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「先輩」
「何?」
大学もバイトも休みの昼下がり、俺はアパートの自分の部屋で、ベッドに寝転びながらスマホを見る先輩に向かって言う。
「いつになったら帰るんですか?」
先輩が、俺の部屋に住みついてから約一週間が経過していた。
先輩はキャリーバック一杯に洋服や化粧道具などを入れて、俺の部屋にやってきた。
今ではすっかり我が家のようにくつろぎ、俺はお気に入りのベッドを取られ、ロフトで布団を敷いて寝る日々を続けていた。
「そんなに帰って欲しいの?」
「はい、そろそろ俺はベッドが恋しくなってきたので」
「だから、毎晩言ってるじゃない。一緒に寝ようって」
「そうすると、先輩が俺を性的に食べようとしてくるので、絶対嫌です」
「むー、付き合って一週間だよ? そろそろ良いんじゃ無い?」
「嫌です! そう言うのはもっと順序を守ってですね……」
「あ、SR出た」
「人の話を聞いて下さい……」
俺の話を片手間で聞きながら、スマホのアプリゲームをする先輩。
この一週間、俺は本当に大変だった。
大学のレポートに、先輩の食事の支度。
洗濯をしている時に出てくる、先輩の下着。
寝ている時も、いつ先輩が布団に潜り混んでくるかわからないので、警戒しながら眠っていた。
しかも、この人はあの日を境に事あるごとに「恋人」と言う言葉を強調し、色々なスキンシップを図ろうとする。
風呂に入って来た時は、本当にどうしようか悩んだ。
まぁ、なんとか追い出せたけど……。
挙げ句に大家さんからは、先輩と一緒に住んでいることを知られ、上の階のファミリー向けの部屋を進められる始末だ。
「はぁ……」
「どうしたの? 溜息なんて吐いて」
「うわ! 急に隣に座らないでください!」
「そんなに、私と一緒なのがドキドキするの~?」
先輩は小悪魔のような笑みを浮かべながら、俺にそう言ってくる。
あぁ、そうだよ、アンタと一緒に住んでるなんて大学の連中なんかにバレたら、俺はドキドキどころしすぎて、心臓が止まるわ!
やはりここは、健全なお付き合いをする為にも、この人には色々言っておいた方が良いのかもしれない。
「先輩、少し話しを聞いて下さい」
「何よ~?」
「正面に座って下さい」
「はいはい、座ったわよ。で、どうしたの?」
「単刀直入に言います。もう少し俺と距離感を持って付き合ってもらえませんか」
「? 十分良い距離感じゃない?」
「いえ、近すぎます。もっと適度な距離感でですね……」
「十分適度だと思うけど?」
「付き合って、その日のうちに半同棲を始めるカップルはいません」
「でも、まだキスしかしてないじゃん」
「キスも普通はもっと段階を踏んでからの行為だと思うんですが……」
「別に今のままで良いじゃない?」
そうも行かない、このままこんな生活を続けていれば………あれ? 何か問題あるか?
お互いに既に二十歳を超えている訳だし。
こんな事をしている友人カップルも少なからず居る。
世間的には何も問題無いのでは?
ならなんで俺は、こんなにこの人と距離を置こうとしていたんだ?
「えっと……じゃあ、大学で俺と付き合ってることだけ隠して貰っていいですか? 逆恨みとかされそうなんで」
「えぇ~友達にも? 別に恨まれないよ」
「先輩は知らないでしょうけど……俺って既に恨まれてるんですよ……」
食堂で食事をしていた時に、通りすがりに手紙をテーブルに置かれた事があった。
なんだろうなと思って、その中身を見て俺は一瞬にして固まった。
手紙には「調子のるなよ?」と書かれており、手紙を置いていった人は、テーブル一つ開けて俺の正面に座り、ジッと俺を見ながらうどん食ってたっけ……。
「もう、次郎君は心配症だなぁ~」
「あぁもう! だからくっつかないで下さいよ!」
「寒いんだも~ん、えへへ暖かいなぁ……」
先輩は俺の膝の上に座ると、うっとりした表情でそんな事を言う。
こういう表情の時だけは可愛いのだが、わがままなんだよなぁ……。
「はぁ……もう良いです。貴方に何を言っても無駄みたいですし……」
「そうだね~。今日はバイト無いんでしょ? だったらご飯食べに行こうよ~」
「まぁ、良いですけど……先輩お金あるんですか?」
「………彼氏なら奢ってくれるよね?」
「………そういうとこですよ…」
結局晩飯は俺が奢らせられた。
お礼に体で払う。
などと馬鹿な事を言ってきた先輩を俺は華麗に無視して、ロフトに登り睡眠を取ろうとしていた。
そんな時だった。
「ねぇ……次郎君」
「なんですか? 一緒には寝ませんよ」
ロフトの階段から、先輩はヒョコッと顔を出してきた。
何やら心配そうな顔で俺を見てくる。
「でも、大丈夫? 寒くない? 流石に、いくら暖房が効いてても、その布団薄いし、毛布も無いし……」
「そうは言っても、先輩をこの布団で寝かせる訳にはいきませんし……」
俺の部屋のお客様用の布団は夏用だ。
なんで夏用しか無いかと言うと、単純に間違って購入してしまったからだ。
布団を買ったのは、先輩が家に通い出す前の話で、そもそもあまり家に人を泊める事も無いだろうと思い、安かったからこの夏用の布団を買ったのだが、今はそのせいで少し不便だったりする。
「風邪でも引いたら大変よ? 何もしないから、一緒に寝ようよ」
「いや……でも」
何もしないと言われても、俺が何か先輩にしてしまいそうで、落ち着いて眠れる訳が無い。 しかし、十二月が近づくに連れ、寒くなっているのも事実。
正直、毎晩先輩を警戒して、既に毎晩寝不足みたいな生活なのだから、ここは先輩の言うとおりにした方が、体は暖かいので良いかもしれない。
「……本当に何もしません?」
「……ぎゅうくらいは許して」
まぁ、それくらいなら、最近はいつもやられて慣れてるし、大丈夫であろう。
「わかりました、なら一緒に寝ます。その代わり変な事は無しでお願いします、明日は朝からバイトなので」
「うん、わかってるわかってる!」
俺はそう言って、久しぶりに自分のベッドに寝転がる。
一人暮らしを始める時に、何を思ったか少し大きいベッドを親に買って貰った為。
二人で寝ても、あまり狭くは感じなかった。
「先輩」
「何?」
大学もバイトも休みの昼下がり、俺はアパートの自分の部屋で、ベッドに寝転びながらスマホを見る先輩に向かって言う。
「いつになったら帰るんですか?」
先輩が、俺の部屋に住みついてから約一週間が経過していた。
先輩はキャリーバック一杯に洋服や化粧道具などを入れて、俺の部屋にやってきた。
今ではすっかり我が家のようにくつろぎ、俺はお気に入りのベッドを取られ、ロフトで布団を敷いて寝る日々を続けていた。
「そんなに帰って欲しいの?」
「はい、そろそろ俺はベッドが恋しくなってきたので」
「だから、毎晩言ってるじゃない。一緒に寝ようって」
「そうすると、先輩が俺を性的に食べようとしてくるので、絶対嫌です」
「むー、付き合って一週間だよ? そろそろ良いんじゃ無い?」
「嫌です! そう言うのはもっと順序を守ってですね……」
「あ、SR出た」
「人の話を聞いて下さい……」
俺の話を片手間で聞きながら、スマホのアプリゲームをする先輩。
この一週間、俺は本当に大変だった。
大学のレポートに、先輩の食事の支度。
洗濯をしている時に出てくる、先輩の下着。
寝ている時も、いつ先輩が布団に潜り混んでくるかわからないので、警戒しながら眠っていた。
しかも、この人はあの日を境に事あるごとに「恋人」と言う言葉を強調し、色々なスキンシップを図ろうとする。
風呂に入って来た時は、本当にどうしようか悩んだ。
まぁ、なんとか追い出せたけど……。
挙げ句に大家さんからは、先輩と一緒に住んでいることを知られ、上の階のファミリー向けの部屋を進められる始末だ。
「はぁ……」
「どうしたの? 溜息なんて吐いて」
「うわ! 急に隣に座らないでください!」
「そんなに、私と一緒なのがドキドキするの~?」
先輩は小悪魔のような笑みを浮かべながら、俺にそう言ってくる。
あぁ、そうだよ、アンタと一緒に住んでるなんて大学の連中なんかにバレたら、俺はドキドキどころしすぎて、心臓が止まるわ!
やはりここは、健全なお付き合いをする為にも、この人には色々言っておいた方が良いのかもしれない。
「先輩、少し話しを聞いて下さい」
「何よ~?」
「正面に座って下さい」
「はいはい、座ったわよ。で、どうしたの?」
「単刀直入に言います。もう少し俺と距離感を持って付き合ってもらえませんか」
「? 十分良い距離感じゃない?」
「いえ、近すぎます。もっと適度な距離感でですね……」
「十分適度だと思うけど?」
「付き合って、その日のうちに半同棲を始めるカップルはいません」
「でも、まだキスしかしてないじゃん」
「キスも普通はもっと段階を踏んでからの行為だと思うんですが……」
「別に今のままで良いじゃない?」
そうも行かない、このままこんな生活を続けていれば………あれ? 何か問題あるか?
お互いに既に二十歳を超えている訳だし。
こんな事をしている友人カップルも少なからず居る。
世間的には何も問題無いのでは?
ならなんで俺は、こんなにこの人と距離を置こうとしていたんだ?
「えっと……じゃあ、大学で俺と付き合ってることだけ隠して貰っていいですか? 逆恨みとかされそうなんで」
「えぇ~友達にも? 別に恨まれないよ」
「先輩は知らないでしょうけど……俺って既に恨まれてるんですよ……」
食堂で食事をしていた時に、通りすがりに手紙をテーブルに置かれた事があった。
なんだろうなと思って、その中身を見て俺は一瞬にして固まった。
手紙には「調子のるなよ?」と書かれており、手紙を置いていった人は、テーブル一つ開けて俺の正面に座り、ジッと俺を見ながらうどん食ってたっけ……。
「もう、次郎君は心配症だなぁ~」
「あぁもう! だからくっつかないで下さいよ!」
「寒いんだも~ん、えへへ暖かいなぁ……」
先輩は俺の膝の上に座ると、うっとりした表情でそんな事を言う。
こういう表情の時だけは可愛いのだが、わがままなんだよなぁ……。
「はぁ……もう良いです。貴方に何を言っても無駄みたいですし……」
「そうだね~。今日はバイト無いんでしょ? だったらご飯食べに行こうよ~」
「まぁ、良いですけど……先輩お金あるんですか?」
「………彼氏なら奢ってくれるよね?」
「………そういうとこですよ…」
結局晩飯は俺が奢らせられた。
お礼に体で払う。
などと馬鹿な事を言ってきた先輩を俺は華麗に無視して、ロフトに登り睡眠を取ろうとしていた。
そんな時だった。
「ねぇ……次郎君」
「なんですか? 一緒には寝ませんよ」
ロフトの階段から、先輩はヒョコッと顔を出してきた。
何やら心配そうな顔で俺を見てくる。
「でも、大丈夫? 寒くない? 流石に、いくら暖房が効いてても、その布団薄いし、毛布も無いし……」
「そうは言っても、先輩をこの布団で寝かせる訳にはいきませんし……」
俺の部屋のお客様用の布団は夏用だ。
なんで夏用しか無いかと言うと、単純に間違って購入してしまったからだ。
布団を買ったのは、先輩が家に通い出す前の話で、そもそもあまり家に人を泊める事も無いだろうと思い、安かったからこの夏用の布団を買ったのだが、今はそのせいで少し不便だったりする。
「風邪でも引いたら大変よ? 何もしないから、一緒に寝ようよ」
「いや……でも」
何もしないと言われても、俺が何か先輩にしてしまいそうで、落ち着いて眠れる訳が無い。 しかし、十二月が近づくに連れ、寒くなっているのも事実。
正直、毎晩先輩を警戒して、既に毎晩寝不足みたいな生活なのだから、ここは先輩の言うとおりにした方が、体は暖かいので良いかもしれない。
「……本当に何もしません?」
「……ぎゅうくらいは許して」
まぁ、それくらいなら、最近はいつもやられて慣れてるし、大丈夫であろう。
「わかりました、なら一緒に寝ます。その代わり変な事は無しでお願いします、明日は朝からバイトなので」
「うん、わかってるわかってる!」
俺はそう言って、久しぶりに自分のベッドに寝転がる。
一人暮らしを始める時に、何を思ったか少し大きいベッドを親に買って貰った為。
二人で寝ても、あまり狭くは感じなかった。
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