異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

文字の大きさ
9 / 113
第1章 誕生から幼少期

第9話 ジノVS魔族

しおりを挟む
 マリーダ村から離れた森林に、褐色肌の男が不機嫌そうに大きな切り株に腰を下ろし、貧乏揺揺すりをしている。
暗い茶色のをした袖無しの前開きジャケットを羽織り、その下には何も着ておいない。細く鍛えられた肉体が剥き出しになっている。
白髪で短い髪を乱暴に片手で掻き回し、この状況に悪態を吐く。

「なんで俺様が豚供を従えなきゃならねぇんだ……っ!」

 ギリっと歯軋りをするその男。
それは魔族のギースという者だった。
ギースの脇には巨体の影が二つ控えている。
その巨体の影は角を額から二本生やし、鋭い牙を持っている。
獣の腰巻をしたその姿はまさしく鬼のそれであった。
それはオーガ。
魔物の中でもA級に指定されている危険な魔物である。

 ギースは立ち上がり、遠くの気配を探る。
それはオークとハイオークの動向である。
小汚い豚供を軍勢として押し付けられ、少しはマトモな戦力にする為に村々を襲わせ力を蓄えさてきた。
使えない脳筋供は最近ようやく三匹がハイオークに進化した。
だが、その力は俺の側近のオーガには遠く及ばない。
まだまだ村を襲わせ、力を蓄えさせ、より上位の種族に進化させなければ。

 そもそも、こんな状況になった事の発端はあのエルフの里の襲撃が失敗に終わったからだ。
俺の他に二人魔将候補となる魔族がいたのにも関わらず、予想外に手強いエルフのジジイとオヤジ、そして若い女の決死の抵抗によってこちらの被害は甚大なものとなった。
目的の聖樹、ユルダを確保出来ず、魔族二人を失い、使役していた多くの魔物も失った。
死んだ二人の魔族はエルフのジジイとオヤジを道連れにしたが、それでも俺たちの侵略は失敗に終わった。
その失態によって魔将になる事も叶わず、ただの使いっ走りに成り下がってしまった。

 これはその名誉挽回のチャンスなのだ。
もうあのエルフの里にはあの忌まわしいジジイもオヤジもいない。
それならある程度力を付けた軍勢さえあれば、エルフの里を蹂躙出来るはず。
だから早くあの豚供を鍛え上げなければならん。
この村の侵略が終われば、ハイオークもまた増えるはず。
そこに俺がガジリスタから連れてきたオーガ二匹が加われば、今度こそ。



 そんな事を考えていると、こっちに急接近してくる魔力を探知する。
その方向を見ると、迫り来る複数の馬鹿でかい火球が飛んでくる。
俺とオーガは直ぐにその火球を避け、大きく跳躍する。
火球は急に空中で止まると、急激に膨張し、雷を放ちながら大きく爆発する。
爆発に巻き込まれ、雷に触れた木々は融解していく。
その雷はまるで意思を持つかのように此方へと襲いかかる。
虚空移動を行使し、風を纏って加速して宙を跳ね回り、雷を回避する。
その雷の動きは視認がほぼ出来ないが、魔力感知をより強め、その動きを予測する。
しかし、オーガの一匹が雷に捕まり融解してしまう。
思わず舌打ちする。
俺の手駒が減りやがった!クソったれ!

 ようやく周囲の雷が収まり始める。
地面に降り立つ俺とオーガ。
周囲の木々は無くなり、荒れ果てた大地になってしまった。
そして俺達と大きく距離をあけて降り立ったのは一人のローブを纏ったエルフ。
コイツが今の魔法を放ったのか?
まるで、あの里にいたジジイやオヤジみたいじゃねぇか。

「てめぇ、何者だ。
ただのエルフじゃねぇな。
しかも何で里から離れたこんな場所にエルフがいやがる」

 俺が問いかけるとそのエルフは片手を掲げ、口を開く。

「魔族、だな。
そしてオーガが残り一匹。
何をしにこの地に来たのかは知らんが、見逃せる存在ではない。
ここで消えろ」

 その手から風の刃が放たれ襲い掛かってくる。
残されたオーガが腰にさしてあった大鉈を引き抜き、神業の剣戟にて襲い来る刃を弾き飛ばしていく。

「さっきの魔法に比べて随分とお粗末なーーッ!」

 その魔法を嘲笑っていると、遠くにいたエルフがいないくなっていた。
気付いた時にはオーガの目の前に現れ身を屈めている。
エルフが片手を振り上げるのと同時に、その手からは真っ赤な閃光が伸び、そのまま赤い閃光が振り抜かれる。
それを受けようとしたオーガの大鉈も、その身体も閃光が切り裂いた。
否、焼き切ったのである。
俺は辛うじてその熱線を回避したが、髪の毛がジリっと焼き切られるのを感じた。

「オーガもろとも、貴様も切断するつもりだったのだがな」

 振り上げた片手を天に掲げ、俺を睨みつけるエルフ。
その目は何処までも冷たく、まるで深淵を見つめてるかのようだった。

 な、何だコイツ!?

 俺はその場から全力で退避する。
風を纏い、飛翔し、一気に加速する。

 オーガを二匹失った。
もはやこれではエルフの里を攻めるどころではない。
一度態勢を立て直し、オーク供を回収……。
いや、それもどうでもいい。
まずは俺が生きて戻る事だ。
しかし、二度の失敗も続けた俺を、あの人が許すのか?

「考え事か?
随分余裕があるな」

 ギョッとして隣を見ると、俺と併走しているエルフの姿がそこにあった。

「死ねっ!!」

 即座に魔力を練り上げ、地面からまるでトラバサミのように大きな岩の口が広がり、勢い良くエルフを挟み潰す。

 俺はすぐに地面に降り立って、その潰されたエルフを見つめるが、直後にその岩に亀裂が走り出す。
砕け散った岩の中から、暴風を纏ったエルフが飛び出して来る。

 すかさず土魔法を練り上げ、大剣を八つ作り出し、変性させると鋼の大剣に切り替わる。
その大剣が俺の周囲を縦横無尽に切り裂いていく。
荒れ狂う大剣。
これなら近付くことも……。

「近付けない、とでも思ったか?
お前、さっきの私の魔法を見てなかったのか?」

 エルフが片手を掲げ、その手が赤く光り出す。
あの熱線か!?
瞬時に俺は走り出し、更にエルフの足元に魔力を集中させると、土の拳が突き出してその顎を狙い打つ。
が、エルフは頭を僅かに逸らし、拳を避ける。

「まだまだマダァアッ!!」

 俺が声を上げると、その土の拳が手を開く。
そしてエルフをそのまま鷲掴みにする。

「捕まえたぞ、このクソエルフがっ!」

 襲い来る八つの大剣。
しかし、エルフは動じていない。
動じず、その身体から雷が迸る。

 この土の手には強力な魔力も含めてある。
そう簡単には壊せやしない。
そして放さないっ!

「死ねっ!!!」

 俺が叫び、八つの大剣がエルフとそれを掴む土の手ごと切り裂いた。
が、もうエルフの姿はそこに無い。
そこに、爆ぜたような紫の雷を残して。

「死ぬのはお前だ」

 声は俺の真後ろからした。
振り向くと、その身体を雷と一体化しているエルフがいた。
バチバチと雷が周囲に迸る。
こ、コイツは……ッ!
コイツはッ!?

 エルフの雷速の拳が鳩尾に突き刺さり、俺の身体がくの字に折れ曲がる。
そして身体中に電流が駆け巡る。

「アガががぁあっ!」

 響く絶叫。
掴まれる顔面。
そしてエルフが口を開く。

「お前にこれ以上かける時間はない。
終わりだ」

 身体が頭から氷始める。
息が……出来な……い……。

コ……コイ……ツ……何……も……の……。



 薄れゆく意識の中で思い出す。
いつか、あの人が言っていた事を。

 王国にいる魔導騎士のエルフ、其奴にだけは手を出すな、と。
奴の強さは次元が違う。
我々魔将をも凌駕する存在である。
故に、対峙するのであれば、死を覚悟せよ。

 あぁ……コイツがそうだったのか。

 その答えに辿り着くと、芯まで凍った身体にヒビが入り、身体が砕け散ったのだった。
しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

処理中です...