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第4章 少年期後編
第77話 霧の中にあるモノ
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全身を鋭い悪寒が駆け抜け、次いで戦闘の気配を感じた俺は勢いよく立ち上がる。
目線を走らせたのは森の奥。
「シン?」
隣に座っていたリアナはそんな俺を見上げて不思議そうに首を傾げている。
俺は真っ直ぐに森の奥を見つめたままその目を細める。
今……アネッサの闘気や魔力が飛躍的に上がったような……。
だが、不思議な事にその気配は直ぐに消えてしまった。
僅かな時間とは言え、アネッサが戦闘体勢に入ったのは間違いない。
あの方向は……森を抜ける林道の方角。
つまり森の外か、或いはその付近。
そこで何かと出会した?
疑問なのは闘気があれほど大きくなるほどの気配を感じたのに、今は何も感じない事。
それは何故だ?
俺の様子から只ならぬ空気を察してリアナも立ち上がる。
「どうかしたの?」
不安気な声色で尋ねるリアナ。
「……向こうで何かあったかもしれない」
俺は短くそう答え、地面に片手をつける。
瞳を閉じ、魔力を込めて術式を展開させると巨大な魔法陣がシンを中心に広がり出す。
それは瞬く間に聖樹を含めたこの一帯を囲み込む。
そのあまりの規模に、そして瞬時に放出される魔力の高さにリアナは目を見開き、小さく「スゴイ……」と呟く。
「“魔導感知結界”」
そう俺が呟くと魔法陣が一際輝き、地面にスッと消えていく。
「シン、今のは何?」
リアナはキョロキョロと辺りを見回して何事かといった顔付きになる。
「ここで何か大きな魔法を使ったり、魔力を使って何かをしたら、直ぐに俺が感じ取れるように結界を張った。
悪いヤツがあの聖樹を狙ってるらしいからね」
そう言って俺は優しく微笑む。
「用心の為だよ。
備えあれば憂いなし、ってね」
「ソナエ……なに?」
疑問顔のリアナ。
「なんでもないよ。
それで、俺は少し向こうの様子を見てきたい。
リアナは一度里に戻っておいた方が……」
「むー、誤魔化した!
それにシン、さっきの話聞いてた?
シンが危ない目に合うかもしれないなら、私も力になりたいの。
私は側にいるわ」
腰に手を当てて俺の言葉を遮りキッパリと言い切るリアナ。
俺は困ったような顔をして頭を掻く。
どうしたものか……。
ただ確かに、一人で里に行かせるのも危ないっちゃ危ないかもしれない。
まだ俺の近くにいた方が安全と言えば安全……か。
「わかった。
ただ、何があるかはわからない。
リアナの身は絶対に守るけど、リアナも警戒は怠らないで。
それと——」
俺はリアナの肩に片手を置く。
「“五稜魔障壁”」
囁くようにそう唱えると、リアナの全身が淡い光に包まれていく。
リアナはそんな自分の身体を不思議そうに眺めながら「これ、なに?」と尋ねてくる。
「俺の近くにいる限り、この魔障壁がリアナの身を守ってくれる。
よっぽどの威力の魔法でも当たらない限り、傷一つつかないはずだ。
でも少なからず衝撃は感じるだろうから、気をつける事」
そう言って念を押し、リアナの肩から手を離し「行こうか」、と告げる。
「本当に……何でも出来るのね、シン」
リアナは少し儚げに微笑んで俺の後に続いた。
「私は……まだまだ、だね」
後ろを歩くリアナは寂しそうにそう呟いた。
「何も俺と比べる必要は無いんじゃないか?
リアナはリアナなりの努力をしてきたのなら、それで良いんだよ。
目指す場所ってのは、人それぞれだしさ」
「魔法の達人に言われてもね。
凡人の私はじゃ背伸びしても届かない領域にいるんだもん、シンって……」
むー、と唇を尖らせるリアナ。
達人、なのか?俺は。
「達人って言える程、極めてはいない気がするけどね」
「それは余計にへこむなぁ」
ため息をつくリアナ。
俺は内心、まいったな、と思いつつ話を変える。
「……リアナ、少し飛翔して移動するけど、行けそうか?」
俺の問いかけに頷くリアナ。
俺達は空高く舞い上がり、先程の気配を感じた方向へと飛び始める。
「……でも、目指す場所はやっぱりあるかな」
並走するリアナはそう言って真っ直ぐ前を見つめていた。
「シンの隣に立てるように、私はなりたい。
今は全然まだまだだけどね……。
時間がかかっても、いつか……きっと……」
そう迷いなく告げられ、俺は思わず言葉を失う。
その眼差しは、いつか自分もしていたような気もする。
遠く……遥か遠くにある背中を追いかけて、今の俺があるように、或いはリアナも俺の背中に手を届かせる日が来るのかもしれない。
だからね、と続けるリアナ。
「アネッサさんの事がやっぱり羨ましい、かな。
あの人は、シンの隣に立てる資格を持ってるんだよね。
そんな人に、私もなりたい、かな」
俺の隣に立つ資格——。
言いたい事はわかる。
この世界に生まれ落ちて、俺は戦う事が自分の才能とも言える程戦いに身を置き続けている。
そんな俺の側にいる為には、同じように力を持っていなければならない。
そんな戦う力を持っているからこそ、アネッサは俺と常に行動を共に出来るのだ。
俺はリアナの告白を断ったが、リアナの中で未だに俺の存在は特別なままなのだろう。
だが、この先俺を目標にしていたとして……。
もしも、この領域まで足を踏み入れる事が出来たのなら、果たしてそれは彼女の幸せとなるのだろうか?
俺の頭の中で、色んな想いが駆け巡る。
「リアナには、他の道だってあるかもしれないぞ?」
「例えば、どんな?」
ニコリ、と笑うリアナであったが、何か寒気を感じた。
俺が返答に困っていると、リアナは物悲しげに続けた。
「……私が足手まといなのは自覚してるよ。
無茶をするつもりもないし、そもそも無茶も出来ないから。
でもね……。
私はほんの少しでも、何か力になってあげたいだけ。
ただ、それだけだから……」
そう言って笑うリアナ。
その笑顔もまた、やはりどこか物悲し気であった。
「リアナ……」
そんなリアナに何か言おうとすると、リアナが地面を指差した。
「ミーシャさんだ!」
俺もまたすぐにその指が指す方向を見やると木々をぬって駆け抜けるミーシャさんの姿があった。
俺とリアナは互いに顔を見合わせ頷くとミーシャさんのもとへも降下していく。
「ミーシャさん!」
俺は声を上げて空から降り立つと、ミーシャさんはすぐに足を止めた。
「シンッ!!
あなたを探そうと思って里に向かう途中だったの!
あんたから来てくれて助かったわ!」
呼吸を荒くしながらミーシャさんは続ける。
「アネッサがこの先の霧の中に入ったんだけど……。
途端に気配が無くなってしまったの!
私が付いていたのに、不甲斐ない限りよ……」
そう言って片手で顔を覆うミーシャさん。
すぐに俺の後に続いて降りてきたリアナも俺とミーシャさんの様子を見て不安気な表情になる。
俺はミーシャさんに歩み寄り、力強く尋ねる。
「状況を教えて下さい。
僕がなんとかします」
俺はリアナを一旦ミーシャさんに預け、一人アネッサとミーシャさんが向かったであろう場所へと急ぐ。
聞いた話では真っ白な濃霧から奇襲を受け、しかも狙いはアネッサのみだったとの事。
襲撃者を迎え撃つ為に飛び出したアネッサが霧の中へと入った途端、アネッサの気配が消えてしまったらしい。
同時にミーシャさんを守る為でもあり霧の中を追わないようにその身を封じ込めたアネッサの結晶結界も消えてしまったとの事。
つまり、それは完全にアネッサとの魔力の繋ぎが切れたことを意味していた。
それはアネッサの身に何かがあった事に他ならない。
俺は下唇を噛み締めながら速度を上げると、噂の濃霧が見えてきた。
それは真っ白な濃霧ではあるが、強力な魔素を帯びている事も感じ取れた。
つまりこれは自然現象の霧ではない。
何者かに作り出された霧だ。
しかも、アネッサの気配が消えた、という情報から察するに、霧の中に入った者を外部と遮断する性質を持っているのではないだろうか?
ならば、この霧を作り出した者を倒す事が一番の解決策だが……。
こいつを作り出したのが誰なのか、って事だ。
一番怪しいのはシュヴァイン。
だが、アイツじゃなく、他の誰かだった場合、アネッサの救出が遅れるばかり。
なら……中でこの霧の正体を暴き、破壊すりゃ良いッ!
俺は迷い無く霧の中へ歩き始める。
聞いていた話ではこの霧から攻撃をされたそうだが、未だそういった事は無い。
とは言え警戒心を緩めず周囲の気配を探っていると、薄っすらと霧が晴れ始める。
それと同時に空の色や、周りの景色が一変している事に気付く。
空は真っ赤な色をして、辺りは森には変わりはないが先程の木々とはまるで種類が異なる黒く曲がりくねった木が立ち並んでいる。
明らかにさっきまでの森とは……世界とは別である。
そして、探していたアネッサの気配もまた感じ取れるようになる。
「アネッサ——ッ」
思わず駆け出そうとした時、水溜りを踏みつけ飛沫が舞った。
そして俺はすぐに足を止める。
これは……水溜りじゃない……。
鼻に付く生臭い匂い。
周囲に転がる無数の鎧を着た人間の亡骸。
それらには細長い剣が幾本も突き刺さっており、手足や首がバラバラになってる者もいた。
つまり……辺り一面のこの水溜りは、血溜まりだ。
「なん……だ、ここ?」
そして更に奥へと視線を走らせると、そこには一つの真新しい墓石があった。
そこは急に森が途切れたような空間になっており、墓石の他に何も無いひらけた場所でもある。
その墓石の前には、白銀に輝く一本のエストックが突き刺さっていた。
その白銀の刃すら、真っ赤な陽の光を浴びて血に染まったようなか赤色に見えた。
再度アネッサの気配を探ると、まだここから距離があるのがわかった。
おまけに力強い闘気と魔力が放たれていることから、現在戦闘状態真っ只中のようだ。
しかしそれはアネッサがまだ生きている事を意味している。
あの墓石からは何か異様なモノを感じたが、それよりも今はアネッサと合流する事だ。
俺は再び走り出し、アネッサのもとへと向かった。
目線を走らせたのは森の奥。
「シン?」
隣に座っていたリアナはそんな俺を見上げて不思議そうに首を傾げている。
俺は真っ直ぐに森の奥を見つめたままその目を細める。
今……アネッサの闘気や魔力が飛躍的に上がったような……。
だが、不思議な事にその気配は直ぐに消えてしまった。
僅かな時間とは言え、アネッサが戦闘体勢に入ったのは間違いない。
あの方向は……森を抜ける林道の方角。
つまり森の外か、或いはその付近。
そこで何かと出会した?
疑問なのは闘気があれほど大きくなるほどの気配を感じたのに、今は何も感じない事。
それは何故だ?
俺の様子から只ならぬ空気を察してリアナも立ち上がる。
「どうかしたの?」
不安気な声色で尋ねるリアナ。
「……向こうで何かあったかもしれない」
俺は短くそう答え、地面に片手をつける。
瞳を閉じ、魔力を込めて術式を展開させると巨大な魔法陣がシンを中心に広がり出す。
それは瞬く間に聖樹を含めたこの一帯を囲み込む。
そのあまりの規模に、そして瞬時に放出される魔力の高さにリアナは目を見開き、小さく「スゴイ……」と呟く。
「“魔導感知結界”」
そう俺が呟くと魔法陣が一際輝き、地面にスッと消えていく。
「シン、今のは何?」
リアナはキョロキョロと辺りを見回して何事かといった顔付きになる。
「ここで何か大きな魔法を使ったり、魔力を使って何かをしたら、直ぐに俺が感じ取れるように結界を張った。
悪いヤツがあの聖樹を狙ってるらしいからね」
そう言って俺は優しく微笑む。
「用心の為だよ。
備えあれば憂いなし、ってね」
「ソナエ……なに?」
疑問顔のリアナ。
「なんでもないよ。
それで、俺は少し向こうの様子を見てきたい。
リアナは一度里に戻っておいた方が……」
「むー、誤魔化した!
それにシン、さっきの話聞いてた?
シンが危ない目に合うかもしれないなら、私も力になりたいの。
私は側にいるわ」
腰に手を当てて俺の言葉を遮りキッパリと言い切るリアナ。
俺は困ったような顔をして頭を掻く。
どうしたものか……。
ただ確かに、一人で里に行かせるのも危ないっちゃ危ないかもしれない。
まだ俺の近くにいた方が安全と言えば安全……か。
「わかった。
ただ、何があるかはわからない。
リアナの身は絶対に守るけど、リアナも警戒は怠らないで。
それと——」
俺はリアナの肩に片手を置く。
「“五稜魔障壁”」
囁くようにそう唱えると、リアナの全身が淡い光に包まれていく。
リアナはそんな自分の身体を不思議そうに眺めながら「これ、なに?」と尋ねてくる。
「俺の近くにいる限り、この魔障壁がリアナの身を守ってくれる。
よっぽどの威力の魔法でも当たらない限り、傷一つつかないはずだ。
でも少なからず衝撃は感じるだろうから、気をつける事」
そう言って念を押し、リアナの肩から手を離し「行こうか」、と告げる。
「本当に……何でも出来るのね、シン」
リアナは少し儚げに微笑んで俺の後に続いた。
「私は……まだまだ、だね」
後ろを歩くリアナは寂しそうにそう呟いた。
「何も俺と比べる必要は無いんじゃないか?
リアナはリアナなりの努力をしてきたのなら、それで良いんだよ。
目指す場所ってのは、人それぞれだしさ」
「魔法の達人に言われてもね。
凡人の私はじゃ背伸びしても届かない領域にいるんだもん、シンって……」
むー、と唇を尖らせるリアナ。
達人、なのか?俺は。
「達人って言える程、極めてはいない気がするけどね」
「それは余計にへこむなぁ」
ため息をつくリアナ。
俺は内心、まいったな、と思いつつ話を変える。
「……リアナ、少し飛翔して移動するけど、行けそうか?」
俺の問いかけに頷くリアナ。
俺達は空高く舞い上がり、先程の気配を感じた方向へと飛び始める。
「……でも、目指す場所はやっぱりあるかな」
並走するリアナはそう言って真っ直ぐ前を見つめていた。
「シンの隣に立てるように、私はなりたい。
今は全然まだまだだけどね……。
時間がかかっても、いつか……きっと……」
そう迷いなく告げられ、俺は思わず言葉を失う。
その眼差しは、いつか自分もしていたような気もする。
遠く……遥か遠くにある背中を追いかけて、今の俺があるように、或いはリアナも俺の背中に手を届かせる日が来るのかもしれない。
だからね、と続けるリアナ。
「アネッサさんの事がやっぱり羨ましい、かな。
あの人は、シンの隣に立てる資格を持ってるんだよね。
そんな人に、私もなりたい、かな」
俺の隣に立つ資格——。
言いたい事はわかる。
この世界に生まれ落ちて、俺は戦う事が自分の才能とも言える程戦いに身を置き続けている。
そんな俺の側にいる為には、同じように力を持っていなければならない。
そんな戦う力を持っているからこそ、アネッサは俺と常に行動を共に出来るのだ。
俺はリアナの告白を断ったが、リアナの中で未だに俺の存在は特別なままなのだろう。
だが、この先俺を目標にしていたとして……。
もしも、この領域まで足を踏み入れる事が出来たのなら、果たしてそれは彼女の幸せとなるのだろうか?
俺の頭の中で、色んな想いが駆け巡る。
「リアナには、他の道だってあるかもしれないぞ?」
「例えば、どんな?」
ニコリ、と笑うリアナであったが、何か寒気を感じた。
俺が返答に困っていると、リアナは物悲しげに続けた。
「……私が足手まといなのは自覚してるよ。
無茶をするつもりもないし、そもそも無茶も出来ないから。
でもね……。
私はほんの少しでも、何か力になってあげたいだけ。
ただ、それだけだから……」
そう言って笑うリアナ。
その笑顔もまた、やはりどこか物悲し気であった。
「リアナ……」
そんなリアナに何か言おうとすると、リアナが地面を指差した。
「ミーシャさんだ!」
俺もまたすぐにその指が指す方向を見やると木々をぬって駆け抜けるミーシャさんの姿があった。
俺とリアナは互いに顔を見合わせ頷くとミーシャさんのもとへも降下していく。
「ミーシャさん!」
俺は声を上げて空から降り立つと、ミーシャさんはすぐに足を止めた。
「シンッ!!
あなたを探そうと思って里に向かう途中だったの!
あんたから来てくれて助かったわ!」
呼吸を荒くしながらミーシャさんは続ける。
「アネッサがこの先の霧の中に入ったんだけど……。
途端に気配が無くなってしまったの!
私が付いていたのに、不甲斐ない限りよ……」
そう言って片手で顔を覆うミーシャさん。
すぐに俺の後に続いて降りてきたリアナも俺とミーシャさんの様子を見て不安気な表情になる。
俺はミーシャさんに歩み寄り、力強く尋ねる。
「状況を教えて下さい。
僕がなんとかします」
俺はリアナを一旦ミーシャさんに預け、一人アネッサとミーシャさんが向かったであろう場所へと急ぐ。
聞いた話では真っ白な濃霧から奇襲を受け、しかも狙いはアネッサのみだったとの事。
襲撃者を迎え撃つ為に飛び出したアネッサが霧の中へと入った途端、アネッサの気配が消えてしまったらしい。
同時にミーシャさんを守る為でもあり霧の中を追わないようにその身を封じ込めたアネッサの結晶結界も消えてしまったとの事。
つまり、それは完全にアネッサとの魔力の繋ぎが切れたことを意味していた。
それはアネッサの身に何かがあった事に他ならない。
俺は下唇を噛み締めながら速度を上げると、噂の濃霧が見えてきた。
それは真っ白な濃霧ではあるが、強力な魔素を帯びている事も感じ取れた。
つまりこれは自然現象の霧ではない。
何者かに作り出された霧だ。
しかも、アネッサの気配が消えた、という情報から察するに、霧の中に入った者を外部と遮断する性質を持っているのではないだろうか?
ならば、この霧を作り出した者を倒す事が一番の解決策だが……。
こいつを作り出したのが誰なのか、って事だ。
一番怪しいのはシュヴァイン。
だが、アイツじゃなく、他の誰かだった場合、アネッサの救出が遅れるばかり。
なら……中でこの霧の正体を暴き、破壊すりゃ良いッ!
俺は迷い無く霧の中へ歩き始める。
聞いていた話ではこの霧から攻撃をされたそうだが、未だそういった事は無い。
とは言え警戒心を緩めず周囲の気配を探っていると、薄っすらと霧が晴れ始める。
それと同時に空の色や、周りの景色が一変している事に気付く。
空は真っ赤な色をして、辺りは森には変わりはないが先程の木々とはまるで種類が異なる黒く曲がりくねった木が立ち並んでいる。
明らかにさっきまでの森とは……世界とは別である。
そして、探していたアネッサの気配もまた感じ取れるようになる。
「アネッサ——ッ」
思わず駆け出そうとした時、水溜りを踏みつけ飛沫が舞った。
そして俺はすぐに足を止める。
これは……水溜りじゃない……。
鼻に付く生臭い匂い。
周囲に転がる無数の鎧を着た人間の亡骸。
それらには細長い剣が幾本も突き刺さっており、手足や首がバラバラになってる者もいた。
つまり……辺り一面のこの水溜りは、血溜まりだ。
「なん……だ、ここ?」
そして更に奥へと視線を走らせると、そこには一つの真新しい墓石があった。
そこは急に森が途切れたような空間になっており、墓石の他に何も無いひらけた場所でもある。
その墓石の前には、白銀に輝く一本のエストックが突き刺さっていた。
その白銀の刃すら、真っ赤な陽の光を浴びて血に染まったようなか赤色に見えた。
再度アネッサの気配を探ると、まだここから距離があるのがわかった。
おまけに力強い闘気と魔力が放たれていることから、現在戦闘状態真っ只中のようだ。
しかしそれはアネッサがまだ生きている事を意味している。
あの墓石からは何か異様なモノを感じたが、それよりも今はアネッサと合流する事だ。
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