私、勇者と魔王の娘です

夢限

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第01章 よくある話

14 私の家族

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 2話目です。

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 初めての魔物との遭遇、そして初めての戦闘と解体を終えて――それから約1時間が経過していた。

「はぁ、まだ興奮してるよぉ」
「うん、すごかった……」

 戦いが終わってしばらく経つのに、2人の興奮はまだ冷めていない。

「ふふっ、その気持ちわかるなぁ。私も、初めて魔物と戦ったときはそんな感じだったよ」
「へぇ、愛莉亜もそんなだったんだ」
「今じゃ平然としてるよね」
「そりゃあね。さんざん戦ってきたからさ」

 2人にとっては今回が“初めて”の戦闘。でも、私にとってはすでに何度も経験してきたこと。

 なにせ、レベルが49だったわけだし。

「そういえば、愛莉亜ちゃんはいつ頃から戦ってたの?」

 凛がぽつりと尋ねてくる。そのタイミングからして、“魔物との戦い”のことだろう。

「小学生のころだよ。確か、4年生だったかな」

 初めて魔物と戦ったあのときの感覚は、今でもよく覚えてる。戦いのあと、私も2人と同じように興奮してた。

「小4って……そんなころにもう?!」
「うん。とはいえ、両親とナラーナがそばにいたから、魔物と戦うというより……動かない置物と戦ってた感じだけどね」

 両親とナラーナは、今の私よりずっと強い。しかも、あの時戦った魔物は母が生み出して使役していたもので、ほとんど動いていなかった。

 遠くからウィンドカッターを放って、かすっただけ。それが私の初めての戦闘。

「それに比べて、凛はちゃんと当ててたし……私よりすごいよ」

 初めての結果で比べたら、断然凛のほうがすごいと思う。

「そうかな……でも、それって愛莉亜ちゃんが小4のときでしょ?」
「そうだけど、さっきも言った通り、私のときは母が作って使役していた魔物だったから、ほんとに動かない置物みたいだったし。でも凛は、動く魔物にちゃんと魔法を当てた。それって、本当にすごいことだよ」

 動かない的と動く的、どちらが難しいかは明白。

 そこに当てられた凛の魔法の才能は、間違いなく私より上。

 さすがは“魔法使いとして召喚された”だけのことはある。

「確かにすごいよ、凛!」
「……ありがと」

 私と楓から褒められて、照れたように頬を赤くする凛。

「そういえばさ、愛莉亜って魔王でもあるんだよね。もしかして、魔物を生み出したりできるの?」

 道中、楓がふとそんな疑問を口にした。そう、楓が言う通り、私は“勇者として召喚された”にも関わらず、“魔王の称号”も持っている。

 実はお城で王子様が「魔王を討伐してほしい」と言ったとき、私が嘘だと判断した理由がまさにこれだった。

 ちなみに王子様が私を鑑定したときに”魔王”の称号が見られなかった理由は、母が作ったネックレス。あれには鑑定スキルに対する防衛機能があり、”魔王”の称号が見られないようになっている。

 というのも、この世界でも、母の世界でも、地球がある世界でも、「魔王と勇者はそれぞれ1人ずつ」という理が存在していて――私が召喚された際に“魔王の称号”がアクティブになったことで、この世界には私以外に魔王が存在しないことが確定したわけだ。

 ちなみに、私はもともと“勇者”と“魔王”両方の称号を持っていたけど、生まれたときにはすでに地球に勇者と魔王が1人ずつ(両親だけど)いたので、ずっと非アクティブ状態だったんだよね。

「確かに私も魔王なんだけど、あれって……“100年以上魔王やってる”っていう実績がないと魔物の生成と使役スキルは使えないの。だから私にはまだ無理」

 魔王特有のスキル――魔物生成と使役――を使うには、魔王としてのレベルを上げる必要がある。

 私の魔王としての称号がアクティブになったのはつい最近。レベルもまだ初期で、何も使えない状態だ。

「へぇ、そうなんだ……って、ちょっと待って。今なんて言った?」
「ん? 何が?」

 楓が何に引っかかってるのか、最初はよくわからなかった。

「いやいや、“100年以上魔王”って言ったよね?」
「言ったけど?」
「それってさ……愛莉亜のお母さんのことだよね?」
「うん、そうだよ」
「つまり……愛莉亜ちゃんのお母さん、100年以上生きてるってこと?」

 凛の言葉を聞いて、ようやく2人が驚いているポイントに気づいた。

「そうだよ。正確には……今年で263歳だったかな。魔王になってからは200年って言ってた」

 母は人間ではなく魔族。正確には煌角族こうかくぞくという種族で、寿命は800年を超える。そう考えると、263歳でもまだまだ若いってことになる。

「263って……全然想像できないんだけど。日本だと、なに? 江戸?」
「うん、江戸時代の中期ぐらい」
「そんな昔なんだ……あれ、そういえばナラーナさんって愛莉亜ちゃんのお母さんの乳母だったよね? ってことは、ナラーナさんってそれ以上……?」

 以前、ナラーナが母の乳母だったって話を2人にしたことがある。だから出てきた疑問だ。

「そだよ。ナラーナは、たしか431歳だったかな」
「……」
「……戦国時代? いや、それだと豊臣秀吉が天下統一した後くらい?」

 楓は絶句し、凛は淡々と日本史の年代を語り出す。

 私は昔から知っていたからあまり考えたことなかったけど、凛の説明を聞いて、たしかに――すごく昔のことなんだなって思えてきた。

「言われてみれば……ほんと、すごいかも」
「そうだよ、すごいよ! ねぇ凛」
「うん、すごい。……ってことは、愛莉亜ちゃんも長生き?」

 母が長命種なら、私もそうなのでは?

 凛が疑問を口にする。

「ああ、そのことね。たぶん……としか言えないけど、そうだと思うよ」
「えっ、そうなの!?」
「うん。お母さんが長命種だし、実はお父さんもね……勇者になってレベルを上げたことで“進化”して、ただの人間じゃなくなった。だから長命になったみたい」

 父は元は日本人で、人間だった。

 でもレベルを上げたことで、進化してストリアン(超人)という上位種になった。

 その結果、寿命は500年以上になったんだって。

 そう――母が800年、父が500年。

 そんな2人から生まれた私も、きっとかなり長く生きることになるはず。

「ていうか、2人だって“レベルの概念”を持ったわけだし、ちゃんと鍛えて進化すれば長寿になると思うよ」

 もちろんそこに至るには、相当なレベルまで到達しないといけないけど――私たちが目指す“地球への帰還”を実現するには、私自身が高レベルになる必要がある。それに付き合ってもらう2人も、自然と高レベルになっていくはず。

「そうなんだ……」
「はぁ~。まさか愛莉亜がここまで“ファンタジーな存在”だとは思わなかったよ」
「はははっ、まあそうだよね」
「うんうん……」

 日本で普通に暮らしていて“長命な人”に出会うことなんて、まずないよね。

 私だって、自分がそうじゃなかったら、信じられなかったと思う。

「そうそう、ナラーナのことだけどさ。実は、ナラーナって“記憶上は年齢以上”なんだよね」
「? どういうこと?」

 寿命の話をしていたついでに、ナラーナにまつわる“ある秘密”を打ち明けることにした。

 本来は極秘事項で誰にも話してはいけないことだけど……この世界には乳与族にゅうよぞくがいないはずだから、問題ないと思う。

「ナラーナの乳与族ってね、種族の特性上“男性がいない”んだよ」
「そうなの!?」
「うん」
「えっ、それじゃどうやって……」

 凛が思わず口にした疑問。どうやって子供を産むのか――普通の常識では説明できない。

「それはね、自己完結するの」
「自己完結!? なにそれ……」
「それってまさか……!」
「乳与族は、自分の好きなタイミングで“胎内に子供を作る”ことができるの。もちろん“自己完結”だから、クローンになっちゃうけどね」

 そう――乳与族はすべて同じ遺伝子を持った存在。だから、見た目もナラーナそっくりなんだとか。

「えっと、それって……ナラーナさんと“同じ人”ってことになる?」
「そだよ。でも、人格は別だから、“双子の妹”を生む感じかな?」

 双子も遺伝子的には同じだけど、それぞれ別の人格を持つよね。乳与族もそれと同じ。

「それって、なんというか……すごいね。でも、それがどうして“記憶上が年齢以上”になるの?」
「ふふっ、それはね――これもかなり極秘なんだけど……乳与族って、親が亡くなると“その記憶が子供に受け継がれる”の」
「え……!」
「つまり、ナラーナも過去世代の記憶を受け継いでいる。だから、年齢以上の知識と経験があるの」

 そう。彼女が語ることの一部は、何百年も昔の記憶。

 それらを自分のものとして持っているからこそ、ナラーナは今のナラーナでいられる。

 そんな話をしているうちに――気がつけば、森を抜けていた。

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 次回更新は2/10予定です

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