私、勇者と魔王の娘です

夢限

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第01章 よくある話

06 私たちの現在

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 3話更新します。
 こちらが1話目

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 謁見の間を後にした私たちは一度控室によって制服に着替えている。さすがにドレスのまま街に繰り出すわけにはいかないからね。まぁ、制服も十分目立つとは思うけど、ドレスよりはましだと思う。

「それにしてもまさか私が騎士を倒しちゃうなんて思わなかった」
「うん、楓強かった」
「まぁ、愛莉亜にはかなわないけどね。でも、不思議な感じだよね。鍛えて筋力が上がったわけじゃないのにあんな力が出るんだもん」
「はは、まぁ確かにね。でも、すぐ慣れるよ」

 地球では普通に筋肉を鍛えないと力は増えない。しかしステータスという概念があると筋力とは別に数値で力が増すこともある。私の場合、両親の影響で生まれたときから普通の地球人と違いステータスを持っていたので、特に違和感は覚えていない。

「そういえば、具体的に私たちってどんなステータスなの、愛莉亜はわかるんだよね」
「あっうん、そうだね。それじゃ、鑑定するけどいい?」
「お願い」

 というわけで、私たちのステータスを発表します。

 まずは、楓から

 Lv 1 召喚前  召喚後
 HP  750 → 810
 MP  0    → 60
 SP    680   →   741
   STR  152   →   220
   DEX  164   → 182
   VIT   165   → 189
   AGI   155   →   190
   INT   115   → 130
   MND  184  → 190
   LUK   100  → 200

 <スキル>
   身体強化
   投げ流し
   着地制御

 次は凛
 Lv 1 召喚前  召喚後
 HP  140 → 230
 MP  0    → 220
 SP    110   →   162
   STR  25   →   127
   DEX  67   → 187
   VIT   58   → 169
   AGI   24   →   142
   INT   112 → 150
   MND  35  → 170
   LUK   80  → 200

 <スキル>
   魔道制御
   風魔法
   水魔法
   詠唱補助

 以上となり、このように異世界召喚の影響で2人とも若干ステータスが上がっている。ちなみに、召喚前のステータスはその概念を持たない2人なので私が持っていた鑑定スキルで無理やり数値化したものとなる。
 そして、最後に私だけど私はちょっと特殊で

 Lv   49 → 1
 HP  246 → 615
 MP  190 → 475
 SP  126 → 455
 STR 69  → 310
 DEX  70   → 381
 VIT 97   → 416
 AGI 85   → 435
 INT 150 → 524
 MND  179 → 450
 LUK 540 → 890

 <スキル>
   光刃
   光魔法
   炎魔法
   ブースト

 となるわけだけど、実はこれ、私の本当のステータスではなく抑えたものとなる。本当のステータスは以下となる。

 Lv   49 → 1
 HP  2460 → 6150
 MP  1900 → 4750
 SP  1264 → 4550
 STR 687  → 3099
 DEX  700   → 3810
 VIT 970   → 4164
 AGI 850   → 4350
 INT 1500 → 5237
 MND  1790 → 4500
 LUK 5400 → 8900


 数値を見れば分かる通り、私のステータスは“抑えた状態”で元の10分の1になっている。

 なんでこんな仕様になっているのかというと――そりゃまぁ、1000超えのSTRとかAGIとか持ってたら、日本の生活ではいろいろと問題があるから、だ。

 だからこそ、母が“力を抑える魔道具”――このネックレスを作ってくれた。おかげで私は今まで、人類の常識に合わせて生きてこられた。


 ところで、どうして私が日本生まれ育ちなのにこんな桁違いの能力を持っているかというと……これは、ちょっと特殊な事情がある。

 ――私の父は、かつて“勇者”として異世界に召喚された人間。そして母は、かつてその父が討伐しようとしていた“魔王”本人だ。

 そんな2人の間に生まれた私は、生まれながらにしてステータスとレベルの概念を持っていた。そして、母が“魔王のスキル”で生み出した魔物たちと、子どもの頃から遊ぶようにして戦い――いつの間にか、レベル49になっていた。

 もちろん、両親は常にそばにいて、危なくなればすぐ助けてくれたけどね。あれは、今思えば壮絶な……いや、“教育”だったのかも。

「そこまですごい上がったわけではないんだね。……というか、愛莉亜は上がりすぎじゃない?」

 楓がステータス表を見ながら、半ば呆れた声で言う。

「うん。でも、レベルは1に戻ってるよね? なんで?」
「さあ……でも、ステータスは確実に上がってる」

 実際、以前よりもはるかに高い数値が並んでいる。この上昇、どう考えても尋常じゃない。

「これも“勇者の称号”の特性じゃないかな。クラス補正が入ってるのかも」
「確かに……私たちのステータスで“勇者”を名乗るのはちょっと申し訳ないかも」
「愛莉亜との差、ひどいもんね……」
「うん……リアルチートすぎる……」

 たしかに、その通り。私と2人の数値には、どう見ても越えられない壁がある。

 でもそれは、私が日本にいながらも“育ってしまった”からで――生まれたころは、2人と大差なかった。もちろん、生後数か月の“赤ちゃんのステータス”としてだけどね。


 そんな会話を交わしながら、私たちは制服に着替えを済ませ、城を出た。

 ドレスのまま街へ出るのはちょっと目立ちすぎるし、とはいえ制服もそれなりに目を引くけど……まあ、“多少マシ”ってことで。
 
 そして、私たちは貴族街を抜けて――平民街へと向かっていった。



「なんだか、さっきまでとは雰囲気が全然違うよね」
「人が少ない気がする」
「だよねぇ。なんか、活気がないような……」
「うんうん」

 お城の荘厳さや、貴族街の華やかさとは打って変わって、平民街は妙に静かだった。人通りが少なく、歩いている人たちもどこか元気がない。東京と比べればどんな異世界の首都だって“閑散”に見えるかもしれないけど、それだけじゃない気がする。

「えっと……とりあえず、両替商に行こっか」
「そうだね」

 気にはなるけれど、まずは私たち自身の当面の生活のため。いま所持しているのは金貨2枚と銀貨50枚――どうやら平民が10年以上暮らせる額らしい。でも、問題は“単位”。

 この世界の平民が使うのは主に雑貨・銅貨・大銅貨。銀貨や金貨なんて日常生活ではあまり見ないとのことで、使えないわけじゃないけど、お釣りや扱いが面倒になるらしい。宰相からも「まず両替しておくといい」と勧められた。

「いらっしゃいませ……おや、珍しいお召し物だね」
「こんにちは。えっと、銀貨を両替したいんですけど」
「銀貨ですね。どのように両替されますか?」
「銀貨50枚から、大銅貨200枚、銅貨2,500枚、雑貨2,500枚に変えてもらえますか? 残りは銀貨のままで」

 この世界のお金の単位は、大白金貨 → 白金貨 → 大金貨 → 金貨 → 大銀貨 → 銀貨 → 大銅貨 → 銅貨 → 雑貨。

 レートは以下の通り:

| 上位通貨     | 変換比率      | 
| 雑貨50枚    | 銅貨1枚       | 
| 銅貨20枚    | 大銅貨1枚    | 
| 大銅貨25枚 | 銀貨1枚       | 
| 銀貨25枚    | 大銀貨1枚    | 
| 大銀貨30枚 | 金貨1枚       | 
| 金貨30枚    | 大金貨1枚    | 
| 大金貨35枚 | 白金貨1枚    | 
| 白金貨40枚 | 大白金貨1枚 | 


 ちなみに、平民の年間生活費は銅貨2,880~4,800枚くらい。黒パン1個が雑貨15枚、白パンなら銅貨1枚くらいだそう。

「承知いたしました。ただし……この量となると、それなりの重量になりますが、大丈夫でしょうか?」
「はい、大丈夫です」

 今の私たちのステータスなら、多少の重さは問題にならない。そう答えると、店の人は笑顔で頷いて準備に取りかかった。


 しばらくして、重みのある革袋を手にした私たちは、無事両替を終えて両替商の店を後にした。

 これで、とりあえずの生活準備は整った。
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