若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

ルークの役目

「そうか…………ご苦労だったな、ルーク」
「いえ、本当に大変だったのはルカ様と沙羅様ですから」
「そうだな……聖女様二人にすべてを任せてしまうだなんて
国王として恥ずかしい限りだ」
報告を聞き、国王は眉間にシワを寄せた。
その気持ちは俺も同じで、ルカに対してあんなに力になると言ったくせに
結局、力になれたのはほんの少しの事だけ。
だから……あの三人の事は、俺が絶対に裁いてみせる。
アイツらがしてきた事は、決して許される事では無く裁かれるべきだ。
自分達がしてきた事を自覚させ罪を認めさせる……これが、俺のやるべき事なんだ。
「ルーク、今日の所はゆっくり休みなさい」
「いいのですか……？」
「あぁ、お前も疲れただろう？」
国王はそう言うと、優しい顔で俺を見た。
俺はそんな国王に頭を下げ失礼しますとだけ伝え部屋を出た。
アイツらは、しばらくはこの城の地下の牢屋に閉じ込める事になるだろう。
監視も付いてるし、アイツらのあの様子から、何か問題を起こすことは今の所
無いだろう。
「はぁ…………」
まだまだやる事は山積みだが……終わったんだな、すべて。
そう思ったら、急にルカに会いたくなった。
ルカは今どうしているだろうか？ちゃんと休めているだろうか？
ルカが心配だ……早ルカに会いたい……そう思った俺の足は、自宅では無く
ルカの家の方角に向いていた。
早くルカに会いたい、ルカの顔を見て安心したい……そして、頑張ったねと褒めてあげたい そんな気持ちで俺は足早に歩を進めた。
*******
勢いでルカの家の前まで来たけれど、そう言えばルカ達と別れてから
数日間家に帰れていなかったから、洋服を着替えられていなかったのを思い出した。
「流石に……これじゃルカの近くには行けないよな」
そう呟き、自宅に帰ろうとした時……後ろから扉が開く音が聞こえ、驚いて振り向くと、そこにはルカが立っていた。
「ルーク……？ルーク！お帰りなさい！」
「ルカ……！っと待ってくれ……」
笑顔で俺に飛びつこうとしたルカを俺は
慌てて止めた。
ルカは、悲しそうな顔をして俺を見つめてくる……
胸が苦しい、本当だったら俺だってルカに抱き着きたい、けれど……
こんな汚い俺がルカに抱き着く訳にはいかないんだ。
「？どうしたの、もしかして抱き着かれるの嫌だった……？」
「いや！ちがくて！その……」
「ルーク……？私が嫌い……？」
「そんな訳ないよ……！！あ、あの……俺今……凄く汚いから……」
そう言って俺はルカから顔を逸らす……だって、こんな理由恥ずかしいから言いたくなかったから、ルカだってきっと呆れてる、そう思いチラッと横目で
ルカの様子を見ていたら、俯いてプルプルと震えていた、やっぱりおかしかったんだ、そう思った瞬間ルカが俺に飛びついてきた。
「る、ルカ！？俺汚いって……！」
「関係ないです！ルークに汚い所なんてありません！」
「るか……」
「それに、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていたルークが可愛くて……ごめんなさい」
ルカはそう言うと、俺の腕の中から離れて照れくさそうに俺を見つめてくる。
そんなルカが可愛くて……やっぱり俺はこの子の事が好きだなって思った瞬間自然と俺も笑ってしまっていた。
そして、改めて思ったんだ……ここに帰ってこれて良かったと。
「ルカ……」
「何ですか？ルーク」
「遅くなったけれど……ただいま」
「はいっ！お帰りなさい」
そう言い合ってお互いに笑い合う。
あぁ…………本当にこの日常を取り戻せて良かった、そう強く思った。