俺「が」守りたいのは俺「を」守りたい推しヒロイン〜全クリしたゲームに転生した俺は才能ゼロの推しヒロインに守られるフリに徹します〜

長縄 蓮花

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28話 屋敷到着

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「――よし。ここなら絶対通るはず……。この人の名前はあまり使いたくなかったけどな……」

 俺は多少の罪悪感を抱きながらも、完成した地面を見ながら出来栄えを確かめる。

「シュント? 大事な用は終わったの?」

 俺たちは一旦、走らせ続けた馬の休憩中。
 そして俺はここにあるメッセージを残していた。

「はい。僕はいつでも出れます」
「そっか。お馬さんもあと数分草を食べたら行けそうだよ」

 がさがさ……。

「――ヴァニラ様」

「――?」


 茂みからドーベルファングが突然ヴァニラ目掛けて襲いかかって来た。
 背後を取られたヴァニラはまだ襲撃に気付いていない。

 グァファァ!!

「――くそっ!!」

 俺はヴァニラの背後を襲おうと飛びかかったドーベルファングに【沈黙魔杖】の通常攻撃をタイミング良く合わせる。

 グァァァ! グファァ……。

 見えない杖から直接魔導を打ち込まれたドーベルファングは茂みへと一直線に吹き飛ぶ。

《ドーベルファングを倒した  24EX獲得》

 魔導師の通常攻撃は敵と接触した武器の先から己の魔導力をただ単に相手にぶつけるだけの単純な攻撃。

 しかしそれが攻撃力363の【沈黙魔杖《サイレンス》】を使用していた場合はその攻撃力も高等魔法レベルに跳ね上がるのだ。

《レベル上昇  魔法【眠誘】習得》

 睡眠魔法。
 これは使い様がいくらでもある便利な魔法……!

 が、しかし休憩したとはいえ俺の現在のMPは12も無いだろう……。
 もし大規模な戦闘が起きた場合に備えて、ここは通常攻撃主体で戦うしかない。

「応接間にポーション置いてきたのが痛かったなぁ……」

「――シュント大丈夫? お怪我はない?」

 アナタを守ったのは俺なのだが……。

「ええ、私の攻撃でも通じる子供のドーベルファングだったの助かりました」

 ヴァニラの死角からの攻撃は焦りまくるが、何とでも言い訳がしやすいのが唯一の救いだな。

「よし、じゃあ行こっか。あと3時間もすれば屋敷に着くよ」
「あ、そういえばヴァニラ様にお渡ししたい物が……」

《恩恵のローブを手渡しますか?》

 YES

「――? なにこれ?」

「これは【恩恵のローブ】です。お世辞にも防御力が高いとは言えませんが、保持MPが多ければ多いほど装着者の魔法攻撃力が上がります」

 なんてな。
 本当の能力は術者が自分以外のステータス上昇魔法をかけられた場合、術者のMPに応じて上昇効果が変動する優れもの。

 たとえばマリナが使っていた身体強化をMP マックスの俺がヴァニラにかけたとする。

 その場合おそらく攻撃力、防御力は2倍以上に跳ね上がるはずだ。

 しかし、デメリットも存在する。
 恩恵が大きければ大きいほど術者から削られるMP量も膨大になる。

 この場合だと俺の現在のマックスMP量は45くらいなので、半分以上の23MPは消耗するはずだ。

 諸刃の剣ではあるが、地下室のもう一つの部屋に眠るあの巻物さえ手に入れば大幅な戦力上昇になるはず……。

 再度馬に跨った俺達は、万一追ってに遭遇しても逃げ切れるように鬱蒼とした森の中を駆けていく。



「――皆大丈夫かな……ヴァニラのせいで迷惑かけてないかな……」

「大丈夫ですよ。ここ最近のヴァニラ様のご活躍はノーデンターク次期当主にふさわしいので胸を張って屋敷に帰りましょう」

「――うん……立派になれたんだもんね……」

 ヴァニラは胸元に飾られた年季の入ったネックレスを少し悲しそうに眺めて答える。


「――着きましたね。馬はここに繋いでおきましょう」

 二日ぶりのノーデンタークの屋敷はなんだかいつもと様子が違うように思えた。
 夕方過ぎで薄暗いのも影響しているのかもしれない。
 まさか、屋敷中でダンテの手下の殺人鬼が暴れてるなんてはやめてくれよ……。


 恐る恐る正門を開けると屋敷から一人の人物が出て来た。
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