不滅のティアラ 〜狂おしいほど愛された少女の物語〜

白銀一騎

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〜シンデレラガール〜

大門の死闘

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 レンがアークガルド城の大門についたときには、辺りはすでに騒然となっていた。

 時折大門の外から弓矢が降ってきてそれに当たって負傷した兵士達があちこちに居た。大門の前には大勢の信者たちが詰めかけていた。

 アークガルド城の大門前には小さな橋が架かっていて、その橋の上に大勢が押し寄せていたので、このままでは橋が人の重さで壊れそうになっていた。

 信者たちはどこからか大木を持ってきて、多くの信者がその大木を担いで釣鐘の様に大門に衝突させていた。大門は大きな音を立て振動すると大きなヒビが入った。

 あと2~3回同じように大木をぶつけられれば門が壊れてしまうと思ったレンは、大門に近づくと近くの衛兵に大門を開放するように言った。

「何を言っているんだ? そんなことをすれば大勢の信者達が一斉に城内になだれ込んでしまうぞ!!」

 衛兵は必死でレンに抵抗したが、レンも負けじと言い返した。

「早くしろ!! いずれにしろ、もうこの大門は持ちこたえられない。俺に任せろ!!」

「で……ですが……」

「任せろと言ってるんだ!! 誰一人として城内に入れやしない」

 漆黒のレンにそこまで言われて衛兵は観念した様子で大門を開放するように仲間の衛兵に言った。仲間の衛兵は大門を開けるため操作盤に走って行った。

 レンはその様子を見届けると大門の前に立ち腰に下げている刀の柄に手をかけた。漆黒のオーラが体中から溢れだして、あっという間に体中が包まれた。

『ゴゴゴゴ…………」

「な……なんだ? 大門が開くぞ! このスキに城の中になだれ込むぞ!!」

 多くの信者が大門の開いた隙間から一斉に入ってきた。

『ドォオオオーーーン!!!』

 レンは前方の地面に刀を振り下ろした。ものすごい衝撃波が出て大門に入ろうとした信者達は10メートルほど後ろに吹き飛ばされた。

 レンは攻撃した後にゆっくりと大門の外に向かって歩き出した。近くの衛兵に自分が大門から出たら門を閉めろと言った。

「そ……そんなことをしたらあなたが無事ではすみませんよ」

「大丈夫だ。俺がここで食い止める。心配するな」

 レンはそう言うと大門から外に出ていった。衛兵はレンに言われたとおり大門から出ていくのを見届けるとしぶしぶ門を閉止した。


 大門の外は何が起こったかわからない信者達がパニックを起こしていた。

 大門が開いて押し寄せたまでは良かったが、次の瞬間、大勢が橋の外まで吹き飛ばされていた。大門を見ると土煙の中、何者かが大門から出てくるのが分かった。

「なんだ? 誰か城から出てきたぞ?」

「あれは? 誰だ?」

「黒いオーラに包まれているぞ! まさか! あいつは漆黒のレンじゃないか?」

「なに? 漆黒のレンだと? 剣聖が出てきたのか?」

「あいつが剣聖? 漆黒のレンという奴か?」

 教団の信者達は騒然となり、目の前の鎧を纏った青年に皆が恐怖した。

「どうする?」

「どうするって言ったって、相手は剣聖だぞ」

 信者達が動揺しているとレンが大声で信者たちに言った。

「聞けアスペルド教団の信者達よ! ここから先に入ることは俺が許さん! その橋に一歩でも入ったやつは容赦なく攻撃するから覚悟しろ!」

 レンはそう言うとオーラを爆発させた。一層大きくなったオーラを見て信者たちは恐れおののいた。

「ヒィイイーーー!」

 信者たちは我先にと大門前の橋から逃げ出した。

 信者達が逃げ出している中、一人の男がレンの前に姿を表した。ロマノフだった。

「これは、これは伝説の剣聖の再来とまで言われている、あなたが漆黒のレンですか?」

「そうだ。アスペルド教団よ、ここからはこの剣聖が相手になってやる」

「我々は逃げたりは決してしない。いかに剣聖だろうが、これだけの人数を相手に無事ではすみませんよ」

「いいぜ。試してみろよ。俺は覚悟ができている」

 アスペルド教団の信者たちは再び橋の前まで集まって来ていた。レンは襲撃に備えて剣を構えた。一触即発の状態になり今にも戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。

 その時、橋の前に集まった信者たちが一斉にどよめいた。信者たちの視線の先には大門の上に姿を表したアークガルド王がいた。
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