俺「が」守りたいのは俺「を」守りたい推しヒロイン〜全クリしたゲームに転生した俺は才能ゼロの推しヒロインに守られるフリに徹します〜

長縄 蓮花

文字の大きさ
44 / 63

44話 夜に舞う花火

しおりを挟む


 大広間にて対峙するエマは向かって右に、そして左に見えるデビスは荒い呼吸で己の心臓付近を押さえながらも俺たちの様子をなんとか窺っている。

 対して俺たちは縦列隊列を取る。
 シュント、ファナ、ヴァニラの順に縦に並んだ3人。

 月が高くなりステンドグラスから差し込む月光の量も増えてきた大広間は静かにその時を待っていた。

 俺は一度大きく息を吸い込んで作戦の成功を神とやらに祈ってみる。

「ふぅ……。それじゃあ……」


「――行くぞ!!」

 俺の号令を合図に俺たちは一斉にエマが居る右方向目がけて走り出し間合いを詰める。

「エマの懐に走り込め!! 鞭攻撃は相手との距離が近すぎれば遠心力が弱まる分攻撃力も減少する!! デビスはエマを倒した後だ!!」

「うん!」

「――行きます! 『粉塵の霧』!!」

 ファナが放出する大量の灰粉塵はエマに向けて全力疾走する俺たちを覆い隠しながら瞬間的に大広間中を埋め尽くす。

「くそ!! これでは【雷電鞭】を使おうにも標準が定まらない……!!」

 しかし、エマの鼓膜は灰色の世界からは発せられる三つの足音を確かに捉えていた。

「どこから来る……! なぜ貴様らはこの視界で走れるのだ!!」

 その瞬間、ファナは俺の背中を軽く叩いた。



「くそっ……。――なーんて私が言うとでも思ったのかしら?」

 灰色の粉塵の中から不敵な女の声が聞こえた。

「――そこでしょ? ファナ」

「『雷光滅』!!」

「――!! 『サラビアの盾』!!」

 ファナは咄嗟に背後から迫り来る『雷滅光』を『サラビアの盾』でいなす。
 灰の中でも確実にファナの背後を狙ったエマの鞭攻撃だった。

「ふん。『粉塵の霧』の使用前にあえて私に向けて走る姿を見せたのはこうゆうことね。でも残念……シュント君。アナタは必ずデビスを救うためにまずは左から攻めてくると思っていたわ!」

 エマには俺たちの先制攻撃目標がデビスだと筒抜けだった。

「視界ゼロのこの状況ではデビスは『龍炎虎徹』や『二閃風刀』は打てない。それを見逃すはずがないもの」

『粉塵の霧』の術者であるファナはこの状況で唯一自由に行動出来る。
 そのアドバンテージを利用したのが逆にバレたのか。

「ファナ……唯一この大広間で視界を保つアナタの指示で前後の二人に左へ向かうタイミングで指示を出したんでしょ?」

 灰色の世界にはエマの勝ち誇った声のみが響いていた。

「――さすがお母様、ファナの完敗です……。ですが――」


「ファナ『達』の勝利です!!」

「何を今更戯言を……」

 次の瞬間。
 エマは鳴り続ける一つの足音にやっと気づく。

 しかしそれに気づくにはあまりに遅すぎたのだった。

「――!! な、なんでお前がぁぁぁ!!」

 灰色の世界に突如発光したロッドが現れる。
 そのロッドは小刻みに震えながらもエマの方向にしっかりと向けられていた。

「ごめんね。エマさん……でも弟と妹を守るのはお姉ちゃんの仕事なの……!」

「くそっっ!! 『雷滅――』」

 突然正面間近に現れたヴァニラにロングリーチを必要とするエマの鞭攻撃が間に合うはずもない。

「――火散弾!!」

 震えたロッドから射出される火の玉達。

「きゃゃゃああああぁぁ!!」

 無数の火弾が照らすエマの赤髪と美しい体型のシルエット。
 ゼロ距離で放たれた火炎攻撃が灰色の世界を一時的に紅へ染め上げる様はまるで、夏夜空を散開する花火のようだった。

「す、すげぇ。あのヴァニラが……」

 大広間に散り舞う火花に思わず主人への敬称を忘れてしまう。



「――シュント君!! 前です!!」

 その瞬間、火散弾の輝きで視界にヴァニラを捉えたデビスは自動的にヴァニラに向けて【怨刀対子】を構える。

「龍炎虎徹……!!」

 前を向くと微かな視界に火炎を纏った双刀が振り上げられているのが分かった。

《風突を使用しますか?  消費MP5》

 YES

《隠蔽魔法は付与しますか?》

 YES


「――おい。今俺のヒロインが珍しくご活躍中なんだ……。」


「だから邪魔すんなぁぁ!!!」

「風突!!」

 姿なき剛風はデビス渾身の龍虎を吹き消しながら灰色の世界をも消し去った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...