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第1章 眠れるあいつの隠し事(基本壱輝目線)
30.Pair ...
しおりを挟む動物園を一通り廻ったあと、俺達は入口付近にあるお土産屋さんに来た。
「あ~!見てみて~、このアザラシのぬいぐるみ超可愛いぃぃぃぃ!」
「え、デカくね?」
「そこがいいんだよ~、抱き枕サイズ♪」
(まさか、買う気じゃないよな…?
帰りの電車での視線が絶対痛え…。)
ふと横を見ると、屈狸先輩と稲荷先輩が蛇のおもちゃで遊んでいた。
「ねぇねぇ稲荷くん、これ可愛くない?」
「うん?屈狸の目には、これのどこが可愛く映ってるのかな?」
屈狸先輩の手には、ヤモリ?トカゲ?…まぁどちらか分からないが、爬虫類のぬいぐるみが握られていた。
(屈狸先輩…爬虫類好きなのかな?)
生暖かい目で見つめていると、屈狸先輩がクルリと俺の方を向いて言った。
「ねぇねぇ、壱輝!これ可愛いよね?」
「……まぁ、好みは人それぞれって事でいいんじゃないですか?」
「それ、遠回しに可愛くないって言ってない?」
「可愛いと思うんだけどな~」とぬいぐるみをつつく屈狸先輩に、稲荷先輩と苦笑いを浮かべる。
(そういや、さっきから静かだな…。
彩兎どこいった?)
キョロキョロと周りを見渡すと、稲荷先輩が彩兎なら…と口を開いた。
「さっき、トイレの方行ってたよ」
「あ、そうですか…」
まぁ、あいつは一人にしても大丈夫だろう。
体育館倉庫で、先輩返り討ちにしてたからな。
あの時は、そのまま何事もなかったように帰ったけど、今思えば結構すげー事のような…。
ま、まぁ…深く考えるのはよそう。
俺は、余計な思考を振り払うように頭を振った。
(あ、利人達にお土産買ってこうかな…)
近くに置いてあった、ホッキョクグマのぬいぐるみを手に取る。
ぬいぐるみって割と高いんだよな…。
やっぱりキーホルダーとかにしよう…そう思ってぬいぐるみを置こうとした時、後ろからいきなり何かが抱きついてきた。
「いーつきっ、何持ってんのー?」
「…彩兎。あぶねーだろ」
「え?いいじゃん別に~」
まったく…心臓に悪い。
ため息をつくと、彩兎が俺の手に持ってるぬいぐるみを指差して言った。
「え?壱輝、ホッキョクグマ好きなの?」
「…これは、あいつらのお土産を見てただけだ」
ぬいぐるみを元の場所に戻し、キーホルダーのコーナーに向かう。
後ろから彩兎もついてくる。
「あ、ねぇねぇ。これとか可愛くない?」
彩兎が手にしたのは、ペンギンのキーホルダーだ。
「…それ、ペアのやつじゃねーか…」
「え?うん。そーだよ?」
「…そーだよって、誰と付けるんだよ」
こいつ、もう彼氏できたのか?
それとも実隆と仲良しペアか?
首を傾げる俺に、彩兎は当然でしょ?と言うように言った。
「壱輝と付けるに決まってんじゃん」
嬉々として言う彩兎に、俺は諦めに近いため息をついた。
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