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第22話~彩音のセンス~
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第22話~彩音のセンス~
目覚ましが鳴るより早く目が覚めた。時計は6時30分。いつもなら二度寝するところだけど今日は違う。
「酒場建設だ~!」
布団を蹴飛ばして起き上がる。鏡に映る金髪ロングに満足しながらギャルメイクはバッチリだけど今日の服装は……作業用のジャージにした。昨日まではショートパンツとキャミソールだったけど
「危ない」
と海斗に注意されたのだ。
「でもさ~」
ブツブツ言いながら窓を開ける。朝日が眩しい。向かいの部屋のマフユは既に出発したようだ。
「私も行こっと!」
準備を整えて玄関に向かう途中、キッチンから良い匂いが漂ってきた。
「おはよう彩音」
「海斗~!」
彼が朝食の準備をしていた。シンプルなエプロン姿が意外と似合っている。
「今日も早いね」
「そう?」
彼は涼しい顔で卵を割っている。昨日の夜遅くまで作業していたはずなのに疲れた様子もない。
「何作ってるの?」
「スクランブルエッグ」
「美味しそう~!」
思わず近づくと海斗が少し照れたように笑った。
「まだ食べるなよ」
「え~?」
「作業場に持っていく弁当だ」
「ほんと!?」
嬉しさのあまり飛び跳ねる。海斗が作ったお弁当なんて最高すぎる!
「ありがと~!」
「気にするな」
彼は照れ隠しのように顔を背けた。その仕草が可愛くて思わず笑ってしまう。
「ねえねえ!」
「何だ?」
「今日のお昼は何?」
彼が少し考えてから答える。
「サンドイッチ」
「やったー!」
歓声を上げると海斗が呆れたように笑った。
「そんなに喜ぶことか?」
「当たり前じゃん!」
朝食を手早く済ませて準備完了。バッグにお弁当箱を入れて玄関に向かう。
「行くよ~!」
「待て待て」
海斗が追い掛けてきた。手には紙袋を持っている。
「これ持っていけ」
「何これ?」
「水筒だ」
「わお!」
受け取った瞬間の重みに驚く。中身はたっぷりのお茶のようだ。
「喉乾くからな」
「やっぱり優しい~!」
「うるさい」
彼は照れ隠しに咳払いをして先に歩き出した。その背中を見ながら密かに決意する。
「今日も頑張ろう!」
---
村の中央広場に到着すると既に多くの人々が集まっていた。昨日完成した基礎工事の周りには木材や石材が整然と積まれている。
「おはようございます!」
「おはよう彩音ちゃん!」
村人たちの笑顔に迎えられて気分が良くなる。中でも特に目を引いたのが……
「マフユさん!」
彼女は既に作業服に着替えて木材の選定をしていた。銀髪が朝日に輝いて神秘的に見える。
「おはよう」
「早いね~!」
「当然だ」
「流石~!」
二人で立ち話をしていると遠くから海斗の声が聞こえてきた。
「皆揃ってるか?」
「海斗さん!」
「おはようございます!」
村人たちが一斉に挨拶する。彼は笑顔で手を振って応えた。
「今日から壁の組み立てに入る。まずは配置確認からだ」
彼が設計図を広げる。マフユが側に寄って真剣に見入っている。その光景が何故か少し寂しい。
「ねえねえ海斗!」
「どうした彩音?」
「私の担当は?」
「ああ」
彼は設計図の一部を指差した。
「ここからここの内装を任せたい」
「おお~!」
指された範囲は思ったより広い。しかも重要な部分だ。
「大丈夫か?」
「任せて!」
「よし」
彼が頷く。その信頼が嬉しくて自然と笑顔になる。
「マフユと一緒に担当区域を確認してきてくれ」
「了解!」
マフユと共に現場へ向かう。基礎工事の上で見下ろすと村全体が見渡せる。
「すごい景色だね~」
「ああ」
マフユが静かに同意する。珍しく素直な反応だ。
「それで……」
「ん?」
「具体的にどうしたい?」
彼女の質問に腕を組んで考える。ギャルらしくキラキラした空間にしたいけど、実用性も重要だ。
「天井は高くして窓も大きめに」
「了解」
「床は温かみのある木目調」
「わかった」
「壁は……」
言いかけて迷う。単純な塗装ではつまらない。
「模様を入れたいな~」
「どのような?」
「こう……星空みたいな……」
説明に苦労しているとマフユが頷いた。
「星空の投影か」
「そうそう!」
理解力の高さに感心する。彼女はすぐに設計図に書き込み始めた。
「それと照明は?」
「間接照明で雰囲気を出したい」
「なるほど」
マフユが頷く。彼女の頭脳明晰さが頼もしい。
「他には?」
「えっと……」
「迷ったら率直に言えばいい」
「うん!」
勇気づけられて色々とアイデアを出し合う。気づけば二人とも熱中していた。
「これなら彩音らしい空間になるな」
「やったー!」
褒められて嬉しくなる。マフユはいつになく優しい表情だった。
「早速準備に取り掛かろう」
「うん!」
二人で必要な材料リストを作成する。その途中で海斗が近づいてきた。
「順調か?」
「バッチリ!」
「良かった」
彼が微笑む。その表情にドキッとしつつも平静を装う。
「じゃあ早速作業開始だ」
「了解!」
---
内装担当となった私とマフユは早速作業を開始した。まず床から着手する。
「この板を使うのか?」
「うん!温かみがあって可愛い!」
「わかった」
マフユが器用に工具を使い始めると私も負けじと作業に取り掛かる。慣れない作業で苦戦しつつも何とか形になっていく。
「彩音」
「何?」
「手元が危ない」
「え?」
指摘されて気づく。無意識に力を入れすぎていた。
「ありがとう!」
「気をつけろ」
彼女の気遣いが嬉しくて笑顔になる。こういう優しさが実は多い。
「マフユって意外と面倒見いいよね」
「……うるさい」
「照れなくてもいいのに~」
からかうと彼女は仏頂面になった。その反応が可愛くてさらに笑ってしまう。
「集中しろ」
「はーい!」
二人で黙々と作業を続ける。途中で海斗が差し入れを持ってきてくれた。
「水分補給忘れずに」
「サンキュー!」
「ありがとう」
冷たい飲み物が喉に染みる。その横で海斗が別の作業を始める。彼のクラフト能力は相変わらず見事だ。
「あそこ見てマフユ!」
「……またか」
「またって何よ~」
「いつも見惚れている」
「え?」
思わず動きが止まる。マフユの冷静な指摘に顔が熱くなる。
「そ……そんなことないし!」
「そうか?」
彼女がニヤリと笑う。珍しい表情に動揺してしまう。
「も~!」
慌てて作業に戻る。しかし視界の端では常に海斗の姿を追ってしまっていた。
---
昼食時。海斗が用意してくれたお弁当を食べながら皆で談笑する。
「彩音ちゃんのデザイン素敵だね!」
「ほんと!?」
「ええ!すごくオシャレよ」
「やったー!」
村のおばちゃんたちに褒められて鼻が高い。隣に座るマフユも静かに頷いている。
「マフユさんの協力あってこそですよ~」
「私は基本的な部分を手伝っただけだ」
「謙遜しないで~!」
食事を終えると午後の作業に向けて再び配置につく。マフユと話し合った結果、内装のコンセプトが固まってきた。
「それじゃあ早速……」
意気込んで工具を持ち上げた瞬間、
「ストップ!」
海斗の声が響いた。全員が動きを止める。
「どうしたの?」
「ちょっと待て」
彼が駆け寄ってくる。何故か深刻な表情だ。
「どうした?」
「実は……」
彼が小さく息を吸う。
「建物の重心に問題があるかもしれない」
「え!?」
衝撃的な発言に空気が凍りつく。マフユも眉をひそめた。
「どういうこと?」
「基礎工事の時点で気づくべきだった」
海斗が悔しそうに拳を握る。
「中央部が若干歪んでいる」
「修正できますか?」
「できる……はずだ」
彼の返答が少し弱々しい。普段の自信に満ちた態度とは異なる。
「私が手伝う」
「マフユ……」
「当然だ」
彼女が静かに立ち上がる。私も慌てて声を上げた。
「私も何かできることある!?」
「危険だ」
「平気だよ!」
海斗の制止を振り切るように前に出る。マフユが微かに笑った。
「助かる」
「任せて!」
三人で緊急対策会議が始まった。海斗が図面を広げて問題箇所を説明する。
「ここを補強すれば……」
「しかし資材が足りない」
「私が取ってくる!」
即座に宣言する。海斗が驚いたように私を見る。
「彩音……」
「任せてよ!」
無理に明るく振る舞う。実は怖かったけれど二人の役に立ちたかった。
「よし……頼む」
「うん!」
村の倉庫へ走り出す。途中で何度も転びそうになりながらも必死に走った。目的の資材を見つけて持ち上げる。
「重い……」
しかし諦めない。これが自分にできる唯一の貢献だから。
「もう少しだ……」
---
数十分後。汗だくで現場に戻ると海斗とマフユが心配そうな顔で待っていた。
「彩音!」
「持ってきたよ!」
「無理するな!」
海斗が慌てて駆け寄ってくる。その表情に胸が締め付けられる。
「大丈夫!」
息を切らせながら笑顔を作る。彼が安堵したように息を吐いた。
「ありがとう」
「うん!」
すぐに修理作業が始まる。三人で協力して問題箇所を補強していく。徐々に不安定だった場所が安定してきた。
「もう大丈夫そうか?」
「ああ」
海斗が頷く。その表情に安堵の色が浮かんでいる。
「良かった~!」
「彩音のおかげだ」
「マフユもありがとう!」
三人で顔を見合わせて笑う。その瞬間、不思議な一体感を感じた。
「改めて」
海斗が静かに言う。
「本当に助かった」
「こちらこそ!」
「感謝する」
「これからも頑張ろうね!」
三人の誓いが新たな絆を作った気がした。
---
夕方。作業が一段落して皆で片付けに入る。疲れ果てて地面に座り込むと海斗が隣に腰掛けた。
「疲れたか?」
「うん……でも楽しかった!」
「そうか」
彼が優しく微笑む。その表情にドキッとする。
「お前のおかげだ」
「え?」
「内装案も、今回のトラブル時も」
「そんなこと……」
「あるよ」
彼が真剣な眼差しを向ける。その瞳に吸い込まれそうになる。
「ありがとう」
「こちらこそ!」
笑顔で答える。心臓の鼓動が速くなっていく。
「さて」
「うん?」
「帰るか」
「うん!」
二人並んで歩き出す。西陽が長い影を落としている。
「明日も早いから早めに寝よう」
「そうだね~」
何気ない会話が幸せだった。この時間が永遠に続けばいいのにと思う。
「あ!」
「どうした?」
「明日もお弁当作ってくれる?」
「もちろんだ」
「やったー!」
嬉しさのあまり飛び跳ねる。海斗が呆れたように笑った。
「子供みたいだな」
「いいじゃん!」
そんなやり取りが愛おしい。今日の出来事を思い出しながら歩く。
「ねえ海斗」
「何だ?」
「マフユと仲良くなったんだね」
「ああ」
「妬けちゃうな~」
「何を言ってるんだ」
彼が苦笑する。その反応に少し安心する。
「冗談だよ!」
「わかってる」
「でも……」
言いかけて躊躇う。こんな感情は初めてだ。
「でも?」
「なんでもない!」
誤魔化すように走り出す。背後から海斗の笑い声が聞こえてきた。
「待てよ!」
「待たない~!」
楽しい掛け合いをしながら家路につく。明日もきっと素晴らしい一日になるだろう。
目覚ましが鳴るより早く目が覚めた。時計は6時30分。いつもなら二度寝するところだけど今日は違う。
「酒場建設だ~!」
布団を蹴飛ばして起き上がる。鏡に映る金髪ロングに満足しながらギャルメイクはバッチリだけど今日の服装は……作業用のジャージにした。昨日まではショートパンツとキャミソールだったけど
「危ない」
と海斗に注意されたのだ。
「でもさ~」
ブツブツ言いながら窓を開ける。朝日が眩しい。向かいの部屋のマフユは既に出発したようだ。
「私も行こっと!」
準備を整えて玄関に向かう途中、キッチンから良い匂いが漂ってきた。
「おはよう彩音」
「海斗~!」
彼が朝食の準備をしていた。シンプルなエプロン姿が意外と似合っている。
「今日も早いね」
「そう?」
彼は涼しい顔で卵を割っている。昨日の夜遅くまで作業していたはずなのに疲れた様子もない。
「何作ってるの?」
「スクランブルエッグ」
「美味しそう~!」
思わず近づくと海斗が少し照れたように笑った。
「まだ食べるなよ」
「え~?」
「作業場に持っていく弁当だ」
「ほんと!?」
嬉しさのあまり飛び跳ねる。海斗が作ったお弁当なんて最高すぎる!
「ありがと~!」
「気にするな」
彼は照れ隠しのように顔を背けた。その仕草が可愛くて思わず笑ってしまう。
「ねえねえ!」
「何だ?」
「今日のお昼は何?」
彼が少し考えてから答える。
「サンドイッチ」
「やったー!」
歓声を上げると海斗が呆れたように笑った。
「そんなに喜ぶことか?」
「当たり前じゃん!」
朝食を手早く済ませて準備完了。バッグにお弁当箱を入れて玄関に向かう。
「行くよ~!」
「待て待て」
海斗が追い掛けてきた。手には紙袋を持っている。
「これ持っていけ」
「何これ?」
「水筒だ」
「わお!」
受け取った瞬間の重みに驚く。中身はたっぷりのお茶のようだ。
「喉乾くからな」
「やっぱり優しい~!」
「うるさい」
彼は照れ隠しに咳払いをして先に歩き出した。その背中を見ながら密かに決意する。
「今日も頑張ろう!」
---
村の中央広場に到着すると既に多くの人々が集まっていた。昨日完成した基礎工事の周りには木材や石材が整然と積まれている。
「おはようございます!」
「おはよう彩音ちゃん!」
村人たちの笑顔に迎えられて気分が良くなる。中でも特に目を引いたのが……
「マフユさん!」
彼女は既に作業服に着替えて木材の選定をしていた。銀髪が朝日に輝いて神秘的に見える。
「おはよう」
「早いね~!」
「当然だ」
「流石~!」
二人で立ち話をしていると遠くから海斗の声が聞こえてきた。
「皆揃ってるか?」
「海斗さん!」
「おはようございます!」
村人たちが一斉に挨拶する。彼は笑顔で手を振って応えた。
「今日から壁の組み立てに入る。まずは配置確認からだ」
彼が設計図を広げる。マフユが側に寄って真剣に見入っている。その光景が何故か少し寂しい。
「ねえねえ海斗!」
「どうした彩音?」
「私の担当は?」
「ああ」
彼は設計図の一部を指差した。
「ここからここの内装を任せたい」
「おお~!」
指された範囲は思ったより広い。しかも重要な部分だ。
「大丈夫か?」
「任せて!」
「よし」
彼が頷く。その信頼が嬉しくて自然と笑顔になる。
「マフユと一緒に担当区域を確認してきてくれ」
「了解!」
マフユと共に現場へ向かう。基礎工事の上で見下ろすと村全体が見渡せる。
「すごい景色だね~」
「ああ」
マフユが静かに同意する。珍しく素直な反応だ。
「それで……」
「ん?」
「具体的にどうしたい?」
彼女の質問に腕を組んで考える。ギャルらしくキラキラした空間にしたいけど、実用性も重要だ。
「天井は高くして窓も大きめに」
「了解」
「床は温かみのある木目調」
「わかった」
「壁は……」
言いかけて迷う。単純な塗装ではつまらない。
「模様を入れたいな~」
「どのような?」
「こう……星空みたいな……」
説明に苦労しているとマフユが頷いた。
「星空の投影か」
「そうそう!」
理解力の高さに感心する。彼女はすぐに設計図に書き込み始めた。
「それと照明は?」
「間接照明で雰囲気を出したい」
「なるほど」
マフユが頷く。彼女の頭脳明晰さが頼もしい。
「他には?」
「えっと……」
「迷ったら率直に言えばいい」
「うん!」
勇気づけられて色々とアイデアを出し合う。気づけば二人とも熱中していた。
「これなら彩音らしい空間になるな」
「やったー!」
褒められて嬉しくなる。マフユはいつになく優しい表情だった。
「早速準備に取り掛かろう」
「うん!」
二人で必要な材料リストを作成する。その途中で海斗が近づいてきた。
「順調か?」
「バッチリ!」
「良かった」
彼が微笑む。その表情にドキッとしつつも平静を装う。
「じゃあ早速作業開始だ」
「了解!」
---
内装担当となった私とマフユは早速作業を開始した。まず床から着手する。
「この板を使うのか?」
「うん!温かみがあって可愛い!」
「わかった」
マフユが器用に工具を使い始めると私も負けじと作業に取り掛かる。慣れない作業で苦戦しつつも何とか形になっていく。
「彩音」
「何?」
「手元が危ない」
「え?」
指摘されて気づく。無意識に力を入れすぎていた。
「ありがとう!」
「気をつけろ」
彼女の気遣いが嬉しくて笑顔になる。こういう優しさが実は多い。
「マフユって意外と面倒見いいよね」
「……うるさい」
「照れなくてもいいのに~」
からかうと彼女は仏頂面になった。その反応が可愛くてさらに笑ってしまう。
「集中しろ」
「はーい!」
二人で黙々と作業を続ける。途中で海斗が差し入れを持ってきてくれた。
「水分補給忘れずに」
「サンキュー!」
「ありがとう」
冷たい飲み物が喉に染みる。その横で海斗が別の作業を始める。彼のクラフト能力は相変わらず見事だ。
「あそこ見てマフユ!」
「……またか」
「またって何よ~」
「いつも見惚れている」
「え?」
思わず動きが止まる。マフユの冷静な指摘に顔が熱くなる。
「そ……そんなことないし!」
「そうか?」
彼女がニヤリと笑う。珍しい表情に動揺してしまう。
「も~!」
慌てて作業に戻る。しかし視界の端では常に海斗の姿を追ってしまっていた。
---
昼食時。海斗が用意してくれたお弁当を食べながら皆で談笑する。
「彩音ちゃんのデザイン素敵だね!」
「ほんと!?」
「ええ!すごくオシャレよ」
「やったー!」
村のおばちゃんたちに褒められて鼻が高い。隣に座るマフユも静かに頷いている。
「マフユさんの協力あってこそですよ~」
「私は基本的な部分を手伝っただけだ」
「謙遜しないで~!」
食事を終えると午後の作業に向けて再び配置につく。マフユと話し合った結果、内装のコンセプトが固まってきた。
「それじゃあ早速……」
意気込んで工具を持ち上げた瞬間、
「ストップ!」
海斗の声が響いた。全員が動きを止める。
「どうしたの?」
「ちょっと待て」
彼が駆け寄ってくる。何故か深刻な表情だ。
「どうした?」
「実は……」
彼が小さく息を吸う。
「建物の重心に問題があるかもしれない」
「え!?」
衝撃的な発言に空気が凍りつく。マフユも眉をひそめた。
「どういうこと?」
「基礎工事の時点で気づくべきだった」
海斗が悔しそうに拳を握る。
「中央部が若干歪んでいる」
「修正できますか?」
「できる……はずだ」
彼の返答が少し弱々しい。普段の自信に満ちた態度とは異なる。
「私が手伝う」
「マフユ……」
「当然だ」
彼女が静かに立ち上がる。私も慌てて声を上げた。
「私も何かできることある!?」
「危険だ」
「平気だよ!」
海斗の制止を振り切るように前に出る。マフユが微かに笑った。
「助かる」
「任せて!」
三人で緊急対策会議が始まった。海斗が図面を広げて問題箇所を説明する。
「ここを補強すれば……」
「しかし資材が足りない」
「私が取ってくる!」
即座に宣言する。海斗が驚いたように私を見る。
「彩音……」
「任せてよ!」
無理に明るく振る舞う。実は怖かったけれど二人の役に立ちたかった。
「よし……頼む」
「うん!」
村の倉庫へ走り出す。途中で何度も転びそうになりながらも必死に走った。目的の資材を見つけて持ち上げる。
「重い……」
しかし諦めない。これが自分にできる唯一の貢献だから。
「もう少しだ……」
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数十分後。汗だくで現場に戻ると海斗とマフユが心配そうな顔で待っていた。
「彩音!」
「持ってきたよ!」
「無理するな!」
海斗が慌てて駆け寄ってくる。その表情に胸が締め付けられる。
「大丈夫!」
息を切らせながら笑顔を作る。彼が安堵したように息を吐いた。
「ありがとう」
「うん!」
すぐに修理作業が始まる。三人で協力して問題箇所を補強していく。徐々に不安定だった場所が安定してきた。
「もう大丈夫そうか?」
「ああ」
海斗が頷く。その表情に安堵の色が浮かんでいる。
「良かった~!」
「彩音のおかげだ」
「マフユもありがとう!」
三人で顔を見合わせて笑う。その瞬間、不思議な一体感を感じた。
「改めて」
海斗が静かに言う。
「本当に助かった」
「こちらこそ!」
「感謝する」
「これからも頑張ろうね!」
三人の誓いが新たな絆を作った気がした。
---
夕方。作業が一段落して皆で片付けに入る。疲れ果てて地面に座り込むと海斗が隣に腰掛けた。
「疲れたか?」
「うん……でも楽しかった!」
「そうか」
彼が優しく微笑む。その表情にドキッとする。
「お前のおかげだ」
「え?」
「内装案も、今回のトラブル時も」
「そんなこと……」
「あるよ」
彼が真剣な眼差しを向ける。その瞳に吸い込まれそうになる。
「ありがとう」
「こちらこそ!」
笑顔で答える。心臓の鼓動が速くなっていく。
「さて」
「うん?」
「帰るか」
「うん!」
二人並んで歩き出す。西陽が長い影を落としている。
「明日も早いから早めに寝よう」
「そうだね~」
何気ない会話が幸せだった。この時間が永遠に続けばいいのにと思う。
「あ!」
「どうした?」
「明日もお弁当作ってくれる?」
「もちろんだ」
「やったー!」
嬉しさのあまり飛び跳ねる。海斗が呆れたように笑った。
「子供みたいだな」
「いいじゃん!」
そんなやり取りが愛おしい。今日の出来事を思い出しながら歩く。
「ねえ海斗」
「何だ?」
「マフユと仲良くなったんだね」
「ああ」
「妬けちゃうな~」
「何を言ってるんだ」
彼が苦笑する。その反応に少し安心する。
「冗談だよ!」
「わかってる」
「でも……」
言いかけて躊躇う。こんな感情は初めてだ。
「でも?」
「なんでもない!」
誤魔化すように走り出す。背後から海斗の笑い声が聞こえてきた。
「待てよ!」
「待たない~!」
楽しい掛け合いをしながら家路につく。明日もきっと素晴らしい一日になるだろう。
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しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
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この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
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