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1章 君に剣を捧ぐ
17 失われた記憶
しおりを挟むバーラにはあんなに優しく笑ってた男が、まるで別人ような顔をしている。
悪魔のように残忍な表情なのに、不覚にも魅入られてしまう。
「やっぱり忘れてるんだな……もう一度思い出させてやるよ」
(なんのことだ?)
この男がなにを言っているのかわからない。
ますます混乱するレネを他所に、侵略者は身体から服を剥ぎ取っていく。
後ろ手に縛られているので、完全に脱がすことのできないシャツが腕に纏わりつき、寒くないようにとマトヴェイの母親が用意してくれたヘンリーネックのウールの肌着のボタンを外し、首筋から胸元までを外気に晒した。
「やめろっ……」
その無防備な場所に唇を這わせ、吸われたかと思うと時折歯を立てられた。
いつの間にか赤い痕が散っていた。
(これは……)
レネの記憶のなにかに引っ掛かる。
「いつ見てもうまそうな色をしてる……」
バルトロメイが伸縮性のある生地をめいいっぱい広げると、二つの胸の飾りがギリギリの所で顔を出す。
二つあるそれに左右の人差し指でグリグリと擦って刺激を加えられると、その感覚よりも女のような扱いをされている羞恥心の方が先にたち、目を逸らす。
ここを弄られたのは初めてではない。
女の様に乳房があるわけでもないのに、男たちはなぜこんな小さな胸の粒に執着を見せるのだろうか。
「まだ余裕そうだな」
「ひっ……」
左の乳首を口に含まれると、ゾッと肌が粟立った。
ゴリゴリと肉の粒を軽く歯で挟まれ舌先で刺激を加えて来る。
「くっ……うっ……」
(なんだこれっ!?)
今まで感じたことのない甘い疼痛に、レネは戸惑いを隠せない。
「やっぱり乳首は感じるのか?」
先ほどから、バルトロメイの言動がおかしい。
まるで初めてではないような言い方をする。
そのまま口を離すかと思ったら、今度は反対側の乳首にむしゃぶりついた。
そして先ほどまで嬲られ、濡れそぼっている左側は、親指の腹でパン生地を捏ねるように何度も押しつぶされる。
唾液のぬめりを借りて滑りのよくなった肉の粒が右へ左へと指から逃げ惑う度に、神経の集まった肝心なところに刺激がいかず、レネをもどかしい気持ちにさせた。
「なんだか物足りない顔をしてるじゃないか」
バルトロメイは顔を上げると、ニヤリと笑った。
「……いあっっ」
いきなり強い力で左右の乳首を摘ままれ、少し大きな声を上げてしまう。
「ほらほら、あんまり大きな声を出すなよ。隣のバーラが異変を聞きつけて見に来るかもしれない。女の子から、こんな見苦しい姿を見られていいのか?」
口ではそう言いながらも、乳首を指で摘まんだままグリグリとその小さな肉の粒を苛む。
「……くっ……うぅっ……」
まさか自分が、こんな小さな部位を弄られて、こんなにも冷静さを失うとは思ってもいなかった。
上がりそうになる声を必死に殺して、このなんとも言えない感覚をやり過ごす。
両手が離れ、やっと刺激から解放されたかと思うと、今度は骨盤の上に乗っていた男の尻が太ももへとずれる。
そしてあろうことかズボンのベルトを外しにかかった。
流石にこれはただ事ではない。
「なにをするっ!!」
「騒ぐな」
「ぐっ…………」
冷たい制止の声に、先程バルトロメイから言われたことを思い出す。
ガチャガチャとベルトが外されると、容赦なく太腿までズボンと下着を一緒に下ろされる。
バルトロメイはひんやりと外気に晒された股間を、妙に熱のこもった目で見下ろすと、楽しそうに口元に笑みを浮かべた。
「レネ、少し大きくなってる。女の子みたいに胸で感じたの?」
わざと貶める様な言い様に、レネは唇を噛み締めた。
「……ちがう……」
「でも、ほら」
否定すると、息がかかるほどまで性器に顔を近付けられ、その様子を凝視される。
本当は顔を背けたかったが、急所になにをされるかわからないという不安からか、目を逸らすことができないでいた。
「温泉で男たちも吃驚してたけど、お前のここは今まで見て来た誰よりも綺麗だ」
目を細めながら、少し芯を持ち始めた性器を手で持ち上げて、犬が顔でも舐める様にベロンと根元から舐め上げた。
「うううっ……」
まさかバルトロメイがそんなことをするとは思わず、堪らず大きな声を上げそうになるが、歯を食いしばり顎を反らしてなんとか思いとどまる。
「堪らないだろ? ほら、勃ってきた。気付かれないようにもっと声を抑えないと。あの時は銜えられてアンアン喘いでたからな」
また変なことをこの男は言っている。
「……んんッッ…」
今度は先端にチロチロと蛇のように舌を這わしていたかと思うと、すっぽりと根元まで口に銜えられた。
その強い刺激にグッと腹筋に力が入る。
口淫されるのは初めてではない。
例の未亡人から、妊娠しないようにと根元を縛り射精を封じられたまま童貞を奪われた後、『ご褒美』だと言って、たっぷりと口で嬲られた。
あの時はわけがわからず恐ろしかったが、今回は同じ同性から、それも信頼していた仲間からだ。
心の中は悔しさとやるせなさで一杯なのに、肉体は快感だけを受け取っていた。
「ぁッ……はっ…はっ…っ…」
咥えられている間は、声を漏らさないよう息を詰め、口が離れ刺激の途絶えた瞬間に息を吸い込む。
ふいごの様に横隔膜が上下して、いつの間にか身体には汗が浮いていた。
「頑張ってるじゃないか。でもいつまで続くかな。俺はお前の弱い所をちゃんと知っている」
バルトロメイは趣向を変えて、今度は先端のふくらみ部分だけを口に含むと、鈴口を舌でくじってきた。そうしながらも唇を窄まらせて亀頭の括れを何度も往復されると、この手の経験が少ないレネは持って行かれそうになる。
「ひっ……うぁぁっっっ……」
強烈な快感に視界が飛んで、真っ白になる。
身体を揺すってその快感から逃れようとするが、バルトロメイは一層舌の動きを激しくした。
もう思いっきり喘ぎ声を上げてしまいそうで、横を向いた時に頬に当たる枕に噛みつき、必死に声を殺した。
「うううううううっっっ……」
(……?)
動作が止み、そっと視線を上げると、狼のように舌なめずりするバルトロメイと目が合い、レネは強烈な既視感に襲われた。
「——あ……!?」
自分の胸に散る赤い痕が目に入り、一つの記憶と繋がった。
(そうだ、あれは……虫刺されじゃなかったんだ……)
バスカ・ベスニスでオレクに酒を飲まされた後、レネはすっかり酔ってしまい、次に気が付いた時はバルトロメイから身体の上に乗っかられ股間を銜えられていた。
そして、いかせてくれと自ら泣いて懇願するまで、この男はレネを嬲った。
「やっと思い出したか? あの時のこと」
「……よくもっ!」
怒りで目の前が真っ赤になる。
溢れ出した感情で、身体がガタガタと震えた。
自分にあんなことをしておきながら、この男は友達のように接していたのか。
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