クラフト生活をしながら同級生にコスプレさせて異世界をスローライフします

春風

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第21話~マフユの想い~

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第21話~マフユの想い~




木漏れ日が差し込む工房の中で、私は手元の木材に集中していた。鋸を入れる角度を何度も確かめながら慎重に切断していく。白狼族の名に恥じぬ仕事をしなければならない。

「マフユさん!そこの板材を取り付けてもらえますか?」

村人の声に我に返る。作業を中断して柱の上に登る。

「この部分か?」
「はい!完璧です!」

男が満足そうに頷く。

ふと視線を移すと黒瀬海斗が向こう側で大きな石材を加工していた。汗ばんだ額に黒髪が張り付いている。彼の姿を眺めながら私の脳裏には様々な記憶が蘇ってきた……。

---

「怪我は大丈夫か?」

最初にそう問いかけた時の彼の表情を覚えている。私が倒れているのを見て心配そうに駆け寄ってきた少年。見た目は普通の青年なのに行動は勇敢だった。

「問題ない」

そう強がった私を彼は呆れたように見つめた。

「嘘つけ。完全に骨折してるぞ」

彼の診断は正確だった。その後の処置も見事なものだった。知識と技術だけでなく、何より他人を思いやる優しさがあった。

---

「一緒に暮らしてくれないか?」

彼の申し出を受け入れた時は自分でも驚いた。白狼族の誇り高き者として素性の知れぬ者と同居することなど考えられなかったはずなのに……。

「世話になるつもりはない」

そう言った私に彼は笑って答えた。

「お互い様だろ?」

その言葉に込められた信頼感が不思議と心地よかった。

---

共同生活が始まってからは毎日が発見の連続だった。特に彼の能力は驚異的だった。

「これが『クラフト』というものか……」

目の前で無から有が生まれていく様は魔法を見ているようだった。木材が家具へ、石が建築物へと変貌していく過程は芸術的ですらあった。

「手伝ってくれるか?」

彼に頼まれると不思議と断れなかった。誰かに必要とされることの喜びを初めて知った気がする。

---

「海斗くんってさ~」

彩音がふざけ半分で言うのが日常になってきた。

「いつもマフユのこと気にかけてるよね?」


「気のせいだ」

私はそう否定するが内心では違和感を感じていた。確かに彼は私に対して特別な配慮をしている。怪我を気遣ったり食事の量を気にしたり……。

「そういうことじゃないだろ」

彼は困ったように笑うがその笑顔が妙に暖かい。

---

先日の散歩も印象的だった。夕暮れ時の森の中を二人で歩いた時間は予想以上に楽しかった。

「月が綺麗だな」

彼が何気なく言った言葉に動揺したことを覚えている。白狼族にとって月は特別な存在だ。それを共有できたことに奇妙な満足感を覚えた。

「お前もそう思うか?」

そう尋ねると彼は少し照れたように頷いた。

---

そして現在。村の酒場建設という一大事業が始まっている。彼の才能が最大限に発揮される場だ。

「基礎工事は完了した」

彼の指示のもと完成した土台は精巧そのものだった。私の白狼族としての審美眼から見ても文句のつけようがない出来栄えだ。

「次は壁だな」

彼の横顔を見つめながら考える。出会った頃より表情が柔らかくなった気がする。私との交流が影響しているのだろうか?

「マフユ?」

突然声をかけられて我に返る。

「どうした?難しい顔をして」


「何でもない」

私は平静を装う。

「ただ少し考え事をしていた」


「そうか」

彼はそれ以上追及せず作業に戻る。しかし次の瞬間、

「無理するなよ」

という言葉に胸が締め付けられる思いがした。

---

その夜。私は自分の部屋でこれまでの日々を振り返っていた。まさか人間と共存することになるとは思わなかった。しかも相手は異世界から来た男だ。

「面白い男だ」

そう呟きながら眠りにつく。瞼の裏には彼の笑顔が焼き付いていた。

---

翌朝。作業場に行くと既に彼が働いていた。

「おはよう」

爽やかな挨拶に少しだけ心が躍る。

「早いな」


「お前こそ」

そんな何気ない会話が今は大切に思える。

「今日は壁の組み立てだ」

彼の指示に従い作業を進める。私の白狼族としての知識と彼のクラフト能力が見事に融合していく。

「上手いじゃないか」

彼に褒められると素直に嬉しい。

「当然だ」

そう言いながらも内心ではもっと認めてほしいと思っている自分がいる。

---

昼休み。彼が一人で昼食を取っているのを見つけた。

「隣いいか?」
「ああ」

簡単なやり取りの後席に着く。

「最近調子はどうだ?」

唐突な質問に戸惑う。

「問題ない」


「本当か?」

彼の真剣な眼差しに圧倒される。

「……少しだけ体が重い」


「やはりな」

彼は納得したように頷く。

「無理をするなと言っただろう?」


「うるさい」

反論しようとした瞬間、

「でも心配するな」

彼の優しい言葉に言葉を失う。

「お前の体調管理は俺の責任でもある」

その言葉に含まれた意味を考えてしまう。単なる仲間以上の感情なのか?それともただの義務感なのか?

「変な奴だ」

つい本音が出てしまった。

「ははっ」

彼はおかしそうに笑う。

「よく言われるよ」

その笑顔が妙に眩しく見えた。

---

夕方。作業が一段落し彼と二人で帰路につく。

「明日も早いから早めに寝よう」

彼の提案に頷く。

「そうだな」


「今日は疲れたか?」


「少し」

正直に答えると彼は笑った。

「よく頑張ったな」

その言葉が胸に沁みる。

「……ありがとう」

思わず感謝の言葉が口をついた。

「何だ?急に」

彼が驚いたように私を見る。

「別に」

慌てて視線を逸らす。

「ただ……」


「ただ?」


「……何でもない」

この気持ちを言葉にするのは難しかった。好意と呼ぶには未熟すぎるし敬意と呼ぶには複雑すぎる。

---

家に帰りシャワーを浴びながら考える。彼に対する感情は一体何なのだろう?

「白狼族の掟では……」

呟きかけて首を振る。もう掟など関係ない。これは個人的な感情だ。

「好き……なのか?」

口に出してみると途端に恥ずかしくなる。でも否定する気にはなれなかった。

「馬鹿な……」

そう言いながらも心臓の鼓動は速くなっていた。

---

就寝前。ベッドに横になりながら天井を見つめる。明日はどのような一日になるだろう?彼と彩音と一緒にどんな冒険が待っているのだろう?

「面白い男だ」

再び呟く。それだけではない。尊敬すべき友であり頼りになるパートナーでもある。

「いつか……」

いつかこの気持ちを伝えられる日が来るのだろうか?今はまだ分からない。でも焦る必要はないと思う。時間は十分にある。

「おやすみ」

誰に言うでもなく呟き目を閉じる。瞼の裏にはやはり彼の笑顔が浮かんでいた。
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