勇者として召喚されたのに、なぜか牢の中でした。

夢限

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第01章 どういうこと?

05 奇跡の結果

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 5日目です。
 本日で連続更新は最期となります。
 次回からは毎月10日更新です。

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「おい、起きろ!」

 ふとそんな声が聞こえてきた。

「起きないか!」

 再び聞こえた声に、まどろみながらもゆっくりと目を開ける。
 しかし目の前は真っ暗、しかも何か柔らかい。
 一体何だと思いながらもゆっくり顔を上げたことで理解した。
 どうやら俺は少女の胸を枕にしていたらしく、なるほど、確かにこれなら柔らかいはずだ。

「うおぅっ!」

 理解したことで一気に目が覚め、飛び跳ねるように距離を取った。

「ようやく起きたようだな」
「えっ、ああ、えっと悪い」
「それより、貴様は何者だ。それに、私の目は……抉られていたはず。なのに今、見えている。貴様、私に何をした?」

 責めるように、にらみつける少女であった。

「何って、治療をしたんだ。パーフェクト・ヒールって魔法を使って」
「なに? パーフェクト・ヒールだと! 馬鹿なっ、あれは伝承にある奇跡の魔法だ。ただの人間が扱えるわけがないだろう」

 そう言って俺の言葉を否定してくる少女。

「そういわれても実際にやったしな」

 事実として少女は完全回復しているわけだし。

「たとえ、それが本当だとしても私は目が見えるようになっただけだ」

 そういう彼女、あれ? もしかして気が付いていないのか。完全回復しているという事実にこの少女は気が付いてはいないらしい。

「大体、パーフェクト・ヒールは召喚された勇者のみしか使えない……」
「見てみるか?」
「なに?」
「いや、気が付いてないみたいだけど、全身完全回復してるぞ」
「なに?」

 先ほどと同じ言葉を述べる少女、どうやら本当に気が付いていないみたいだ。そう言えば、さっきから目は動かすけど、体は一切動いてないんだよな。治っているはずなのに長らく動かさなかったことと、存在しないという思い込みがあるのかもしれない。

「ちょっと待ってな。今起こしてやる」

 そう言って俺は少女に近づき、その背中に手を差し入れ、そのぬくもりを感じつつその身を起こす。
 その体は細く、余りにも軽くこのような体で、地獄を受けたと思うと怒りすらわいてくる。

「……!」

 体を起こしたことでようやく少女も自分の体を見ることができたようで、驚愕から固まっている。

「馬鹿なっ。わ、私は、う、腕が、それに足も、傷が無くなって」
「髪の毛もちゃんと伸びてるぞ、ほれ」

 腰まで伸びた髪の毛をつかみ少女の目の前に持って行ってやる。

「あ、ああ、あああ……」

 あふれ出た涙は、止まることなく頬を伝い続けた。
 それは、痛みでも、悲しみでもない。
 ……生きていてよかった、という涙、それを見た俺はそっと静かに見守ることにした。


 それからしばし時間が経ち、少女もようやく落ち着いてきた。

「見苦しい姿を見せた」

 恥じ入るようにそう言う少女。

「いや、気にするな」

 俺には彼女の現在の気持ちはわからない。なにせ俺は彼女が受けた地獄を知らないし、受けたこともないから下手な同情なんてできないから、こんな言葉しか俺には言えない。

「すまない。それで、聞きたいことがある」
「なんだ?」
「私の体を見る限り、間違いなくパーフェクト・ヒールを使ったのだろう。しかし、この魔法は伝承によれば勇者にしか扱えないとある。その理由としては必要魔力が膨大であること、そして何より神聖魔法に対しての高い適性が必要だからだ。つまり、お前は召喚された勇者、なのだろう?」
「まぁな」

 今まで説明をしてこなかったが、実は太郎ではなく俺こそが召喚された勇者だったりする。では、太郎は何だったのかというと、俺の召喚に巻き込まれただけだったりするんだよな。つまり、本来であれば俺と太郎の立場は逆だったわけだ。

「やはりな。しかし、その勇者がなんだってこのようなところにいるんだ」

 そう言ってあたりを見渡す少女に、苦笑いしながらことの経緯を説明する。

「これは、不幸な事故というか、行き違いがあったんだ」
「行き違い?」
「ああ、俺と一緒に召喚された奴がいるんだけど、そいつが無駄にイケメンだったから、そいつこそが勇者だと思い込んだみたいだよ」
「イケメン?」
「ああそっか、わからないか。えっと、簡単に言えば見た目がいい男ってことだよ」
「ふむ、なるほど、それで勘違いしたということか。ふふふっ」

 ここで突然笑い出す少女、一体どうしたんだ?

「どうしたんだ?」
「ああ、すまない。お前には…ああ、そういえばまだ名を聞いていなかったな」
「そういえばそうだな。俺は恭弥、當恭弥だ」
「キョウヤか、私はエルフ王、セレヴァン・エル=カリヴァーナが娘、ルミナリエ・セラフィエル・エル=カリヴァーナだ」
「えっと、ルミナリエ?」
「ルミアでいい、親しきものはそう呼ぶ」
「わかったよルミア、それで、さっきは何がおかしかったんだ」

 ルミアの名前についてはもっと以前から鑑定で分かっていたことだが、あえて少女とか彼女とか呼んでいたわけは、以前愛莉亜から鑑定というのは相手のプライバシーを覗き見るものだから、たとえ事前に知っていたとしても呼ばないのがマナーだと言われたからだ。確かに教えてもない名前を知らない奴が知っていたら恐怖ではあるな。

「ああ、そうだったな。キョウヤたちを召喚したのは王女だっただろう」
「ああそうだな。知り合いか?」
「幼き頃よりの親友であった。尤も手ひどく裏切られたが……」

 ここでルミアの表情が暗くなる。もしかして、ルミアがあんなひどい目に合ったのは王女がかかわっているのだろうか。

「そ、そうだったのか」
「ああ、あ奴が自ら召喚した相手を間違えたというのが滑稽でな。まぁこのようなところに入れられているキョウヤには悪いがな」
「ああ、そういうことか」
「しかもそのおかげで私がこうして回復できたわけだからな。ここだけは奴に感謝しなければならないな」
「ははっ、そうかもな」

 もしここに来たのが太郎であったなら、おそらくルミアはずっとあの状態のままだっただろう。なにせ、太郎は勇者じゃないからヒールは使えてもパーフェクト・ヒールは使えないし思いもつかなかっただろうから、下手したら全く意味もないことをしただけだったかもな。

「ところで、キョウヤ、もう1人の方は大丈夫なのか?」
「もう1人って、勘違いされた奴か?」
「そうだ。もし勇者ではないと知られれば確実に殺されるぞ」
「ああ、まあ、そうかもな。でも、あいつなら何とかすると思う」
「どういうことだ?」

 確かに俺のことを邪魔だといってこんな牢獄に送り込むような王女、もし太郎が勇者ではないと知れば殺す可能性が高いような気がする。そのあたりは俺よりも王女のことをよく知るルミアが言うのだから間違いないだろう。でも、たぶん太郎は何とか乗り切ると思う。

「あいつはさっきも言った通りイケメンで生粋の女たらしなんだ。たぶん今頃あの王女も口説かれてるんじゃないかな」
「ほぉ、あ奴がかしかし、あ奴も王女周囲には多くのイケメンとやらがいるぞ」
「かもな」

 王女の周りといえば多くの貴族子息、昔から物語でも多く貴族の子弟はだいたい容姿が優れているのが一般的だ。でも、太郎のイケメンぶりはそれを超えてもおかしくないレベルなんだよな。少なくとも日本ではトップクラスだったはずだ。

「それにあいつは天才でもあるんだよ」
「天才?」
「そ、あの野郎は腹が立つほどに天才であらゆることを難なくこなしてしまうんだよ。だからたぶんというか間違いなく、戦闘訓練でも受けていたら、今頃はそこら辺の兵士や下手な騎士程度なら超えてるんじゃないか」
「それは素晴らしいな。王女の周囲にいる者たちは、見た目ばかりで中身が伴わぬ者も多い。……その者が本当に才あるなら、王女も手放さぬだろう」


 ……あいつは、なんでもできる。
 勉強も運動も、初めて触るものでも数分でコツをつかむ。
 俺が努力してようやく届く場所に、あいつは最初から立ってる。
 ……だから、たぶん今回も、何とかしてるだろう。


「尤もあいつのことだから勇者といわれて調子に乗っている可能性も高いんだけど」

 そうなったらそうなったで面倒ごとになりそうなんだよな。

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 次回の更新は11/10となります。

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