俺「が」守りたいのは俺「を」守りたい推しヒロイン〜全クリしたゲームに転生した俺は才能ゼロの推しヒロインに守られるフリに徹します〜

長縄 蓮花

文字の大きさ
23 / 63

23話 母の形見

しおりを挟む


《レベル上昇   治癒を習得しました》

 きた!
 薬草じゃ回復出来ない傷も一定程度回復出来る回復魔法……!

「――す、すごい……。負傷していたとはいえあのイノディクトを打撃のみで倒すなんて……火炎魔法といいこの力は一体……?」

 マリナはただただ眼前で起こった出来事に驚いている。
 俺は驚いた口が塞がらない彼女の隠蔽魔法を解除しながら近づく。

「マリナさん。少しだけ痛みますが我慢してください」

《治癒を使用しますか?   消費MP5》

 YES

 俺はマリナの細い右腕を掌で軽く触れる。

「――っ」

 触れた掌は薄肌色に発光し、骨折部分を優しく癒した。

「よし……! おそらく上腕の骨折ですが、応急処置程度は完了しました。あとは街に帰ってお医者様に見ていただきましょう」

「――! シュント君……もう治癒を習得したのですか?」

「え? ああ、今のイノディクトを倒した際に……」

 不思議そうなマリナはおもむろにホストの権限でパーティーメンバーのステータスをチェックする。

「あなた……レベルアップごとに新たな魔法を習得しているのですか!? 魔導師といえどこんな習得ペース聞いたことがありません……」

 たしかにマリナの言う通り。
『スレイブ・フロンティア』に関わらずRPGにおいてレベルアップごとに技や魔法を習得することの方はおかしな話なのだ。

 しかし俺はレベル上昇ごとに新たな魔法を習得しているし、俺がプレーしていた主人公の剣術技習得のペースを遥かに上回る。

「あはは。なぜでしょうか。たまたまですかね」

 笑って話を流そうとした瞬間、俺は見事に背後から突進をくらう。

「シュント! よかった! みんな無事だよ!!」

 嬉しそうに俺に抱きついて来たヴァニラ。
 しかし俺の首に回した両腕は小刻みに震えていた。

「ヴァニラ様…本当にお見事でした。私も執事見習いとして鼻が高いです」

「――ありがとうシュント。たしかにちょっぴり怖かったかな……」

 それもそのはずだ。
 まだ幼い8歳の子供が生死をかけた戦場に立っていたのだから。

「ヴァニラ様はお怪我などはございませんか?」

「うん。マリナさんこそ腕は大丈夫なの?」

「ええ。それよりもヴァニラ様……こちらに来ていただけますか?」

 心配そうにマリナの右腕を眺めるヴァニラをマリナは優しく手招きし、メイド服のボタンを1つ、また一つと外していき更にあろうことか自身の胸元をゴソゴソと漁り出した。

「ちょちょ!!! 何してるんですかマリナさん! ヴァニラ様にはまだ刺激が……!」

 建前だけのツッコミはしたものの俺の視線はマリナの胸元に釘付けにされる。

 彼女いない歴=年齢などという使い古され手垢でベトベトな自虐ネタは使いたくないが、生身の女性の胸元など拝めた試しの無い俺からすれば、目の前の光景全てを両目でインプットしなければならない。

「はぁ。あなたは優秀だと思えるときとそうで無い場合の差が激しすぎますね……先程までの冷静さはどこに消えたのでしょうか……」

 マリナはため息混じりの説教をしながら次は自身の首に手を回し、見覚えのあるネックレスを外した。

 !!?
 なんでそれをマリナさんが……!?

 暗闇の中でも美しく光り輝き、中央部分に翡翠の宝石が装飾された年季の入ったネックレス。

 マリナはそれを近寄って来たヴァニラにそっとかけてあげる。

「――? これなぁに?」

 ヴァニラは突然装着されたネックレスをぼーっと見つめる。

「これはアクリシア様が生来着けておられたネックレスです。いつかヴァニラ様が立派に成長されたらこのネックレスを渡して欲しいと仰せつかっていたのです」

「――お母様……が……?」

「そ、そのネックレスは……」 

 降り頻る雨の中。

 俺の脳内も嵐のように乱れ吹き荒れていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...