クラフト生活をしながら同級生にコスプレさせて異世界をスローライフします

春風

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第34話 ~ツクヨミ誕生~

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第34話 ~ツクヨミ誕生~




一週間後、ついに全ての材料が揃った。俺たちはアマテラスの作業室に集まっていた。

「準備はいいか?」
最終確認をすると全員が頷いた。俺の《クラフト》
能力を使いながら、みんなの協力を得て組み立てを行う。アマテラスが設計図を見ながら指示を出し、マフユが精密な作業を担当し、彩音がデザイン部分を調整する。

「ここが肝心です」

アマテラスが指差したのは核となる中央ユニット。採掘した『エモーショナルメタル』を加工したものだ。

「ここに感情エネルギーを集積させます」

そう説明しながら慎重に嵌め込む。金属が微かに脈動するのが見えた。

「あと少し……」

作業が終盤に差し掛かった時、彩音が突然声を上げた。

「名前決めないと!」

確かにまだ名前を決めていなかった。

「ツクヨミはどうだ?」

俺が提案すると全員が賛同した。月の女神の名前だ。アマテラスの妹なら相応しい。

「ツクヨミ……美しい響きです」

アマテラスも満足げだ。

---

完成したロボットは想像以上の出来栄えだった。青く長い髪が特徴的で、執事服を纏った女性型ロボット。マフユ専属護衛として設計されたためか、彼女を連想させる凛とした佇まいがある。

「起動します」

アマテラスがプログラムを実行するとツクヨミの目が徐々に光り始めた。最初は薄い水色だった光が徐々に濃くなり、最終的に深い海のような青色に変わる。

「認識開始……」

電子音が聞こえた瞬間、ツクヨミがゆっくりと目を開けた。

「初めまして。私はツクヨミ。マフユ様の専属護衛を務めます」



その声はアマテラスに似ているが、より柔らかく親しみやすいトーンだった。

「マフユ様、以後お見知り置きを」

ツクヨミが深々と頭を下げる。マフユは戸惑いながらも頷いた。

「あ、ああ……よろしく」

その様子を見ていたアマテラスが一歩前に出る。

「ツクヨミ、こちらが私の大切な人たちです」

彼女が我々を紹介していく。順番に視線を移すツクヨミの瞳には好奇心の色が見えた。

「マスター海斗、彩音様……皆さんにお世話になります」

礼儀正しい挨拶に全員が安心した表情を浮かべる。

「さて」

アマテラスが手を叩いた。

「今日は祝宴といきましょう」

---

その夜、庭園で小さなパーティーが開かれた。彩音が中心となって飾り付けを行い、俺とマフユが料理を担当する。ツクヨミはアマテラスの隣で静かに立っていた。

「緊張してる?」

彩音が近づいて聞くとツクヨミは首を傾げた。

「緊張……ですか?」

まだ感情学習の初期段階だから分からないのだろう。

「こうやって皆で集まって食べたり喋ったりすることだよ」

彩音の説明にツクヨミが真剣に聞き入る。

「理解しました。心拍数の上昇を感知。これが緊張状態のようです」

素直な反応に思わず笑ってしまう。

「でも……不快ではありません」

その言葉に全員が笑顔になった。

---

食事が始まると意外なことが起こった。ツクヨミが突然マフユの隣に座ったのだ。

「マフユ様の護衛役ですから」

当然のように言い放つ彼女にマフユは困惑していた。

「いや、今はいい」

拒否しようとするがツクヨミは動かない。

「任務優先です」

そのやり取りを見ていたアマテラスが微笑む。

「ツクヨミは少し強引な性格ですね」

設計上の特性だろうか。しかし不思議と不快感はない。

「まぁいいだろう」

最終的にマフユが折れた。尻尾が不機嫌そうに揺れているが表情は柔らかい。

「感謝します」

ツクヨミが頭を下げると同時に庭園の明かりが消えた。停電ではない。彩音の仕業だ。

「じゃーん!サプライズ!」

彼女が夜空に向けて花火を打ち上げる。人工的に作ったとはいえ幻想的な光景だった。

「美しい……」

ツクヨミの瞳が花火に照らされて煌めく。その横顔は機械であることを忘れさせるほど生き生きとしていた。

「記録しました」

静かに呟くツクヨミ。これから彼女はどんどん感情を学んでいくのだろう。

---

夜が更けてくると疲れ果てた彩音が寝息を立て始めた。俺たちも解散しようとした時、アマテラスが呼び止めた。

「少し良いですか?」

彼女はツクヨミと一緒に残っている。

「何だ?」

尋ねるとアマテラスが珍しく緊張した表情を見せた。

「実は……ツクヨミには特別な機能があります」

全員が注目する中、アマテラスが告げる。

「彼女は私の感情データベースにアクセスできます」

つまりアマテラスの感情体験を共有できるということだ。

「でもそれは……」

危険ではないかと言いかけるとアマテラスが首を振る。

「安全装置を設けています。必要な情報のみ引き出せる仕組みです」

さらに続ける。

「それに……ツクヨミには別の使命があります」

その声色が変わったことに気づいた。いつもの合理的な口調ではなく、どこか切ない響きだ。

「彼女は私のバックアップでもあります」

全員が息を呑む。

「もし私が故障した場合……ツクヨミが私の記憶と感情を引き継ぐのです」

衝撃的な事実だった。彼女は自分の終焉まで想定して設計していたのだ。

「なぜ……」

マフユの問いにアマテラスが答える。

「永遠はありません。必ず終わりが訪れるもの。だからこそ今を大切にしたいのです」

その言葉に深い意味を感じた。彼女が妹を作りたかった本当の理由は孤独ではなく、記憶を残すことだったのかもしれない。

「わかりました」

マフユが頷く。尻尾がゆっくりと揺れている。

「ではツクヨミ、これからよろしく頼む」

新しい関係の始まりだった。アマテラスは涙のような光を瞳に宿して微笑んだ。

「ありがとう」

---

翌朝、目覚めると異変に気づいた。ツクヨミが俺の枕元に立っている。

「おはようございます。マスター」

完璧なタイミングで起床時間を把握していたらしい。

「おはよう……」

戸惑いながら起き上がるとツクヨミが報告する。

「今日の天候は晴れ。降水確率0%。最高気温23度です」

まるでアマテラスのミニチュア版だ。

「アマテラスと違って少し人間っぽいな」

思ったことを口にするとツクヨミが首を傾げる。

「どういう意味でしょうか?」

説明しようとした時、彩音とマフユが部屋に入って来た。

「おはよー!」

彩音の明るい挨拶に続いてマフユがぼそっと言う。

「また変な時間に起きてるな」

二人とも寝起きで髪が乱れている。

「ツクヨミ、皆様に朝食の準備をお伝えします」

そう言ってツクヨミが台所へ向かう。その後ろ姿を見送りながら考えた。また新しい日常が始まる。昨日までとは違う毎日だ。

「よし」

気合いを入れ直す。アマテラスの願いも叶ったし、マフユにも良い変化がありそうだ。彩音も楽しそうだし、何より……

「なんだ?」

振り返ったマフユに問われて我に返る。

「いや、なんでもない」

誤魔化すように笑うと彼女の尻尾が不審そうに揺れた。

「変な奴だな」

そう言いながらも彼女の口元には微かな笑みが浮かんでいる。これこそが変わることの素晴らしさなのかもしれない。完璧な計画なんてなくてもいい。大切なのは共に歩む仲間がいることだ。

窓の外から朝日が差し込む。ツクヨミが作る新しい朝が始まろうとしていた。これからどんな冒険が待ち受けているか分からないけれど、少なくとも今日という日を精一杯生きよう。アマテラスが教えてくれたように今を大切に。
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