アリスと魔王の心臓

金城sora

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VSガーゴイル

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「ちょっ!ちょっと待ってくれ!」

フラフラで肩で息をしながらウェインが止まってしまった。

「なっさけないわね、女性に遅れはとらないんじゃ無かったの?」

「・・・また・・・それか・・・・わ・・・・わるかったよ」

息も絶え絶えだ。

「力いっぱい走りすぎなのよ、歩くくらいの力を心現術で目一杯加速させるイメージで走んなきゃ」

「アリスさん凄いですね、早いものをさらに早くイメージするのは簡単ですが、ゆっくりのものをここまで加速させるのを初めて見ました」

背中でミシェルが感嘆の声をあげる。

「アリスの強さの片鱗を見た気がするな。
一体どれくらいの修業を積んだんだ?
てゆーかいくつだ?」

「女性に年齢を聞くなんて失礼な奴ね。
これでもミシェルと同い年よ。
そーいや、あんたはいくつなの?」

「僕は16才だ」

「16で飲んだくれてんじゃないわよ!
ほらっ!走るわよ!」

私はまた走り出した。

「まじかっ」

ウェインもしぶしぶ走り出した。

「ウェイン様そんなこと言ったんですか?」

背中のミシェルが小声で聞いてきた

「なにが?」

「女性に遅れはとらないとか」

あぁ

「決勝戦の前日に酒場で偶々たまたまあってね、その時に私に言ったわけじゃなくて、他の人にデカイ声で喋ってんのが聴こえたのよ」

ミシェルはクスクス笑っている

「そうだったんですか。
気を悪くしてしまってスミマセン。
ウェイン様はそうやって自分を追い込んでいくタイプなんです。」

まぁ、何となく分かってはいたが。

「別にもうなんとも思ってないわよ。
ただちょっと虐めてるだけ」

「ありがとうございます。
ウェイン様、ああやって斜に構えているようで結構努力家なんですよ」

今も後で一生懸命走っている。

「ならもっと頑張ってもらいましょうか」

私はさらにスピードをあげた。

「まじかっ」

ウェインの顔が青くなった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



目的地までかなり近づいたと思うが。

日も大分上がってきた、もう走り出して3時間くらいはたっただろうか。

「ミシェル、後どれくらいだと思う?」

「もうすぐじゃないかと思うんですが」

どおぉぉぉぉん!

いきなり轟音が響きわたった!

微かに悲鳴も聞こえる!

「ミシェル!飛ばすわよ!!」

進行方向の街道だ!

誰か襲われている!

私は全速力で飛ぶように走った

前方に火のついた馬車が横倒しになってそばに子供二人、二人を庇うように母親と思われる女性。

男性が1人、剣で魔物と戦っている!

「ミシェルッ!下ろすわよっ!!」

「はいっ!」

急ブレーキでミシェルを降ろしてまたすぐに駆け出した!

魔物は3体、あれが飛翔悪魔ガーゴイル

私はミスリルの片手剣ショートソードを抜いて男性と戦っている飛翔悪魔ガーゴイルに斬撃を飛ばした!

斬撃は音もなく飛び、一瞬で飛翔悪魔ガーゴイルを縦に真っ二つに切り裂いた!

凄い切れ味!

心で感嘆の声をあげる。

残る二匹の飛翔悪魔ガーゴイルは此方に目標を切り替えた。

子を庇う母親に向けて放とうとしていた呪文を私に向かって打ち出した!

蒼白い閃光が凄まじいスピードで襲いかかる!

渾身の力を込めて地面を蹴って跳躍した!

数メートルは飛びあがり空中で無防備になった私にもう一体の飛翔悪魔ガーゴイルが翔んで襲いかかってくる!

鋭い爪で引き裂こうとした腕を空中で切り落とす!

肩から着地して体を回転させて衝撃をいなしてすぐに飛翔悪魔ガーゴイルに向かって構える。

腕を切り飛ばした飛翔悪魔ガーゴイルが仲間の側に落ちてきて痛みで呻きながら此方を睨みつけてくる。

さっきの魔法を打ってきた飛翔悪魔ガーゴイルが此方に両手を突きだした。

また魔法か?

あんまり経験がないから、どんな魔法が飛び出してくるのか分からない。

飛び込んで行って良いものか?

はたまた、飛んできた魔法を避けてから突っ込んだ方がいいのか?

思いの外、冷静な自分に気付く。

飛翔悪魔ガーゴイルの両手が光り始め、腕を切り落とされた飛翔悪魔ガーゴイルも隙を突こうと窺っている。

両手からまた蒼白い閃光が迸る!!

心現術で最大限加速して片腕の飛翔悪魔ガーゴイルが反応する間も無く、一瞬で首を飛ばす。

もう一体の飛翔悪魔ガーゴイルはそれを見てすぐに飛び立った。

逃がすかッ!

凄まじいスピードで逃げる飛翔悪魔ガーゴイルをジャンプして斬ろうとしたが、翔ぶスピードの方が早くて届かない!

クッソ!!

一瞬歯噛みしたが苦し紛れに斬撃を飛ばすと飛翔悪魔ガーゴイルは音もなく二つに裂かれ地上に落ちていった。

空中で斬撃を飛ばせるか分かんなかったけどやれば出来るもんだ。

剣についた血を振り払って鞘に納めた。

ミスリルの片手剣ショートソードは想像異常に私の手に良く馴染んだ。

「大丈夫ですか?」

私は襲われていた親子に声をかけた。

「ありがとうございます!
助かりました!」

父親らしい男の人が御礼を言ってくる。

母親は女の子が怪我をしているらしく取り乱していた。

「あぁ!大変、何てこと!」

見ると、女の子は飛翔悪魔ガーゴイルの魔法を受けたのか腕が肩口から黒くただれていた。

「酷い」

私は手で口を覆った。

「ミシェルッ!大変!」

「エレナッ!しっかりして!」

母親が必死に呼び掛けるが女の子は浅く息をして目を開けているが意識は薄い。

思い出して回復薬ポーションを取り出そうとするが無い!

ショルダーバックだ!

ウェインはまだ遥か後ろを走っているだろう。

あんの役立たずっ!

ミシェルが追い付いて女の子を見た。

「ミシェル!回復薬ポーションは?
私のはショルダーバックに入ってて無いの!」

「はいっ!これをどうぞ!」

ミシェルは腰のポーチから回復薬ポーションを取り出して渡そうとする。

「私、使ったこと無いよっ!?」

てんぱって声が裏返った!

「では、私が」

ミシェルが女の子の前に膝をついて鉄瓶の蓋を開け、中のうす緑色に光る液体をゆっくり肩から手までかけていくと、かけられた傷口が淡く光ってみるみる傷が消えていく!

「凄い」

思わず声が漏れた。

「あぁ、ありがとうございます!」

母親が涙を浮かべながら感謝する。

「本当にありがとう。
もう、ダメかと思いました。」

父親もホッと胸を撫で下ろす。

「スッゲーや!おねーちゃん!!
むちゃくちゃ強いね!!」

兄妹らしい7~8才くらいの男の子が瞳をキラキラさせて此方を見る。

「いえいえ、無事で何よりです。
どーいたしまして、坊や。」

「是非、御礼をさせてください!
回復薬ポーションのお代も勿論、お支払致します。」

「そんな、お礼なんていいですよ。
私たち元々飛翔悪魔ガーゴイルの討伐依頼で来たんですから。
ね、ミシェル。」

「勿論です。
それにしても、始めてみた飛翔悪魔ガーゴイル三体を一瞬で倒したのには驚きました。見ているだけで何もできませんでした」

ミシェルは倒れている飛翔悪魔ガーゴイルを眺めながら呟いた。

「おねーちゃんハンターなの?」

男の子が羨望の眼差しで聞いてきた。

さっきまで殺されそうになっていたのに凄いものだ。

「そうよ、まだ始めたばっかりだけどね」

「かっこいー!俺もおっきくなったらハンターになるよ!」

可愛い、私は少年の頭をくしゃくしゃに撫でてやった。

「まずは妹を護れるくらいに強くなんなきゃね」

「うん!」

「本当にありがとうございました」

それを見ていた母親がまた、御礼を言う。

「いえいえ、娘さんの容体はどうですか?」

「はい、呼吸も落ち着いて心配無さそうです」

「良かった、でも一度教会で見てもらった方がいいですね。
馬車はまだ動きそうですか?」

「えぇ、足回りは大丈夫そうですし。
馬も無事だったので、慎重に起こせば問題無さそうです」

「そうですか。
もう1人連れが来るので、着いたら一緒に起こしましょう」


少し待つと、息も絶え絶えのウェインがやって来た。



「遅いぞ、役立たず」
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