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43話 無茶な作戦
しおりを挟む「エリクス様だと? たしかにアクリシアは前妻だが今はお前が正妻だ。何も奪ってなんかない」
「……ふふ……。ふふふふ」
「――はっ。ははは……あー。あーー。あぁぁーーーはっはっは!!」
突然不気味に笑い出したエマの姿に俺とヴァニラは思わず目を見合わせる。
「……シュント君……あなたおそらく本当の恋愛経験がないのね……。その歳なら納得だけど」
やば。
28年間、全てをゲームとアニメに費やしていたなんて口が裂けても言えない……。
「そ、それがどうした」
「エリクスはね……まだあの女との過去に恋しているのよ。私はただの代用品であり、ノーデンタークを存続させるための一種の道具に過ぎない……あなたにこの屈辱が分かるかしら?」
「そしてあろうことか……頑なに才能のないヴァニラを後継者にしようとする……それが私は許せない!!」
エマが叫んだ瞬間、デビスにかけられていた『氷層結止』が解けた。
再び黒く邪悪なオーラを纏った【怨刀対子】をデビスは静かに構える。
「エマ! デビスを止めろ! 本当にデビスが死んじまうぞ!!」
「――それならば……ヴァニラをこちらによこせ!!」
ファナに巻きついた鞭は縛りを解き、電気を纏いながらヴァニラを捕らえようとする。
「双刀流 二閃風刀……」
禁断の力により禍々しい増幅をした高速の斬撃は音を置いていく。
「――ヴァニラ様!!」
床に転がる骨董品の残骸をいとも簡単に切り刻む風の斬撃を、俺はヴァニラを押し倒しながらなんとか避ける。
しかし、避けた先は袋小路だった。
「雷光滅!!」
「ぐぁぁぁぁ!!!」
「きゃゃゃぁぁ!!」
電撃はくっついた二人の体を焼き尽くすように駆け回る。
まずい……俺のHPは残り12も無い。
次の攻撃を喰らったらすべておしまいだ。
その時、地面に転がる俺の耳元から声が聞こえた。
「――お姉様、シュント君。耳を貸してください……。一度きりの作戦があります」
土煙が舞い上がる中、ファナは俺たちに作戦を伝える。
およそ20秒ほどで伝達される作戦内容は正直耳を疑うレベルだった。
「――それは……まぁ思い切ったな作戦を」
「そうでもしなければならない状況です。おそらくデビスのHPは残りわずか、あと一回の魔導斬撃でHPの限界を迎えるでしょう」
「それとお姉様とシュント君には術者捕縛と呪縁魔法の解除という大仕事が残っていますから……! 私が呪いに堕ちても二人が居れば大丈夫なはずです」
「――!」
「――うん……! シュントとファナちゃんみたいにヴァニラは頭が良くないからあんまりよく分かんないけど、これで皆を守れるんだよね……!」
父親譲りの白銀ヘアーの二人は向き合いながら両拳を握り締め、同時に『がんばる!』ポーズをする。
「では……スタンバイしてください」
俺たちは各々の配置場所につく。
「ファナ……ありがとうな。俺がヴァニラに力を隠しているのを知っているんだろ? だから作戦もあくまでヴァニラと3人での共同作戦にしてくれたのか」
ファナは小さい体を反らしながら腰に両手を当てながらもっと褒められるのを待っている。
優秀だがやっぱりまだまだ子供だな。
「ふふん。まぁあの攻撃された状況で魔法で反撃せずに二人して避けるなど普通の魔導師では考えられない行動でしたので! あそこでなんとなく感じました!」
「さすがの洞察力だな。なんでも見透かされてんじゃないかとちょっと不安にもなるが」
俺は最後に冗談を残して配置につこうとすると背中に数発の軽い打撃? を受ける。
振り返ると、どうゆうわけか真っ赤な膨れ面でポカポカと俺を殴るファナはじっと俺を見つめながら、白銀の頭を突き出す。
「ん……!」
「ん?」
「ん!!!」
「ん……? ああ……そうゆう事か」
催促通り3回ほどファナの頭を撫で終えると満足げに配置についていった。
「……本当にまだ子供なんだな」
「では始めます! 『魔力贈与』!!」
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