15 / 63
15話 隠蔽解除
しおりを挟むその後も単独の雑魚モンスターが現れてはマリナが倒し続けるという展開が続いた。
《レベル上昇 魔法【毒沼】習得》
毒沼か。
確か自分が狙った範囲に文字通り毒の沼を作る事が出来る遅延魔法だったはず。
「――マリナさん。ヴァニラもマリナさんみたいに皆を守りたいの……! 次はヴァニラも参加していい?」
ヴァニラはマリナの袖を小さく掴みながら自分の参戦を要求する。
「ヴァニラ様……。ええ、旦那様からも戦闘経験を積ませるようにと仰せ使っておりますので次回の戦闘からはヴァニラ様も参加してくださいませ」
「うん! シュントはヴァニラの後ろに隠れとくんだよ?」
「あ。はい……」
あれ? 何故かすこしだけ虚しい気持ちになったのはなんでだろう……。
でもそうか。
俺はこの子に守られながらこの子を守ると決めたんだ。
それがこの子の幸せひいては俺の幸せに直結する……!
しかし、その後は農村や小さな集落を通り抜けたからか一匹のモンスターにも遭遇しないまま夜になった。
「――では陽も落ちましたし本日はここにテントを設営します。シュント君は手伝ってください。ヴァニラ様はそんなに拗ねていないでこっちに来てくださいませんかー?」
大木の麓を今日の寝床に決定したが、モンスター撃破を意気込んだヴァニラはその感情をどこにもぶつける事が出来なかったためいじけていた。
「……ヴァニラも戦えるのに……。シュント守るのに……」
ここまでヴァニラがいじけるしまっている姿は初めて見るが、これはこれで年相応の反応で可愛らしい。
「ヴァニラ様。こっちに来て一緒にテント設営をしませんか?」
しかしヴァニラはそっぽむいたままだ。
「あーあ。マリナさんが湧水を汲みに行ってる今モンスターが襲ってきたら怖いなー。私みたいな見習い魔法使いだけだったら絶対やられちゃうなー」
ヴァニラの耳がピクっと動いたのを俺は見逃さない。
「誰か私を守ってくれる優しい人は居ないかなぁー? 居てくれたら安心してテントが建てれるのになぁーー」
自分でも驚くほどの大根役者っぷり。
これには中高の文化祭演劇でセリフなしだったのも納得出来る。
しかし、相手は8歳の子供だ。
案外早めに釣り上げれる事ができた。
「シュントがヴァニラに守って欲しいなら……そっちにもどるよ……」
「ええ。私は友達としてヴァニラ様に守っていただく契約をいたしましたので」
まだ少し拗ねているがヴァニラは木の陰からようやく姿を現した。
しかし。ヴァニラが姿を現した瞬間、双頭を持つドーベルファングが出現した。
ドーベルファングは決して強くは無いが獰猛さと攻撃力は先程のゾックスを遥かに凌ぐ。
「シュント! ヴァニラの後ろに隠れて!」
グァファァ!!
指示通り後ろに回り込み戦闘態勢に入るが、ドーベルファングは間髪入れずに襲いかかってきた。
「――キャャーー!」
ヴァニラは間一髪のところでドーベルファングの攻撃を避ける。
いや、ただ向かってきたモンスターに気圧されて転んだと言うのが正しい表現だろう。
これはモンスターとの実践経験がまるで無いヴァニラとマリナさんとの圧倒的差。
どうする。
最悪俺がこのまま倒すしかないか……。
隙を見てマリナさんを呼んでくるか。
いや待て、この暗闇ならバレないかも……!
「――ヴァニラ様。立てますか?」
「う、うん……」
「ヴァニラ様、このまま火散弾を打ってください。相手は現在身動きが取れません」
「え?」
「理由は後で説明します!」
《毒沼を使用しますか? 消費MP3》
[YES]
《隠蔽魔導は付与しますか?》
[YES]
更にヴァニラの詠唱より1テンポ早く火炎魔法発動……!
そして、隠蔽された火散弾がヴァニラの杖先を通過する瞬間を……狙う!
《火散弾を使用しますか? 消費MP2》
[YES]
《隠蔽魔導は付与しますか?》
[YES]
「――いくよ! 火散弾!」
「隠蔽解除!!」
ヴァニラの杖先から突如出現した火炎魔法は小さな火粉を軽く飲み込むと、辺り一面を赤々と照らしながらドーベルファングを瞬時に消滅させた。
「――はぁはぁ……シュント……大丈夫?」
《ドーベルファングを倒した 22EX獲得》
「――ええ。まぁなんとか……」
0
あなたにおすすめの小説
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる