若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

お泊りの日の夜

「さて、私達の仲が深まった所で……そろそろ、寝ないと明日起きれないよ？」
エミリアが時計を指しながらそう言った。
私がそうですね、と答えると後ろの方で、え～まだ眠くない～
と言う、駄々をこねる子供の様な声が聞こえた。
「沙羅、そんな駄々を捏ねても眠れなくなるだけよ？」
そう言って、フィリスが沙羅に近付きそっと頭を撫でた。
沙羅むぅ、と不満そうな表情を浮かべていたけれど、少しすると静かになった。
やっぱり、フィリスは凄いなぁ……と思っていると、エミリアが私の服の裾をくいっと引っ張り、私の耳元こう囁いた。
「あの二人、何だか楽しそうだね」
「えぇ、少し羨ましいです……」
「じゃあ、私とああいう事する？」
「…………遠慮しておきますわ」
にっこりと笑い、そう答えるとエミリアは、残念っと言って笑った。
すると、話し終わった二人が私達の方にやって来て、お待たせしましたと言った。
「ふふ、随分と楽しそうでしたね？」
そうフィリスが尋ねると、二人は顔を真っ赤にして否定した。
その様子が面白くて、私達は笑い合った。
「さて、今度こそ寝ましょうか」
「はーい！私端っこね！」
「はいはい、お二人はどうしますか？」
「私は何処でも、沙羅は？」
「うーん……」
「沙羅？どうしました？」
私が問いかけると、沙羅は少し困った様な顔をしながら私の事を見た。
何かしてまっただろうか……と不安になっていると、沙羅が口を開いた。
「こんな大きなベッド、お話の中でしか見た事無いから、私が寝てもいいのかなって思っちゃって」
「お話の中……ですか？」
「うん、こういう大きなベッドにはね、お姫様とかが
眠っててね……」
そう言って、沙羅は自分の国にある御伽噺の話をしてくれた。
沙羅の国のお話は、私達の世界では聞いたことも無いようなお話ばかりで
とても興味深かった。
「ねぇ、沙羅そのお話もっと聞かせてくれますか？」
「いいけど、ルカ達は聞いてて楽しいの？」
「えぇ、とっても！さ、続きはベッドの上で……」
そう言って私は沙羅の腕を引っ張り、ベッドの上へと案内する。
右端にはエミリア、その隣は私、私の隣に沙羅がいて、その隣にフィリスが
横になった。
沙羅は、何だか川の字みたい……と言いながら、楽しそうにしていた。
私が、川の字とは何なのですか？と聞くと、沙羅の世界では、良く家族が
並んで寝る という習慣があるのだそうだ。
その習慣を、川の字と表現するのだそうだ。
私は、じゃあ私達も家族ですねと言って微笑みかけると沙羅は嬉しそうに微笑んだ。
「えっと、じゃあお話の続きを……」
そう言って、沙羅はまたお話を始める。
私は、その御伽噺に耳をかたむけた。
*****
気付けば、いつの間にか窓の外からは明るい日差しが差し込み部屋の中を照らしていた。
もう朝か……と思い、ふと横を見るとすぅすぅと寝息をたてて眠っている皆がいた。
「ふふ、よく眠っていますね……」
あの後の事は途中までしか覚えていない、きっと話している内に 皆眠ってしまったのだろう。
私は皆を起こさないようにそっとベッドから下りる。
すると、いきなり服をくいっと引っ張られた。
振り向くと、そこには眠そうに瞳を擦っているエミリアがいた。
「ん～？ルカ？」
「おはようございます、もう朝ですよ」
「そっか……ふぁ～おはよう……」
そう言って、エミリアは大きな欠伸をした。
さて、今日はいよいよパーティーの本番、ルークに楽しんでもらえるように頑張らないと！そう思い、ぐっと手を握り締めた。