95 / 321
フィリスと生徒会長
しおりを挟む
「まず、私と生徒会長……ユーリとの関係からお話しましょう」
「ユーリ……?」
「彼女の名前です、聞いた事ありませんか?」
「ううん、初めて聞いたかも」
そうですか、と言ってフィリスは話を続けた。
生徒会長の名前は、ユーリ
彼女は、私達と同じこの学園の二年生。
生徒会は二年生から入れるのだが、一年生の入学式の日に突然会長として就任したらしい。
それから、彼女が会長になってからというもの、いじめなども無く平和な学園になったと言う生徒もいたらしい。
それどころか、彼女に恋をする生徒も多くいて、ファンクラブまで存在しているらしいけど……
「会長さんとフィリスは一体どういう関係なの……まさか恋人だったとか……」
「まさか。私達はね、幼馴染なの」
「幼馴染……?」
「そう、小さい頃から両親同士が仲良くて、よく一緒に遊んでいたの」
そこで、フィリスは一度言葉を切る。
そして、悲しそうな顔をしながらまた話を始めた。
「私とユーリは、小さい頃はとても仲が良くて、いつも一緒でどこに行くにも二人一緒だった。それは、大きくなってからも変わらなくて、私はずっと一緒に居られると思っていたの、でも、そんな生活が壊れてしまった」
「生活が壊れてしまった……?何かあったの……?」
私の問いに、フィリスは黙ってしまった。
聞いちゃいけないことだったかな……と思い、謝ろうとした時、フィリスが小さな声で答えてくれた。
その声は震えていて、今にも消えてしまいそうだった。
「あの人は私の事を騙していたの……」
「騙す?ちょっと話が見えないんだけれど……」
「いつもの様に過ごしていたある日、ユーリに呼ばれたの、私と話したい子がいるって言われてね。その時の私は何も疑わずに付いて行ったわ。そうしたら、いきなり知らない人達に囲まれて、魔法で拘束されて……」
「えっ!?それっていじめじゃん!!?フィリスは大丈夫だったの?!!」
「えぇ、心配してくれてありがとう……それでね、あの子が私に近づいて来て言ったの、貴女みたいな、聖女のなりそこないに、なんでこんなに優しくしてあげたか分かる?って」
「フィリスはなんて答えたの?」
「分からない……って、そうしたらあの子教えてあげるって言ってね、貴女と一緒に居れば私の評価が上がるからよ。って笑ったの。私はそれが信じられなかった、だってあの子は昔から優しい子で、誰にでも分け隔てなく接してて……でも、あの子の目は違った。冷たくて濁っていて、私は怖くて動けなくなったの」
そこまで話すと、フィリスは下を向いてしまった。
肩が小刻みに揺れていて、泣いている事が分かった。
私はそっとフィリスの手を握る。
フィリスは驚いた様子で私を見てきたけれど、そのまま手を握って続けた。
少しでも、フィリスの力になれたらいいな……
そう思いながら。
「そしてあの子はこう言ったの。
ここにいる子達が教えてくれた、フィリスは私の事を都合のいい玩具だって思ってるって、私そんなこと思ってない、きっとそこにいる子達に何か言われたんだと気づいて伝えたけれど彼女には何も伝わらなかった」
そう言って、フィリスは私を見て少しだけ微笑んでくれたけれど
でも、それはどこか寂しそうだった。
「ユーリ……?」
「彼女の名前です、聞いた事ありませんか?」
「ううん、初めて聞いたかも」
そうですか、と言ってフィリスは話を続けた。
生徒会長の名前は、ユーリ
彼女は、私達と同じこの学園の二年生。
生徒会は二年生から入れるのだが、一年生の入学式の日に突然会長として就任したらしい。
それから、彼女が会長になってからというもの、いじめなども無く平和な学園になったと言う生徒もいたらしい。
それどころか、彼女に恋をする生徒も多くいて、ファンクラブまで存在しているらしいけど……
「会長さんとフィリスは一体どういう関係なの……まさか恋人だったとか……」
「まさか。私達はね、幼馴染なの」
「幼馴染……?」
「そう、小さい頃から両親同士が仲良くて、よく一緒に遊んでいたの」
そこで、フィリスは一度言葉を切る。
そして、悲しそうな顔をしながらまた話を始めた。
「私とユーリは、小さい頃はとても仲が良くて、いつも一緒でどこに行くにも二人一緒だった。それは、大きくなってからも変わらなくて、私はずっと一緒に居られると思っていたの、でも、そんな生活が壊れてしまった」
「生活が壊れてしまった……?何かあったの……?」
私の問いに、フィリスは黙ってしまった。
聞いちゃいけないことだったかな……と思い、謝ろうとした時、フィリスが小さな声で答えてくれた。
その声は震えていて、今にも消えてしまいそうだった。
「あの人は私の事を騙していたの……」
「騙す?ちょっと話が見えないんだけれど……」
「いつもの様に過ごしていたある日、ユーリに呼ばれたの、私と話したい子がいるって言われてね。その時の私は何も疑わずに付いて行ったわ。そうしたら、いきなり知らない人達に囲まれて、魔法で拘束されて……」
「えっ!?それっていじめじゃん!!?フィリスは大丈夫だったの?!!」
「えぇ、心配してくれてありがとう……それでね、あの子が私に近づいて来て言ったの、貴女みたいな、聖女のなりそこないに、なんでこんなに優しくしてあげたか分かる?って」
「フィリスはなんて答えたの?」
「分からない……って、そうしたらあの子教えてあげるって言ってね、貴女と一緒に居れば私の評価が上がるからよ。って笑ったの。私はそれが信じられなかった、だってあの子は昔から優しい子で、誰にでも分け隔てなく接してて……でも、あの子の目は違った。冷たくて濁っていて、私は怖くて動けなくなったの」
そこまで話すと、フィリスは下を向いてしまった。
肩が小刻みに揺れていて、泣いている事が分かった。
私はそっとフィリスの手を握る。
フィリスは驚いた様子で私を見てきたけれど、そのまま手を握って続けた。
少しでも、フィリスの力になれたらいいな……
そう思いながら。
「そしてあの子はこう言ったの。
ここにいる子達が教えてくれた、フィリスは私の事を都合のいい玩具だって思ってるって、私そんなこと思ってない、きっとそこにいる子達に何か言われたんだと気づいて伝えたけれど彼女には何も伝わらなかった」
そう言って、フィリスは私を見て少しだけ微笑んでくれたけれど
でも、それはどこか寂しそうだった。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで
雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。
※王国は滅びます。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる