俺「が」守りたいのは俺「を」守りたい推しヒロイン〜全クリしたゲームに転生した俺は才能ゼロの推しヒロインに守られるフリに徹します〜

長縄 蓮花

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25話 裏切りの女

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 目の前で起きている光景、聞こえてくる音声はあまりにも信じ難い物であった。
 何の変哲もない優しいお爺さんだと思っていた奴に突然吹き飛ばされるマリナ。

 そしてマリナが呼んだノーデンタークを冠した謎の名前。

「ふん。あやつが今が好機などという書簡を送って来よったからこちらは協力したというのに……。まずはヴァニラを徹底的に追い詰めるのが計画の要だったのだ……」

 ダンテは床に這いつくばるマリナの腹を力いっぱい蹴り上げる。

「――っっがはっっ!!」

「心配するな。最後は完全治癒で治してやる」

「それでだ……雑魚だったはずのヴァニラがあそこまでの魔法を使えたり物理攻撃が可能なのはどういう了見だ? 貴様ら屋敷組の定期連絡ではそんな報告受けてねぇぞ?」

「そ、それが……先日、エリクスとの魔導訓練中にいきなり覚醒したと……。私もこの目で見るまではヴァニラにあのような力があるとは信じられませんでした」

 俺はこの時、鬼畜とも思えるダンテの暴行を止める気など更々なかった。
 むしろもっとやっちまえとさえ思った。

 それほどに俺は今マリナに対して怒りを覚えていたのだ。

 出会った時のあの涙は何だったんだ……?

 夜空の下で俺に話してくれたのは何だったんだ……?

 イノディクトとの戦闘中に流した涙とあの言葉は何だったんだ……?

 全てを思い返すたびに嫌悪感で吐きそうになる。


「あの男のガキもなんだ? 力こそ無いが妙にイノディクトの知識や戦闘方法に詳しかったように見える……」

「あの者は先日ヴァニラが拾って来た身元不明の孤児です……。ステータスは確認しましたがいくつか不審点があります」

「不審点?」

「ええ、彼の魔法における成長スピードは群を抜いています……。レベル11で治癒《トリート》を習得するなど聞いたことがありません」

 ダンテは一度上を向き目を閉じる。

「……そうか。奴もか……」

「で? もう一つはなんだ?」

 マリナの顔をジリジリと踏み躙るダンテは少し微笑んでいるようにも見えた。

「ステータスで種族不明と表示されるのです……こんな事は私の経験上ありませんでした」

 それを聞いた瞬間、ダンテはマリナの顔を踏むのを止めソファーに深く腰掛けると、高らかに笑い上げた。

「あっっははは!! エリクスの奴とんでもねぇー爆弾抱えてるじゃねぇーかぁ!! さすがノーデンタークを継いだ男は懐が広いと見える……」

 マリナは笑い出したダンテを呆然としながら見つめる。

「まぁいい。まずはヴァニラだ……奴にはまだここに居てもらわなきゃ困る。貴様のおかげで少々計画は狂ったが本丸にはまだバレてねぇ。最低二日はこの街に奴を縛り付けておけ」

「はっ。御心の元に……。」

 マリナはよろけながらもダンテに向かって跪き首を垂れる。

 くそ女が……。
 でも思い出した……女なんてそんなもんだ。


 ――「佐々木君が好きです……付き合っていただけませんか?」――

 ――「ちょっとりこぉぉー! いただけませんかって何あれー! うちら隠れながら爆笑しちゃったんだけどあの豚にバレてないかな?」――

 ――「だーいじょうぶだって。あの豚テンパって私と目も合わせられなかったんだからぁ! あ、賭けの3000円絶対もらうかんねぇー?」――

 あれもさっきみたいに教室の隙間からこっそり覗いたんだっけ。

 ああ、だから俺はゲームの世界に逃げ込んだのに……。

 気がついたら俺は逃げるように廊下を走っていた。

「くそ、くそ! くそ!!」

 心から漏れ出た怒りを抑えられそうにないが、それよりもヴァニラが第一優先だ。
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