異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第4章 少年期後編

第85話 最後の結界

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※注意:暴力的でショッキングな表現があります※







 真っ白な霧の中を抜けると真っ暗な森へと辿り着いた。
それは知っているエルフの里の森である。
既に日が沈み、夜になっている。
振り返ればあの結界である白い濃霧が広がっている。

「戻って……これた?」

「そのようですね」

 俺の呟くような問いかけにアネッサが答える。
すると、俺とアネッサが同時にある方向へと顔を向ける。

「アネッサ、この魔力は——ッ!」

「どうやら急いだ方が良さそうです。
シン様、私に乗ってください」

 凄まじい魔力が解き放たれているのを感じた俺達。
それに加え、俺がここにきた事で聖樹ユルダに張っていた結界が警報を俺に送り付けてくる。
俺がここに戻った事でまた魔力の繋がりが結界が戻ったのだろう。
そしてあそこで何かする奴は一人しかいない。

 俺は即座に銀狼へと変貌するアネッサに飛び乗ると凄まじい速度で加速していく。

「シュヴァイン——ッ」

 俺は絞り出すようにその名を力強く声に出した。




 聖樹ユルダへと辿り着いたアネッサから俺は飛び降り、アネッサも人型へと即座に戻る。
そして聖樹ユルダに——否、その大樹を守っている結界に片手を触れたシュヴァインを俺達は鋭く睨みつける。

「……君達が僕の“幻霧の結界”に入ったのは気付いていたよ。
お陰で邪魔される事もなく、随分作業は捗ったよ」

 俺達には目もくれず、背を向けたまま声をかけてくるシュヴァイン。

「その樹から離れろ、シュヴァイン」

 俺が鋭く警告する。

「何故、君に言われた事を従わなければならないのか。
まして忌まわしき人間の君に。
君達は——」

 ゆっくりと振り返るシュヴァインの冷たい眼差しが俺とアネッサに突き刺さる。

「そこで黙って見ていればいい」

 その言葉を皮切りに、シュヴァインの両眼から一際強い魔力が放たれる。
直後、アネッサと俺の動きがピタリと止まる。
しかし、俺は少しづつ身体を動かし始める。

「そ……れは……もう、俺には——ッ!」

 身体中に力を込め、動かなくなった身体を無理矢理動かしていく。
それを見たシュヴァインは顔をしかめる。

「……本当に不愉快な奴だ……。
耐性が上がるのが早すぎる。
だが、自由になる前に決着はつくさ」

 そう言ってシュヴァインは目の前の聖樹ユルダを見つめる。

「この大樹を守っていた結界は本当に厄介な代物だったよ。
解析に時間が随分とかかってしまった。
なにせ、強力な結界が二重になっているんだ。
表面の層には魔法や物理の力を吸収し、衝撃を遮断する結界。
それを突き抜けても二層目には反射の結界が張られている。
万が一、力押しで一層目を破れば反射の結界の力で術者は手痛い目に合うだろう」

 関心したように言うシュヴァイン。

「たが、幸い結界術は僕の得意分野でね。
残念ながら、僕にかかれば——」

 シュヴァインが突き出した手を力強く握り締めると、透明な何かが激しい音を立てて砕け散る。

「なんて事はない」

 満足気な顔をしたシュヴァインがこちらを見てくる。
しかし、その顔色が一変する。

「いや、待て……。
まさかッ!もう一層あったのか!?」

 慌てて振り返るシュヴァインの足元を真っ黒い影が広がっていく。
それはシュヴァインを取り込み、俺やアネッサまでも取り込んでしまう。

「どこまで用心深い奴なんだッ!
ジノ・オルディールッ!!」

 叫ぶような言葉だけが響き、俺達は闇に飲まれていく。



暗い。
何も見えない。
どこまでも、闇。
どこまでも、どこまでも——。





「さて、エルフの青年よ。
いや……見た目は青年でも、歳はいくつなのかはわからんな。
まぁそれは何でもいい。
とにかく、仲間の居場所は何処だ?」

 声がする。
誰の声だ?

「………」

「だんまりか。
そうだよなぁ……。
教えたくないよな。
わかるよ。
教えたら、また仲間が殺されちまうもんな。
そんな裏切りは出来ない。
そうだろう?」

 誰の声だ?
なんだかとても不愉快な声だ。
冷たくて、小馬鹿にしているようで……なのに、どこか——。

「なら、これで少しは話す気になるか?」

 とても、楽しそうだ——。

「アァアアアァァッ!!」

 耳をつんざくような絶叫。
途端に広がる景色。
それは白黒の世界。
隣を見ればアネッサがいる。
アネッサも俺に気がついているが、未だに動けない様子。
俺達は、目の前の情景をただ息を飲んで見つめる事しか出来なかった。

 目の前には、一人のエルフが壁に鎖に縛られ張り付けになっている。
今しがた、片手を切り落とされたエルフの青年が絶叫して四肢を拘束した鎖を激しく揺らす。
そのエルフの青年の顔には、見覚えがあった。
あれは……ッ!

「シー……。
静かに。
落ち着け……落ち着くんだ、シー……。
いいか、片手が無くなっただけだ」

 その目の前にいるのは小太りの軍服を着た中年の男だった。
エルフの青年の頭を両手で抑え、その視線を無理やり合わせる。

「落ち着け、いいな?
深呼吸だ。
死ぬような怪我じゃない」

 その中年の男は宥めるように声をかける。
その脇には無表情で血の滴る鉈を握った大男が控えていた。
エルフの青年は嗚咽を漏らしながら項垂れる。

「さて……。
少しは落ち着いたか。
どうだ。
話す気になったか?」

「……地獄に……落ちろ……クソ野朗……」

 息も絶え絶えに、弱々しくそう吐き捨てるエルフの青年。

「……そうか。
どうやら……お前は、なかなか根性がある。
ただ、他にもいたぞ、お前みたいな奴が。
痛めつけても口を割らない奴なんだ。
面倒なんだよ、正直な」

 そう言って中年の男はエルフの青年の顎を荒々しく掴み、顔を上げせる。

「だが、お前のような奴は、自分の痛みに耐えられても、他の者が傷つくのは耐え難いらしい」

 そう言ってニヤリと笑い、離れる中年の男。

「待て……。
おい……何を……するつもりだ……」

 中年の男は脇に控えた大男に目で合図を送ると大男の姿が奥に消えていく。

「何をするつもりだ……」

 エルフの青年はもう一度問いかける。
中年の男は答えずにその目の前に椅子を持ってきて座り、足を組む。

「……話したくなったら、いつでも言えよ」

 欠伸をしながらそう告げる中年の男。
そして再び姿を現わす大男。
大男は冷たい石畳の床に別のエルフの男を投げ捨てる。
それを見たエルフの青年は目を見開く。

「カイル……ッ!
お前、みんなと逃げたんじゃ……」

 絶望の顔に染まるエルフの青年。
カイルと呼ばれた男は怯えた瞳で、縋るような眼差しでエルフの青年を見る。

「アーヴァイン……ッ!
皆は……もう、俺以外は……」

 その言葉を受け、エルフの青年は呆然となる。
小さく口を開き、「そんな……嘘だ……」と呟いて……。

「お前らを会話させる為に連れて来たんじゃあないんだぞ。
さて、それじゃ、から行くか」

 中年の男は淡々と告げる。
すると、大男が細長いアイスピックのような長い鉄の針を握り締める。

「待て……。
お前ら、何を……何をするつもりだッ!?」

「さっき言っただろう。
話したくなったら、話すといい。
やれ」

 大男が無理やりカイルと呼ばれた男を仰向けにさせる。
カイルは縛られた手足を激しくバタつかせる。

「やめ……やめてくれ……!
た、助けて……!
助けてくれ、アーヴァインッ!!」

 叫ぶカイル。
それを邪悪な笑みを浮かべて見つめる中年の男。

「頼む……ッ!
やるなら俺にやれッ!
どうして……こんな……。
頼むから……やめて……くれ……」

 振り上げられる鉄の針。
中年の男は未だ薄ら笑いを浮かべてその光景を眺めている。

「やめろ……。
やめてくれッ!」

 そして、その鉄の針が、勢いよく振り下ろされる。
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