12 / 13
12
しおりを挟む
「よいしょ」
私はいつものように彼に抱きつき、目を瞑る。
やっと彼と恋人同士になり、半同棲までしていると言うのに、彼全く私に手を出そうとしない。
時々、本当に付いているのだろうかと不安になる。
「ばーか」
彼への不満をつぶやきながら、私は彼の頬をつつく。
そんな事をしても彼は起きる気配すら無く、彼は気持ち良さそうに眠っている。
こうして寝顔を近くで見るようになってまだ二日、前まではこんな関係になるとは思ってもいなかった。
彼と出会ってもう一年以上が過ぎると考えると、時間が経つのはあっという間なんだと改めて思う。
「昔は全然タイプじゃなかったのになぁ~」
まさか自分がここまで彼を気に入るなんて、考えても居なかった。
鈍感な普通の学生、それが彼だった。
でも、基本的に性格は真面目で、誰にでも優しい。
彼はそんな人間だった。
「ま、恋愛は惚れた方の負けだって言うしね……おやすみ……」
私はそう呟くと、彼を抱きしめながら眠りに付こうと瞳を閉じる。
その瞬間、彼は私の方に体を向き直してきた。
よほど疲れていたのか、彼は全く目を覚ます気配が無い。
「もう……本当に疲れてたんだ……」
私は彼を正面から抱きしめる。
こうして正面から彼を抱きしめるのは初めてかもしれない。
今日はいつものバイトよりも時間が長かった、その後にも色々とあったらしいから、余計疲れたのだろう。
私は起きたら彼がどんな反応をするのかを楽しみにしながら、そのまま彼を抱きしめて再び目を瞑る。
「きゃっ! ちょっ……何?」
眠ろうと目を瞑った瞬間、彼が急に私を抱きしめてきた。
それ自体は嬉しいのだが、問題は彼が私の胸に顔を埋めていることだった。
「んん~……」
「あっ……ちょっと……ん!」
なんで熟睡している今日に限って、彼は積極的なのだろう。
私は、彼に胸を弄ばれ、寝るに寝られない。
しかも彼は寝ていて、無意識なので厄介だ。
「な、なんで起きてる時にしないかなぁ……ん!」
寝る事によって、男の本能的に女性の母性の象徴である、胸を求めてくるなのだろうか?
そんな事を考えている間も彼は、私から離れようとはしない。
「い、いい加減に……って、ばか! そこは……」
熟睡の彼は寝ている間だけ、普通にエッチな大学生になるようだった。
知らなかった私が、この後どうなったかは、想像にお任せします。
*
「先輩、なんですか?」
「何も言ってないよ?」
「言ってないですけど、無言で俺の背中にくっついて来てますよね?」
大学が終わり、俺は部屋に帰ってきて、洗濯物を取り込んでいた。
すると、突然先輩が俺の背中に張り付いてきたのだ。
「暇、なんかしよ」
「じゃあ手伝って下さいよ、先輩の下着もあるんですから……」
「え~、面倒よ」
「何が悲しくて、アンタの無駄にエロい下着を俺が干さなきゃならんのだ……」
「彼氏だから?」
「普通同棲してたら、そこら辺気を使うもんじゃないんですか!」
「だって、次郎君が全部やってくれるし~」
「貴方がやらないからですよ……はぁ、じゃあコレが終わるまで待って下さい」
「仕方ないな~」
「それはこっちの台詞です……」
俺は急いで洗濯物を取り込み、先輩の要望に応える。
時刻は夕方の五時、既に辺りは暗くなっており、外は昼間よりも寒くなっていた。
「んで、何します?」
「ゲームでしょ?」
「当たり前のように言いますね……」
「いや?」
「外に行こうと言われるよりはましです。何やります?」
俺は未だに背中に抱きつく先輩に、ゲームのカセットを見せながら尋ねる。
最近二人でやるゲームは、便転堂のゲームが多い。
大人も子供も楽しめるゲームが多く、手軽に出来るのが個人的には良い。
「最近ハマってる、バトルロワイヤルのゲームしよ、アレ面白いのよね~」
「あぁ……武器拾って、その武器で100人と戦うあれですか? 良いですけど、先輩ってFPS系のゲームもやるんでしたっけ?」
「大好物ね」
「ちなみに好きな銃の種類は?」
「スナイパーライフル」
「あぁ、男を狙いうちしてますもんね……現実でも」
「別にしてないわよ、したけど目の前の誰かさんにはなかなか弾が当たらなかったわ」
大学内で、先輩は人気者だ。
可愛い見た目と猫を被った態度に、男も女も大体騙される。
それを狙ってやっているのだから、ある意味現実でもスナイパーかもしれない。
俺は早速ゲームのハードをテレビの横から持ってくる。
最近登場した、テレビに繋いでも携帯用としても遊べると言う便転堂の最新機種だ。
「そう言えば先輩もハード持って来てたんですね」
「当たり前よ! 並んで整理券を貰って、やっと手に入れた物だから、愛着あるのよね~」
「俺は無理矢理付き合わされましたけど……」
このハードは、発売当初は爆発的な人気で、何処のお店にも品薄の状態が続き。
ネットでは価格が高騰していた。
その為、俺は先輩に無理矢理朝っぱらから呼び出され、二人で電気屋やゲームショップに並ぶと言う事を一時期やっていた。
まぁ、俺も欲しかったからそれは良いのだが、朝があまり得意では無い先輩は並んでいる間に寝てしまうので、俺はそんな先輩の支えになっていた。
先輩は良くも悪くも注目を集めるので、俺にとってあの時間は地獄だった。
皆、俺と先輩を見てくるものだから、恥ずかしくて症が無い。
「でも、買って良かったでしょ? 二人で随分やったじゃない」
「あぁ、そうでしたね……購入出来た喜びで、その日のうちに、二人で一本クリアしましたもんね」
「一年経つけど、まだ人気よね~、このゲームもかなり流行ってるみたいだし」
「俺まだやったことないんですよ、先輩結構やったんですか?」
「まぁ、十時間くらい?」
「一日じゃ無いですよね?」
「…………」
「ゲームはほどほどに」
「はい……」
気まずそうに答える先輩を見ながら、俺はゲームをインストールし設定を始める。
アカウントを作ったり、ゲームのダウンロードに少し時間は掛かったが、無事終わり二人でゲームを楽しむ。
「先輩! 後ろ! 後ろにいます!!」
「大丈夫、もう倒したから」
「流石っすね……って! 俺がやられた!!」
「もう! 余所見なんかしてるからよ!」
「しょうが無いじゃ無いっすか! スナイパーに狙われたんですよ!」
「チーム戦だから、私一人だとキツいの! あ、手が空いたならココア作って、飲みたい」
「はぁ……はいはい」
そう言って俺は、先輩の為にココアを用意する。
なんだかんだ言っても、こうして先輩とゲームしている時が一番楽しいのかもしれないな……。
私はいつものように彼に抱きつき、目を瞑る。
やっと彼と恋人同士になり、半同棲までしていると言うのに、彼全く私に手を出そうとしない。
時々、本当に付いているのだろうかと不安になる。
「ばーか」
彼への不満をつぶやきながら、私は彼の頬をつつく。
そんな事をしても彼は起きる気配すら無く、彼は気持ち良さそうに眠っている。
こうして寝顔を近くで見るようになってまだ二日、前まではこんな関係になるとは思ってもいなかった。
彼と出会ってもう一年以上が過ぎると考えると、時間が経つのはあっという間なんだと改めて思う。
「昔は全然タイプじゃなかったのになぁ~」
まさか自分がここまで彼を気に入るなんて、考えても居なかった。
鈍感な普通の学生、それが彼だった。
でも、基本的に性格は真面目で、誰にでも優しい。
彼はそんな人間だった。
「ま、恋愛は惚れた方の負けだって言うしね……おやすみ……」
私はそう呟くと、彼を抱きしめながら眠りに付こうと瞳を閉じる。
その瞬間、彼は私の方に体を向き直してきた。
よほど疲れていたのか、彼は全く目を覚ます気配が無い。
「もう……本当に疲れてたんだ……」
私は彼を正面から抱きしめる。
こうして正面から彼を抱きしめるのは初めてかもしれない。
今日はいつものバイトよりも時間が長かった、その後にも色々とあったらしいから、余計疲れたのだろう。
私は起きたら彼がどんな反応をするのかを楽しみにしながら、そのまま彼を抱きしめて再び目を瞑る。
「きゃっ! ちょっ……何?」
眠ろうと目を瞑った瞬間、彼が急に私を抱きしめてきた。
それ自体は嬉しいのだが、問題は彼が私の胸に顔を埋めていることだった。
「んん~……」
「あっ……ちょっと……ん!」
なんで熟睡している今日に限って、彼は積極的なのだろう。
私は、彼に胸を弄ばれ、寝るに寝られない。
しかも彼は寝ていて、無意識なので厄介だ。
「な、なんで起きてる時にしないかなぁ……ん!」
寝る事によって、男の本能的に女性の母性の象徴である、胸を求めてくるなのだろうか?
そんな事を考えている間も彼は、私から離れようとはしない。
「い、いい加減に……って、ばか! そこは……」
熟睡の彼は寝ている間だけ、普通にエッチな大学生になるようだった。
知らなかった私が、この後どうなったかは、想像にお任せします。
*
「先輩、なんですか?」
「何も言ってないよ?」
「言ってないですけど、無言で俺の背中にくっついて来てますよね?」
大学が終わり、俺は部屋に帰ってきて、洗濯物を取り込んでいた。
すると、突然先輩が俺の背中に張り付いてきたのだ。
「暇、なんかしよ」
「じゃあ手伝って下さいよ、先輩の下着もあるんですから……」
「え~、面倒よ」
「何が悲しくて、アンタの無駄にエロい下着を俺が干さなきゃならんのだ……」
「彼氏だから?」
「普通同棲してたら、そこら辺気を使うもんじゃないんですか!」
「だって、次郎君が全部やってくれるし~」
「貴方がやらないからですよ……はぁ、じゃあコレが終わるまで待って下さい」
「仕方ないな~」
「それはこっちの台詞です……」
俺は急いで洗濯物を取り込み、先輩の要望に応える。
時刻は夕方の五時、既に辺りは暗くなっており、外は昼間よりも寒くなっていた。
「んで、何します?」
「ゲームでしょ?」
「当たり前のように言いますね……」
「いや?」
「外に行こうと言われるよりはましです。何やります?」
俺は未だに背中に抱きつく先輩に、ゲームのカセットを見せながら尋ねる。
最近二人でやるゲームは、便転堂のゲームが多い。
大人も子供も楽しめるゲームが多く、手軽に出来るのが個人的には良い。
「最近ハマってる、バトルロワイヤルのゲームしよ、アレ面白いのよね~」
「あぁ……武器拾って、その武器で100人と戦うあれですか? 良いですけど、先輩ってFPS系のゲームもやるんでしたっけ?」
「大好物ね」
「ちなみに好きな銃の種類は?」
「スナイパーライフル」
「あぁ、男を狙いうちしてますもんね……現実でも」
「別にしてないわよ、したけど目の前の誰かさんにはなかなか弾が当たらなかったわ」
大学内で、先輩は人気者だ。
可愛い見た目と猫を被った態度に、男も女も大体騙される。
それを狙ってやっているのだから、ある意味現実でもスナイパーかもしれない。
俺は早速ゲームのハードをテレビの横から持ってくる。
最近登場した、テレビに繋いでも携帯用としても遊べると言う便転堂の最新機種だ。
「そう言えば先輩もハード持って来てたんですね」
「当たり前よ! 並んで整理券を貰って、やっと手に入れた物だから、愛着あるのよね~」
「俺は無理矢理付き合わされましたけど……」
このハードは、発売当初は爆発的な人気で、何処のお店にも品薄の状態が続き。
ネットでは価格が高騰していた。
その為、俺は先輩に無理矢理朝っぱらから呼び出され、二人で電気屋やゲームショップに並ぶと言う事を一時期やっていた。
まぁ、俺も欲しかったからそれは良いのだが、朝があまり得意では無い先輩は並んでいる間に寝てしまうので、俺はそんな先輩の支えになっていた。
先輩は良くも悪くも注目を集めるので、俺にとってあの時間は地獄だった。
皆、俺と先輩を見てくるものだから、恥ずかしくて症が無い。
「でも、買って良かったでしょ? 二人で随分やったじゃない」
「あぁ、そうでしたね……購入出来た喜びで、その日のうちに、二人で一本クリアしましたもんね」
「一年経つけど、まだ人気よね~、このゲームもかなり流行ってるみたいだし」
「俺まだやったことないんですよ、先輩結構やったんですか?」
「まぁ、十時間くらい?」
「一日じゃ無いですよね?」
「…………」
「ゲームはほどほどに」
「はい……」
気まずそうに答える先輩を見ながら、俺はゲームをインストールし設定を始める。
アカウントを作ったり、ゲームのダウンロードに少し時間は掛かったが、無事終わり二人でゲームを楽しむ。
「先輩! 後ろ! 後ろにいます!!」
「大丈夫、もう倒したから」
「流石っすね……って! 俺がやられた!!」
「もう! 余所見なんかしてるからよ!」
「しょうが無いじゃ無いっすか! スナイパーに狙われたんですよ!」
「チーム戦だから、私一人だとキツいの! あ、手が空いたならココア作って、飲みたい」
「はぁ……はいはい」
そう言って俺は、先輩の為にココアを用意する。
なんだかんだ言っても、こうして先輩とゲームしている時が一番楽しいのかもしれないな……。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる