クラフト生活をしながら同級生にコスプレさせて異世界をスローライフします

春風

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第25話 〜コスプレウェイトレスと開店の喧騒〜

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第25話 ~コスプレウェイトレスと開店の喧騒~


 

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「よーし!今日は頑張ろうね!」

朝から元気いっぱいの彩音が叫ぶ。酒場の開店初日。外は快晴で、すでに多くの人が列を作り始めている。

「落ち着け。まだ準備中だ」

マフユが冷静に釘を刺す。その言葉に反論しようと開いた彩音の口が、急に止まった。

「……そうだ!」

突然思いついたような顔で僕の方を向く。

「ねぇ海斗!今日は特別な日だし、せっかくだから――」

「何だ?」

「私のスキルを見せてあげる!」

---

「これが私の《コスプレスキル》だよ!」

酒場の裏庭で、彩音が得意げに両手を広げる。その瞬間、周囲の空気が揺らいだ。彼女の姿が一瞬霞み、次の瞬間には見慣れない衣装を身に纏っていた。

「どう?ウェイトレスちゃん!」

ピンク色のミニスカートに白いエプロン。頭には猫耳のカチューシャ。まさに「メイド服」というより「カフェ店員風」の格好だ。しかも……

「おい待て。これ明らかに胸元が……」

「サービスよ~♡」

ふざけた調子でポーズを決める彼女。しかし、その変化は単なる衣装替えではなかった。歩き方から仕草まで、完全に「プロのウェイトレス」になっている。表情の作り方さえ計算され尽くしていた。

「これが《演技力強化》……」

思わず息を呑む。コスプレ衣装を纏うことで獲得する能力ということか。単なる見た目の変化ではない。

「すごいでしょ?この服なら接客スキルがMAXになるの!」

にっこりと笑う彩音。その笑顔に違和感はないが、確かにいつもと何かが違う。プロフェッショナルというか、職人的というか……

「つまり『役になりきる』ことでスキルを強化するのか」
「当たり!だから今日は大忙しでも大丈夫!」

---

「さぁ!マフユも!」


「は?」

唐突に指名されたマフユが困惑する。しかし彩音は容赦ない。

「村の代表としてお手伝いするんでしょ?だったらサービス精神が必要でしょ!」

「意味が分からない」

「いいから!この衣装を貸してあげる!」

彩音が鞄から取り出したのは……黒を基調としたバニーガールの衣装だった。

「おい……それ本気か?」
「当然!白狼族の魅力を最大限に引き出すデザインよ!」

「断る!」

即答するマフユ。しかし彩音は諦めない。

「大丈夫!絶対似合うから!それに《解析》した結果、この衣装が一番効率良い接客スキルを発揮できるって分かったの!」


「……効率?」

その言葉にマフユの眉が僅かに動く。効率重視の彼女にとっては魅力的な提案なのかもしれない。

「そう!酔客対応成功率98%!トラブル回避力もアップ!」
「……なるほど」

---

そして5分後。マフユが渋々裏庭に戻ってきた。

「……」

言葉が出ない。純白の肌に映える漆黒のレオタード。ハイレグラインが際どい角度を描き、腰回りはフワッとした黒レース。頭にはウサ耳が装着されている。何より驚いたのは……

「目つきが違う……」

鋭い眼差しはそのままに、どこか妖艶な雰囲気が漂っている。先程までの無愛想な態度が嘘のように「魅せる」振る舞いになっていた。

「これは……接客用の演技モードなのか?」
「そうよ!『お姉さま系ウェイトレス』バージョン!」
「恥ずかしい……」

消え入りそうな声で呟くマフユ。だが、その声音さえ計算されたものに聞こえる。これも
《演技力強化》
の一環なのだろう。

---

「さぁ!オープンするよ!」

開店時間となり、扉を開けると同時に悲鳴が上がった。

「うおぉぉ!コスプレウェイトレス!?」
「あの子可愛いぞ!」
「もう一人はなんだ!?超美人じゃないか!」

予想通りの反応だ。村人だけでなく遠方から来た客たちも目を丸くしている。

「いらっしゃいませ~!」

彩音が完璧な笑顔で迎える。彼女の手捌きは見事で、注文を取る→伝票記入→料理配膳→テーブルセッティングまで一連の動作が無駄なく流れる。まるで長い間この仕事をしていたかのようだ。

「こちらお冷です」
「ありがとうございます!」

客に手渡す仕草さえ洗練されている。これが《演技力強化》の実力か。

一方マフユは……

「ご注文は?」
「ひっ……」

その迫力ある美貌に圧倒された男が固まっている。彼女は淡々とメニューを読み上げるが、その声のトーンが絶妙だ。無愛想なのに拒絶感がない。むしろ
「また声をかけられたい」
と思わせる魅力がある。

「お待たせしました。ビールです」
「あ……ありがとう……ございます……」

グラスを受け取る男の手が震えている。恋愛感情というより
「畏怖」
に近い感情を抱かせているようだ。

---

「すごいな……」

厨房から二人の働きぶりを見ていると感嘆の声が漏れる。彩音は広い視野で複数のテーブルを同時に捌き、マフユは高級クラブ並みの接客でリピーターを増やしていく。

「海斗くん!お料理追加お願い!」
「ああ」

彩音の声に我に返る。彼女の指摘通り厨房も忙しい。調理担当の村人たちと協力して料理を仕上げていく。

「海斗さん!こちらの煮込みはあと5分で!」

「了解!」

異世界での生活で培った料理スキルがここで活きるとは思わなかった。何より嬉しいのは……

「海斗~!ビール追加ね~!」
「すぐに持って行く!」

彩音の明るい声。あのコスプレ姿で呼ばれると妙に緊張する。本人は気にしていないようだが、そのプロポーションを強調する衣装にどうしても目が行ってしまう。

「バカな考えは捨てろ……今は仕事だ」

自分に言い聞かせるが、視界の端で揺れるスカートが気になって仕方ない。男の本能というものだろうか。

---

昼過ぎ。一旦ピークが過ぎたところで休憩を取る。裏庭のベンチに腰掛けた彩音が大きく伸びをする。

「いやぁ~疲れた!でも楽しかった~!」
「お前……いつの間にそんな技術を……」
「えへへ。実は昨日の夜遅くまで練習してたんだ♪」

舌をペロッと出して笑う。その仕草も完全に計算されている。これが彼女の才能なのだろう。

「マフユも上手だったよね!?」
「……知らん」

マフユは未だに恥ずかしそうに俯いている。バニーガール姿で座る姿も絵になるが、本人は耐え難い屈辱のようだ。

「でもお客さんすごく喜んでたよ!」
「それが狙いだったのだろう」

皮肉っぽく返すマフユ。しかし否定しないあたり満更でもないのかもしれない。

「ねえ海斗!明日もこの格好でいい?」
「お前がやりたいなら止めないさ」
「やったー!」

無邪気に喜ぶ彩音。その笑顔を見ていると疲れも吹き飛ぶ。とはいえ……

「あの……あまり露出しすぎるのはどうかと……」
「大丈夫だって!みんな喜んでるんだから!」

能天気な返事。確かに客の反応は上々だが、同年代の少女があのような格好で働くことには抵抗がある。父親の心境というか……兄貴分としての責任感というか……

「マフユは?続けてくれる?」
「効率的ならば構わない」

あっさりと承諾するマフユ。その理由はおそらく単純だ。彼女の場合は羞恥心よりも合理性が勝つタイプだ。

「よーし!二人とも協力してくれるなら最高の酒場にできるね!」
「当たり前だ」
「当然だ」

三人で顔を見合わせる。開店初日にして既にチームワークが形作られつつあった。

---

夕暮れ時。閉店作業を終えて片付けをしていると、常連客となった商人たちが声をかけてきた。

「黒瀬さん!今度はもっと大きな宴会場も作ってくれないか?」
「え?」


「ここだと入りきれないんですよ!あの可愛いウェイトレスさんたちの接待を皆で楽しみたくて!」
「お願いします!」

熱心な要望に面食らう。まさか開店初日でここまで評判になるとは。

「考えておきます……」
「ぜひお願いします!」

商人たちが去った後、彩音がニヤニヤしながら近づいてくる。

「やったね!海斗の腕が認められたよ!」
「半分はお前たちのおかげだろ」
「えへへ♪」

照れ隠しに頭を掻く。しかし内心では嬉しさが込み上げていた。自分が作った場所が評価される喜び。それに加えて……

「明日も来る人たちのために頑張らなきゃね!」
「ああ」


「私たちで最高の酒場にしよう!」

彩音の瞳が夕陽に輝く。その明るさに惹かれる自分がいることを否定できない。マフユも黙って頷いている。三人で作り上げるこの空間が、俺たちの新しい居場所になっていくのだろう。

---

帰り道。疲れた体を引きずりながらも会話は尽きない。

「ねぇ海斗」
「どうした?」
「私ね……本当に楽しいよ」
「何が?」
「こうやって毎日が変わっていく感じ」

彩音の言葉に足を止める。彼女の横顔には満ち足りた表情が浮かんでいる。

「前の世界ではただ流されてたけど……今は自分が選んだ道を歩いてるって実感できる」
「そうか」


「海斗と出会えて良かった」

その一言に胸が締め付けられる。彼女にとって俺との出会いが転機になったというなら……それは俺にとっても同じことだ。

「俺もだ」

素直に返すと彩音が満面の笑みを見せた。その表情だけで今日一日の疲れが吹き飛ぶ。

「さぁ!明日も頑張ろう!」
「ああ」

夕焼けに染まる道を三人で歩く。酒場の窓から漏れる灯りが星のように輝いていた。この新しい生活がどんな方向に進むのか。今はまだ分からないが……確かなことは一つだけある。

「彩音とマフユがいれば大丈夫だ」

小さな呟きを風がさらっていく。その言葉が聞こえたかどうかは定かではないが、二人の笑顔が答えを示していた。

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