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16話〜レッドドラゴン・ロスベール

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『まぁ、フェイが似ているのは確かに似ているのは見た目だけだ。 最初の持ち主はかなり豪快というか、破天荒な女だったからな。 だが、剣に我が入ってもう数百年にもなる。 その初代の持ち主が死んで久しい、見た目でも似ていれば懐かしくなるのは当然であろう?』

弁解するフェムノの話を聞いてもバーンダーバとフェイには「見た目がタイプだから」という理由で担い手に選んだなコイツ。

という思いが消えはしなかった。

「そうだな、確かにフェイは見目麗しい。 聖剣が担い手に選んでも納得は出来る。 ははははっ」

フェイがその言葉を聞いて耳まで真っ赤にしている。

バーンダーバは前を向いているのでフェイの反応には気付いていない。

『バンよ、見た目だけで我がフェイを選んだのは事実だが、下心があるような言い方をするでない』

「すまないすまない、少しからかっただけだ」

軽口と共に快調に進んでいるとバサッバサッという巨大な羽音が遠くから近ずいてくるのが聞こえてきた。

周りを見ると景色が高い、もうかなり中腹に近ずいているようだ。

見上げれば上空には何頭ものレッドドラゴンが旋回している。

「凄い数だな、十数頭か」

バーンダーバがまるでもうすぐ友人との待ち合わせ場所につくような気軽さで話す。

「本当に大丈夫なんですか? レッドドラゴンってすごく気性が荒いって聞きますけど」

フェイは少し怯えたように辺りを伺っている。

「まぁ、大丈夫だ。 魔物と違って言葉が通じるからな、その闘争の龍アグレスドラゴンの第一子という赤い鱗の王ロッソケーニヒの所まで連れて行ってもらおう」

いよいよ大きくなった羽音の方を見ると身の丈10メートルは超える巨大なレッドドラゴンがゆっくりと舞い降りてくる。

羽ばたくたびに風が巻き起こって砂煙を散らす。

ズシンと着地してフェイとバーンダーバを見下ろした。

その眼光は凄まじい圧力プレッシャーを放ち、並の冒険者ならそれだけで立ってもいられないだろう。

フェイは思わずバーンダーバの服の裾を掴んだ。

レッドドラゴンが「ぐるる」と喉を鳴らす。

《何をしに来られた? 魔弓のお方よ・・・》

地響きのような声が響く。

「私を知っているのか?」

《無論だ、我らが始祖を敗北にいたらしめた唯一の存在。 何故、ここを訪れたのだ》

「そうか、出来れば赤い鱗の王ロッソケーニヒに会いたいのだが、案内して貰えないか?」

《・・・》

レッドドラゴンは言葉に詰まっている。

「駄目なのか?」

《いや、不可能では無い。 だが、我らの王は長く機嫌が悪い。 もしも粗相があっても寛大に見て貰えるのであれば案内しよう》

「勿論だ、お邪魔するのは私達だ。 粗相に気をつけるならこちらだ。 案内をお願いできるか?」

《承知した》

レッドドラゴンが上を向いて《ゴアァァァッ》と咆哮を上げる。

旋回していたレッドドラゴン達が同じ方向に進路を変えて去っていった。

目の前のレッドドラゴンは赤い光に包まれたかと思うと人間に姿を変えた。

光が収まるとそこには赤と青を基調とした服を身に纏った中年の男が立っていた。

「見事な変身魔法だな」

「お褒め頂き感謝する。 今、バーンダーバ殿を迎える準備をさせているので申し訳ないが時間を貰う意味で歩いて頂いても宜しいか?」

獰猛と聞いていたレッドドラゴンとは思えない対応にフェイは戸惑っていた。

「あの、私もついて行って大丈夫なんでしょうか?」

レッドドラゴンがフェイを見る、その眼光は鋭い。

「バーンダーバ殿のお連れなら無論である」

そう言うと前を向いて歩き始めた。

バーンダーバとフェイもそれに続いて歩き始める。

「ところで、そなたの名はなんと言うのだ?」

バーンダーバが前を歩くレッドドラゴンに尋ねる。

レッドドラゴンがピタッと止まって振り返った。

「申し遅れた、我が名はロスベールという。 以後お見知り置きを」

ロスベールが手を胸に当て、貴族のように腰を折って頭を下げる。

「あの、私はフェイです」

「フェイ殿か、覚えておこう」

また前を向いて歩き始めた。

暫く歩くと凄まじい大きさの横穴がぽっかりと岩山に口を開いていた。

間違いなくレッドドラゴンの巣穴だろう、その中へとロスベールも入っていく。

そして横穴に入ってすぐに足を止めた。

横穴の入口から数メートルしか入っていない。

「此方です」

そう言って手で示したのは横穴の岩壁だった。
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