異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第4章 少年期後編

第83話 もう一つの世界

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「……貴方がたを力尽くでここに留まらせるのはどうやら私には出来そうもありません。
降参するとしましょう」

 そう言って両手を挙げるシャーロット。

「あっさり引き下がるんだな」

「ここはあなた方を閉じ込める事を目的とした牢獄ですから。
処刑場とは違います」

 そう言ってフッと笑うシャーロット。

「敵対する気がないのなら、ここから出してもらえますか?
そうしないというのなら、あらゆる方法でこの結界を破壊するまでですが」

 顔に似合わず野蛮な事を言うアネッサである。
俺は思わず苦笑いしつつ、片手を上げてそれを制する。

「落ち着け、アネッサ。
出たい気持ちは勿論山々だけれど……。
その前にアンタと話がしたい。
シュヴァインの事や、アンタのことも。
話す気がないなら、アネッサの言う通りあらゆる方法を試してここからお暇するさ」

 最後の言葉に凄みを持たせてそう伝えると、シャーロットは瞳を閉じて頷いた。

「……正直、ここを荒らされるのはあまり良い気はしません。
それに、確かに貴方がたならばここから出る力はあるのでしょう。
で、あるならば……聞きたい事に答えますよ。
それで時間を稼ぐ事にします」

 皮肉交じりにシャーロットはそう告げた。

「そりゃ助かるよ。
……アンタ達は、どんな世界から来たんだ?」

 その質問に、シャーロットはしばし押し黙り、遠い目をして口を開く。

「……人間の死体を、ここで見ませんでしたか?」

 シャーロットの問い掛けに俺とアネッサは顔を見合わせ互いに頷く。

「えらく凄惨な死体を見たぞ。
手足がバラバラになって血の海になっていた」

 俺は顔をしかめながらそう言うと、その言葉にシャーロットは頷く。

「あれは私の記憶です。
私が最期に見た光景とも言えます。
そしてこの場所は、アーヴァインと私の最後の別れの場所でもある」

「最後の……別れ?」

「私達エルフの民は、ある日を境に人族によってその命を狙われるようになりました。
……いえ、言い方が少々甘いですね……。
あれはただの虐殺です。
何処からそのような噂が出たのかはわかりませんが、老いを知らない私達の種族の血は不老不死の秘薬に使えると言われていたそうです。
無論、そんな事はありませんが」

「虐殺……」

 隣のアネッサが小さく呟く。

「えぇ、それは酷いものでしたよ。
私達エルフの民からすれば、それは地獄のような日々でした。
私やアーヴァインのように、“霊装召喚”を扱える者達が抗う為に人間達と争いましたが、結果は惨憺さんたんたるものでした……。
多くの同胞を失い、むしろエルフは危険視され、種族そのものを根絶やしにするかのように虐殺が激しさを増したのです。
私やアーヴァインは仲間を従えてしばらくは逃げ延びていましたが、一人また一人と仲間は捕まって殺されていきました」

 淡々と語るシャーロットであったが、その内容はあまりに重過ぎた。

 ……シュヴァインの人間に対する異常なまでの敵意はそこにあったのか。

 俺はギリっと歯軋りして問いかける。

「他種族だから、つっても、そんな虐殺行為が許されるのかよ?
いや、許されないはずだ!
その世界の人間だって、誰かそんな悪行を止めようとする奴はいなかったのか!?」

 その俺の反応が意外であるかのような顔をして、シャーロットは優しく微笑んだ。

「……もしかしたら、あなたのような事を考えた人間もいたのかもしれません。
けれど、私は……私達はそのような存在に出会える事は無かった。
私達を迫害していた帝国の力はあまりに大きく、そして絶対的でもありました。
人間は勿論、エルフ以外の他種族も口出しは出来なかったのでしょう。
そんな事をすれば、次はその種族が対象になり得るのですから」

「——ッ!!」

 俺はそれを聞いて拳を握り締める。
そんな俺を一瞥し、シャーロットは歩き出し、「付いてきてください」と一言告げる。
アネッサは訝し気にそれを見つめていたが、俺が無言で頷くとアネッサもまた頷いて歩き出した。

「墓石を見ましたか?」

 シャーロットは真っ直ぐ前を見たまま尋ねてくる。

「あぁ、見た。
文字は読めなかったが、あれは誰の——」

「私のです」

 俺の言葉を遮ったその返事に、俺とアネッサは思わず言葉を失う。

「この結界で作り出された世界は、私の魂から引き抜いた僅かな記憶とアーヴァインの記憶で作り出されたもの。
あの墓石は彼が見た記憶でしょう。
……彼は私の死に際、側にはいられませんでした。
私は彼と仲間を逃がす為に、囮となって人間達と死ぬまで戦い続けましたから。
そして私が死んで幾日も経ち、朽ち果てた私の身体を彼があの墓に埋葬したそうです。
私が使っていた剣と共に」

 何も言葉を発せられらない俺達にシャーロットは続ける。

「先程、私とアーヴァインはどんな関係か、と問われましたね?
彼は私の想い人ですよ。
彼もまた、そうであると思っていますが、私達が恋仲になる事は叶いませんでした。
そのような余裕さえ、私達には無かったのです」

 その言葉に、俺とアネッサは言葉を失う。
自分の慕い人が無残に死に、朽ち果てたその亡骸を埋葬する事がどれ程残酷か。
そして大切な者達を失う事がどれ程身を引き裂くような苦しみと辛さを伴うのか。
それはきっと、俺はおろかアネッサですら想像を超えるものであるかもしれない。
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