」
「? 虹葉ちゃん?」
それはどう言う……と言いかけた神崎を制すように、虹葉は言葉を続ける。
「私、あの事件の前まで『私なんて幸せになっちゃいけない』って思ってたんです。本当、今思うと意味わかんないですよね。誰かに言われた訳でもないのに」
それを聞いた神崎は、咄嗟に顔を上げた。
その様子を見た虹葉は、(やっぱり……)と思いながら話を続ける。
「でも、あの事件の後。今野くんに、言われたんです。『幸せになるのは簡単で、特別な事なんかじゃない』って」
虹葉は上を見上げる。まるで、あの時を思い出しているように。
「それを聞いて、思ったんです。幸せを遠ざけていたのは自分だったんだ、って」
それから虹葉はミルクティーのカップを両手で包み込むと、自身の手元を見つめながらそう言った。その手は強張っていて、指先は冷え切っていた。
「だから、あの日から。私は幸せになるって、決めたんです」
顔を上げた虹葉の瞳は、真っ直ぐに神崎を捉えた。
外から差す光が虹葉の顔に差し込んでいる。その様子は、神崎にはまるで後光のように写って。目を見開き、息を飲み込んだ。数秒後。瞬きを終えると、目の前にはいつもと変わらない虹葉が微笑んでいた。
「……強くなったね、虹葉ちゃん」
「そ、そうですかね?」
神崎は大きく頷く。
「アタシも、頑張るよ」
そう言うと、優しく、自然に微笑んだ。
それを見届けた虹葉は、手元のミルクティーを口に含む。柔らかな暖かさが体全体に染み渡るようであった。
「あっ、そう言えば」
唐突に何かを思い出したように虚空を見つめる虹葉。それからこちらへ顔を戻すと、こう質問をした。
「最近話題になっているバーチャルアイドルの〝月日 いろは〟。あれ、いろはちゃんですよね?」
「……まぁ、気付くよねー」
神崎は口元を引き攣らせた。
「やっぱり! もう私、すっごいファンなんです!」
あまりにも透き通った目で見つめて来るため、どう反応していいかわからなくなってしまった神崎。そんな神崎をお構いなしと言わんばかりに、虹葉は熱を込めて語り始める。
「私の友達……あ、井ノ口さんって言うんですけど、初めは彼女から教えてもらったんです。見た瞬間、あ、これはいろはちゃんだって思って。今野くんにも見せたら、もう本当にびっくりしてて。神崎先生にも見せてあげたかったです。あんなに口を開けたまま固まってる今野くん見たの、初めてだったんで」
すごい勢いで捲し立てる虹葉に圧倒されてしまう神崎。何か言おうにも、そんな隙など与えてくれない。虹葉の弁舌は留まるところを知らないようであった。
「すごいですよね。あんなに画面を自由に動き回って。コメントにも『どうやってるの?』とか『謎技術』とかいっぱい付いてて、今めっちゃ話題になってるんですよ。私達としては、やっぱり本物は違うなって話してて。ほんっとーにカワイイし、見ていて笑顔になれるんです。これからも応援してます。あ、今度今野くんと一緒にサインもらいに行きたいんですけど、いいですか?」
「えっ……あ、いい……と、思う、よ?」
「やった~! ありがとうございます」
それからも、虹葉の熱弁は止まらなかった。
神崎は半ばついて行けずに聞き手一方であったが、不思議と嫌な感じはしなかった。それどころか、いろはが大勢の人から好かれている話を聞くたびに、誇らしい気持ちになるのである。
(後で、教えてあげなきゃ)
いろはの喜ぶ顔を思い浮かべると、自然と口元が緩んだ。
(こんなに沢山の人の注目を集める存在になるなんて。初めて会話した時のアタシに言ったら、きっと信じてくれないな)
いろはと初めて会話をした日の記憶が蘇る。
彼女は実に機械的で、合理主義で。アタシの質問した事にしか反応を示さなかったあの子が。
多くの自己崩壊を乗り越え、虹葉ちゃんの記憶との干渉を経て。
あたしはいろはだと胸を張って言える日がやって来るなんて。
きっと、想像も出来なかった。
「神崎先生、ニヤけてますよ?」
「えっ? はっ。なんでもない、なんでもないよ」
咄嗟に取り繕う神崎。でも、虹葉にはお見通しで。「いろはちゃんの事、考えてたんでしょ」とニヤニヤとした顔で指摘されてしまう。
神崎は「うっ」という呻き声と共に押し黙ってしまった。
(まぁでも、やっぱり嬉しいよね!)
虹葉にちょっかいを出される中、そんな事を思う神崎であった。
それはきっと、生み出した者としての喜びだと気付くのは、もう少し先のお話である。
その後も、とりとめの無い話題で盛り上がる二人。楽しい時間はあっという間に過ぎて行って。二人はまた会う約束をした後、帰路へと着くのであった。
——クリスマス当日——
俺は虹葉と夕食を食べ終えた後、そのまま近くの公園へと来ていた。
この時期は公園の一部がイルミネーションの装飾が施され、有名なデートスポットとなる。
多くのカップル達に混じって、二人も手を繋いで歩いていた。
木にはシャンパンゴールドの電飾が施されている。それが何本も連なっていて。普段は暗い公園も、この時ばかりは光で溢れていた。
それから歩みを進めると、煌びやかな光のトンネルが姿を現した。先程までの単色とは打って変わって、こちらは幾つもの色がグラデーションを織り成している。
「わぁ……」
虹葉は思わず感嘆を漏らした。トンネルの前で歩みを止め、見入っている。
「入ってみようか」
「うん!」
元気な返事と共に、虹葉は歩き出した。
トンネルの中はどこを見ても輝いていて、それを見る虹葉の瞳にも輝きが映り込んでいる。心からの笑顔を浮かべる彼女を見ているだけで、来てよかったと思った。
「すごいね! 綺麗だね!」
「うん。綺麗だ」
光の中を、二人で歩いて行く。握った手の温もりを噛み締めながら、ゆっくりと、歩いて行く。赤、青、黄、緑、白。目眩く変わっていく光の奔流。その中に流されるように、二人は歩いていった。
「あ、そろそろ終わっちゃうね」
出口が見えてしまった虹葉の声が、段々と小さくなる。
「そうだね、出たらちょっと休む?」
そう提案した俺に虹葉は素直に頷くと、握った手に少しだけ力を込めた。
トンネルを抜けた先、イルミネーションから少し離れた場所。街灯の下にあるベンチに、虹葉を座らせる。
それから周りを見渡すと、自販機が目についた。
「ちょっと待ってて」と言い残して、自販機へと急いで向かう。温かいミルクティーを2本買って戻り、片方を虹葉に手渡した。
それから俺も虹葉の隣へと腰を下ろす。
「今日は、どうだった?」
「ご飯も美味しかったし、イルミネーションも綺麗で。すっごく良かった!」
「そう。なら良かった」
「でも、私は怜の隣に居られれば。それだけで幸せです」
「! そうか……」
今だ。今しかない。
俺は意を決して立ち上がると、虹葉に向かい合い、片膝をついた。
虹葉は何が始まったのか分からずに、ソワソワとしている。
「虹葉、俺も虹葉の隣に居られれば、それだけで幸せだ。だから……」
俺はポケットに入れておいた箱を取り出し、両手で包み込んだ。
「だから、これからも。俺と一緒に、生きて欲しい。ずっと隣に居て欲しい」
そう言いながら、俺は箱を開いた。
中には、指輪が入っていた。いつの日か虹葉が欲しそうにしていた指輪。波のような意匠に、小さなダイヤが数粒寄り添うように施された、シンプルながらも美しい指輪。
「全く同じのって訳にはいかなかったんだけど……。どう、かな?」
なんて告白しようか、ずっと悩んでいたけれど。結局、今でも纏まってなくて。
でも、これが俺の本心で、変わらない願いだ。
虹葉は硬直したまま動かなかった。
……ダメだったか?
不安に襲われながらも、虹葉の次の言葉を待った。指輪の箱を持つ手が震えていたのはきっと、寒さのせいだ。
それから虹葉は一筋の涙をこぼした。涙は街灯の光を浴びて、輝きながら流れ落ちた。その様はまるで流れ星のようで。今日見た光の中で一際美しく見えて。俺は思わず息を呑んだ。
それから虹葉は顔をほころばせた後、こう返事をした。
「うん。もちろん。私の為に、ありがとう、怜」
……よかった。
ほっと胸を撫で下ろす。
「手、出して」
俺は指輪を外し、虹葉の薬指へと滑り込ませる。指輪はすんなりと、虹葉の指へと収まった。
虹葉は左手を上にあげ、街灯の光に透かせるように傾ける。まだ現実味を帯びていないようで、自身の指を不思議そうに眺めていた。
(ともかく、無事に渡せてよかった)
無意識に力が入っていたようで、安心した途端、身体中の筋肉に疲労の波が押し寄せて来た。
俺はへろへろになりながらも、ゆっくりと立ち上がった。
その時。
「怜! 愛してる!」
虹葉が飛び付いてきた。腕をしっかりと回し、胸に顔を埋めてくる。それは少し痛いくらいで。でも、幸せな、痛みだった。
「俺も、愛してる」
虹葉の体に腕を回しながらそう答える。
「怜……」
虹葉はこちらをじっと見つめた。虹葉の潤んだ瞳は、俺だけを捉えて離さなかった。
こんなに真っ直ぐ見つめられると、なんだかむず痒い気分になってくる。
「顔、赤いね」
「——うるさい」
虹葉は動揺する俺を茶化した後、ゆっくりと瞼を閉じていった。
これはきっと、そういう事だろう。
俺は顔を近づける。近づくにつれて、心臓の音がドクドクと高鳴る。心臓が口から飛び出そうという言い回しを、身をもって知った。
唇まで、あと数センチ。
これだけ近ければ、さっきからうるさく鳴り続けている心音が虹葉にも聞こえてしまうのではないかと心配になったが、ここで止める訳にはいかない。
もうすぐ虹葉の唇に届く。
そう思い、俺も目を閉じた。
……唇に、柔らかな感触が当たった。
その先にある熱はまるで灯火のようで。
凍えるような寒さの中でどんなにかき消されそうになっても、その灯りは、確かにそこにあった。小さくとも揺らぐことの無いその光は、暗闇の中でも灯り続けていた。
——温かい。
これからまた、どんな夜が来ても。この灯りを目指して進めば、きっと、迷うことはない。そんな安らぎと希望を感じさせる、温かな灯火。
——幸せになろう。一緒に。
俺はこれからも、長い道のりを進んで行くのだろう。この灯火を両手で包み込み、決して消えないように。大事に、大事に、守りながら。
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