先輩はわがまま

joker

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「いくら次郎君でも、それは譲れないよ」

「俺もこれだけは譲れないです」

 俺と先輩は現在、神妙な面持ちで向かい合い対立している。

「先輩はいっつもそうじゃないですか!」

「いっつもって何よ! 次郎君もでしょ! 変なとこは頑固なんだから」

 何故こんな事になってしまったのか、それは数分ほど前に遡る。
 俺はパソコンで、新作ゲームの宣伝用PVを見ていた。
 大人気RPGの最新昨のPVと言うことで、俺は大きな期待をしていた。

「何見てるの?」

「アレですよ、アレの最新作のPVですよ。あと、さり気なく俺の背中に胸を押しつけるのはやめて下さい」

「買うの?」

「離れてもらえます? 買いますね」

 俺は離れない、先輩を無理矢理押しのけながら、動画の続きを見る。
 発売は来月の12月らしい、年末年始はコレをやって過ごそうかな?
 なんて事を考えていると、突然先輩は俺からマウスを奪い、別な動画を再生し始める。

「何見るんですか?」

「ん、私も欲しいゲームのPV……おぉ、始まった始まった」

「げ! こ、コレって……」

 そのゲームのPVに、俺は顔を歪める。
 それは、以前に先輩とプレイした事がある、ホラーアクションゲームの続編。
 内容は秘密裏に開発されていた、人を化け物に変えてしまう薬品が外に漏れてしまい、バイオハザードが起こってしまった世界を舞台に、主人公がその事件の解決に望むと言う物語だ。
 俺は先輩に誘われて……というか無理矢理一緒にプレイさせられたのだが、このゲーム相当恐い。
 俺はあまりホラーゲームを好まない、正直言ってホラー自体あまり好きでは無い、むしろ嫌いだ。
 それを知ってか、先輩は夏になると必ず、俺の部屋でホラー系の映画を見せて来る。
 その時の俺は、情けない事に耳と視界の両方を閉じ、ただ映画が終わるのを待っていた。
 ましてやゲームとなると、脅かし要素などが出てくる。
 前にプレイした時は、俺はビックリしすぎてまともに戦えなかった。
 そんな情けない俺を先輩は隣で笑いながら見ていた。

「か、買うんですか?」

 俺は動画を見ないようにし、耳を塞いでいた。
 丁度動画が終わったのだろう、先輩が再びマウスを動かした事に気がつき、俺は先輩に尋ねる。

「うん、買う! 一緒にやろ!」

「絶対嫌です!!」

「えーなんでよ~!」

「先輩、俺が恐いのダメなの知ってるでしょ? 勘弁して下さいよ……」

「だから、言ってるんじゃない? 純粋に欲しい気持ちが四割だとしたら、残りは次郎君の怖がるところが見たいからだよ?」

「半分以上の目的が、俺に対する嫌がらせなんすか……良いですか! 買っても一人でやって下さいよ! 俺はこっちやるので!」

「なんでよ、良いじゃ無い! また私にくっついてプレイすれば」

「それが嫌なんです!」

 こんな話しの流れで、新し買うゲームを一緒にやるかやらないかで、ちょっとした喧嘩になってしまった。
 話しは現在に戻り、俺と先輩は机を挟んで睨み合っていた。

「良いじゃん、前も結局最後までやったんだから」

「あの後何回か夢に見たんすよ……情けない話しですけど……」

「今回は一緒に寝てあげるから」

「そう言う事じゃ無いんですよ! それに、俺はさっき言ってたあのゲームをするので、先輩は一人でやって下さい!」

「良いじゃ無い、少しくらい!」

「嫌です! いくら先輩でもこれだけは本当に嫌なんです!」

「先っぽだけで良いから!」

「やめろ! 先っぽとか言うな!! その表現は色々危ないです!」

「知ってるわよ、狙ったの」

「もっと厄介だわ!」

 同棲を初めて一週間と半分、ここまで揉めるのは初めてだ。
 そうはいってもまだ二週間も経って居ないのだが……。

「言うこと聞かないと、出て行っちゃうんだから!」

「どうぞ? そろそろ自分のマンションに帰ったらどうですか?」

「う~……次郎君の馬鹿ぁぁ!!」

「ぐはっ! クッションを投げないで下さい!」

 先輩はそのまま部屋を飛び出して行った。
 いつの間にかフルメイクを済ませて……いつしたんだよ……。
 どうせ少ししたら帰って来るだろうと思い、俺は後を追いかけずそのまま部屋で待った。

「全く……先輩のわがままに付き合ってばかりもいられないからな…」

 俺はそれから先輩が帰って来るのを待ち、家事を済ませる。
 そして、家事をしていて気がついた。
 先輩居ないと、メチャクチャ早く家事が終わる……。

「やること無くなったな……」

 暇になり、俺はとりあえずスマホを弄る。
 もちろん先輩からの連絡なんて無い。
 良い機会だし、少し反省してもらおう。
 俺はそう思い先輩が戻ってくるまで、一切連絡を取らなかった。
 そして、あっという間に夕方になった。

「……長いな……」

 なかなか先輩が帰ってこないので、流石にちょっと気になってきた。
 別に心配してる訳じゃ無い、ただ遅い時間の女性の一人歩きは、色々と危険だと思っただけで、別に先輩を心配している訳ではない。

「全く……仕方ない……」

 俺は立ち上がり、外出の準備を済ませて部屋を出る。
 別に先輩が気になって探しに行く訳では無い、ただちょっとコンビニに行くだけだ。
 
「全く……なんで俺が……」

 俺は歩いてコンビニに向かっていた。
 これまでに三件のコンビニを通過したが、決して先輩のマンションに向かっている訳では無い。
 ただ、先輩のマンションの近くのコンビニのラインナップが良いから、そこに行くだけだ。
「まぁ、少し見ていくだけなら……」

 俺はコンビニで抹茶プリンと飲み物を購入し、先輩のアパートに向かう。
 ちなみに抹茶プリンは先輩の好物だが、それは今は関係無い、俺が食べたかっただけだ。
 決して先輩の機嫌を取ろうとか、そう言う目的ではない。

「相変わらず良いマンションだなぁ………」

 先輩の住んでいるマンションは、俺のボロアパートと違って、オートロックにIHヒーターが常備された、お高いマンションに住んでいる。
 何度か来た事はあるが、住んでいる人もなんだか裕福そうな人ばかりだった。
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