勇者として召喚されたのに、なぜか牢の中でした。

夢限

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第01章 どういうこと?

07 現戦力について

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「それで、なんでここでは魔法が使えないんだ」

 俺自身は魔法は使えるが、ほかの連中が使うことができない理由が気になったので聞いてみた。

「ふむ……これは聞いた話なのだが、今から200年ほど前、この島には魔法研究者が居た。その者が研究していた術が暴走して、この島一帯に内部での魔法封印の結界が張られてしまったという。もちろんその研究者をはじめ多くの学者が解除を試みたそうだができず、島は放棄された」

 研究中に意図しない結果が出たなんて言うのはよくある話、日本にいたときも何かのテレビでそうした話を聞いたことがある気がする。まぁあまり興味がなかったからよく覚えてはいないんだが。確かペニシリンとかポン菓子とかレンジもそうだったとか聞いた気がする。

「偶然の産物かよく聞く話だな」
「ふむ、確かにこういったものはよくあるな」
「でもそれで、なぜ監獄にしようなんて思ったんだ。ここじゃ魔法が使えないってことは囚人は当然としても看守だって使えないだろ。いくら武器を持っているからってそれを奪われたら終わりだろ」

 お互いに魔法が使えないということは結局は剣など武器しかないわけで、囚人のほうが優れていた場合は看守がやられてしまえば脱獄も可能になると思う。もちろん地球のように銃があれば別だけど、ここにはたぶんないと思う、これまで見てきた中で持っている奴を見なかったからな。

「それに関しては問題ないそうだ。なんでも看守はこの結界の効果を無効化する魔道具を所持しており、魔法も自由に使えると聞いた」
「? どういうことだ」

 研究の末に結界のことが分かったってことかな。

「150年ほど前のことだ。放棄されていたこの島に海軍の船が修理のために上陸した。当然彼らは魔法が使えず苦労したというが、ただ1人の新兵だけなぜか魔法が使えたという」
「1人だけ、そいつも俺みたいに膨大な魔力を?」
「いや、その者はむしろ魔法はあまり得意ではなかったそうだ」
「じゃぁ、なんで?」
「答えはその者が持っていたある魔道具だった。尤もこの魔道具に関してはこの国の国家機密で私もわからないが、話からしておそらく本来の用途とは違う魔道具だったのだろうがな」

 それに関しては俺も同意、当時の連中もさぞかし驚いたことだろうし、さすがに他国の人間には知らせることはできない国家機密だよな。

「こうして、結界を無効化する術を手に入れたこの国は、ここを監獄とすることにしたというわけだ」
「なるほどなぁ。囚人は変わらず魔法を使えないが、看守はその魔道具を持つことで魔法が使えるようになる。確かに、これは監獄として使うのが持ってこいだな」
「そういうことだ」

 ……観光地としてなら、魔法が使えない島ってのも面白いかもしれない。
 でも、囚人として放り込まれた身からすれば、冗談じゃない。
 まあ、俺はまだ使えるからマシだけど――それが逆に、厄介でもある。

「キョウヤが魔法を使えるというのは、脱獄に際しての戦力としては有用となるが、それだけでは少し不安があるな。せめて私が精霊魔法がつかればいいのだが」
「精霊魔法?」
「ふむ、われらエルフはお前たちの魔法とは体系が違っていてな。精霊に願うことで事象を変える魔法となる。しかし、この島では精霊魔法も封じてしまうようで、私も意識が戻って以来何度か試しているがまったく使えん。とはいえ、ここに精霊がいないわけではないからな。偵察ぐらいならできるだろうが」

 エルフといえば精霊魔法、これは日本で見たいくつかの物語でも多く使われていることだが、こうして実際に存在を語られると若干テンションが上がってくるな。

「そうか、それだけでも十分助かりそうだけど、それで、精霊魔法ってどんなことができるんだ?」

 精霊魔法で何ができるのか、ものすごく気になる。

「ふむ、そうだな。では少し精霊魔法について話しておこう」

 というわけで説明してくれたけど、精霊魔法については先ほどちらっと言った通り、精霊に願うことで事象を変えるものとなるわけだが、精霊は風に宿り、水に潜み、火に踊る――
 彼らは世界の呼吸そのものであり、エルフはそのささやきを聞くことができる
 ……それが、精霊魔法。
 そして、精霊魔法の得意不得意というものは、いかに多くの精霊と意思疎通ができるかということになるそうだ。また、エルフ族の王族は代々精霊との親和性が高くより強い精霊魔法を扱うことができるという。

「へぇ、それじゃルミアも精霊魔法が使えれば相当な腕ってことか」
「ああ、使えればな。特に私は精霊王に気に入られていてな。その力を使うこともできる。まぁ、めったにできるものではないが」

 精霊王というのは、文字通り精霊たちの王でありその力は地震や津波などといった自然災害すらも起こす存在なんだそうだ。つまり、ルミアがその気になればそうした自然災害を意図して起こすことができるという。

「す、すげぇな」
「ふむ、といっても私も過去自然災害を防ぐためにしか使ったことはないが、そしてこの力はエルフ王家の機密だからあ奴も知らぬことだ」

 ルミアが言うあ奴というのはたぶんこの国の王女のことだろう。俺もこんなところに入れられたが、ルミアを裏切りあのような状態にした存在もあの王女だと思う。そう考えると、太郎の野郎はとんでもない女と一緒にいるよな。まぁ、そこで何かあっても奴にはいい薬になるかもしれないから、やはり今は放置しておこう。

「なんにせよ。今は精霊魔法が使えない以上、この話をしても詮無きことではあるが」
「まぁ、そうだよな。となると、俺たちの戦力は俺だけか?」
「すまぬがそうなるな。せめて武器でもあればいいのだが」
「ああ、武器といえば剣なら持ってるぞ」
「剣? 本当か!」
「ああ、これだよ」

 そう言って俺は何もない空間に手を差し入れて1振りの剣を取り出した。

「なっ! ど、どこから? そ、それにそれは!!」

 ルミアが驚くのも無理はない、俺がどこからともなく取り出した剣は聖剣エクリステイルといい、刀身は銀白で若干光を帯びており、鍔には月がデザインされ、柄は黒曜石の深い黒に金糸で編まれた何かの紋章が描かれている。

「こ、これは、まさか聖剣か?」
「ああそうみたいだ」
「なんと、まさか聖剣がこのような。しかし、そういうことか」

 ルミアが驚きながらも何やら急に納得しだしたけど、一体どうしたんだ。

「まだ話していなかったが、実は勇者召喚はもともと我らエルフ族が神スニルバルド様から授かった術式でな。古来より我らが行ってきた」
「そうなのか?」
「ふむ、まぁそれをこの国に奪われ、キョウヤが召喚されてしまったわけだがな」

 まさかの事実である。

「それで、ルミアは勇者の伝承とか知っていたのか」

 勇者がパーフェクト・ヒールを使ったという伝承を知っていたのは、勇者召喚をしていた国の王女だったからというわけか。

「その通りだ。そして、伝承によれば勇者の国、それはニッポンなのだろう」
「えっ、ちょっと待った! もしかして過去の勇者も日本人なのか?」

 さらなるまさかの事実である。

「ああ、伝承によると神スニルバルド様は元は人間で、かつてニッポンで暮らしていたそうだ。そして、神が暮らしていた時代の人間を勇者として召喚する術式だという、なんでもこの時代のニッポンではこうしたことに理解が深いからだと」
「ああ、まぁ確かに、でも、元日本人ってすげぇな」

 まさか俺と同じ時代を生きた日本人が神様になっているとは、そしてその神様が俺を勇者としてこの世界に転移させたというわけか。
 あれ、もしかして愛莉亜の父親が勇者召喚されたのも何かこの神様がかかわっていたりするのか、そう考えると俺の聖剣が愛莉亜と同じく亜空間にあることの説明ができるよな。まぁ、確認のしようがないんだが……

「なるほどなぁ。なんだか納得できるな。それにステータスとかスキルとかってまるでゲームだしな。日本人が作った世界なら納得できるってもんだ」


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 次回の更新は01/10となります。

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