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3、労働条件はしっかり確認!
しおりを挟むなんで俺なんだよ!
鏑木さんのファンの女の子、とかだったら円満解決だっただろうに!
俺は神を呪った。
残酷にも程がある運命だ。
「…嫌だったかい?やっぱり、嘘でも『君を愛しているから』とか言った方が…」
「あ、それはマジで止めてください」
「ワガママですね」
痛みに悲鳴を上げる頭を押さえながら首を横に振る。
佐原さんに小声でワガママとか言われたが無視だ無視!
「…なら契約ってのは何なんですか?あと俺の体が必要って…」
「誤解させてしまってすみません。契約、というのは『雇用契約』のことです。…奏多のEDを治すために、貴方の力をお借りしたい」
「お、俺の…?」
…佐原さんの説明によると、これまで男として全く反応しなかった鏑木さんのアレが唯一反応したのが俺。
ならば俺を足がかりとして病気を治せるのではないかと考えたらしい。
「貴方の顔、匂い、体など…とにかくどの要素が反応して奏多の息子が復活したのかをしっかりと調べたいのです」
「…ま、まぁ…理にはかなってると思うけど…」
しかし、雇用契約か…
今の仕事は割と気に入ってるし、スケジュール的に縛られちゃうとツナ缶のライブにも行けなくなるかも…
と、頭を抱える俺を見て佐原さんはさらに口を開く。
「具体的な契約の説明する前に…奏多、そろそろスタジオに戻らないと」
「うん、そうだね。…予定時間より1時間も遅れちゃってるし」
「あ、お、俺も仕事が…」
「あなたはダメです」
鏑木さんと同じように立ち上がろうとしたが、何故か俺だけが止められてしまう。
「な、なんで…プロデューサーに怒られるの嫌なんですけど…」
「奏多が撮影をしている時に、何らかの拍子で貴方が影響して性欲が湧き上がったらどうなります?」
「……だ、大惨事だ…」
人気アイドル・鏑木奏多!
撮影中にフル勃起!
そんな雑誌の見出しが頭をよぎり、俺はまたその場に座った。
「よろしい。…では奏多、彼には私から説明しておきますので」
「うん、ありがとう佐原。それと社くん、僕の事情に巻き込んでしまって申し訳ないね」
「あ、い、いえ…」
ほんとにいい迷惑だよ!とは言えず、イケメンの申し訳なさそうな顔に思わず頭を下げる。
『社くん』
あの鏑木奏多に苗字を呼ばれ、思わず恐縮してしまったのだ。
「じゃあ、また後で」
「は、はい…」
…パタン
爽やかな笑みを浮かべた鏑木さんが控え室を出ると、俺と佐原さんは互いに向き合う。
「では…まずは契約して頂いた時の仕事の内容についてお話ししましょうか」
「えーと…ED…病気を治すために、鏑木さんが俺の何に反応するかを調べる、でしたっけ?」
「ええ、それが一番の目的です。が、他にも貴方にはやって頂きたいことがあるのです」
「他に?」
佐原さんの眼鏡が怪しく光り、俺はゴクリと息を飲む。
そして…
「はい。それは……奏多の、定期的な性処理です」
「…せい、しょり……?」
飛び出してきた単語に、俺は目を丸くした。
というか理解できない。
脳が拒絶してる。
「せ、聖書り?聖書を読むとか??」
「違います。性欲を処理することです。…端的に言えば奏多とセックスでもして頂けれb」
「やだぁあぁぁあああ!!!!!」
「…でしょうね」
あまりにも冷静…いや、冷酷な佐原さんに、俺はその場でギャン泣きした。
「いくら相手がイケメンでも、男と寝るぐらいなら死ぬ!!!」
「大丈夫です。いきなりそこまでしろとはいいません。あくまでもベストな方法をお話ししただけなので」
「なんでベストな方法を言ったんですか!いきなりハードルMAXにしないでください!」
(面倒ですね…)
佐原さんの呆れたような視線が刺さるが、俺はそれどころではない。
「そ、そんな雇用契約なら嫌です!拒否します!鏑木さんには申し訳ないですけど他を…」
「……住み込み、食費光熱費保証、手取り最低20万保証、別途特別手当てあり」
「っー!」
「無論、今のお仕事も続けていただいて構いません。こちらの仕事はせいぜい週に数時間しか時間が取れませんし」
つまり週数時間程度の勤務で月に20万円も手に入る。
その話に、俺の涙は簡単に引っ込んだ。
「……やるかどうかは後で決めます。だから、話だけ…」
「ありがとうございます社さん」
『ではご説明します』と(底が見えない)綺麗な笑顔で佐原さんは紙とペンを取り出した。
…………………
佐原さんから説明された給金と福利厚生の話をまとめるとこうだ。
・ADの仕事はそのまま続けてOK。
ただし仕事で鏑木さんと顔を合わせても普通のADと同じように振る舞うこと。
・契約中は鏑木さんと佐原さんの住んでるマンションで住み込み。
今まで住んでたアパートはそのまま、維持費として家賃は払ってくれる
・最低でも週一で鏑木さんの性処理をしなければならない。
この時の『性処理の方法』で特別手当てが発生する。
・給金は月20万+特別手当て。
さらに住み込みなので家賃不要、光熱費、食費も出してくれる。
「い、至れり尽くせりじゃん…」
「当然です。特別手当て次第では月50万も夢ではありませんよ」
「特別手当てかぁ…」
見抜きが1発5000円、手コキは1発10000円。
それ以外にも色々あるが…やはり一番お高いのは本番行為だ。
「本番、つまりゴム無しナマセックスは1発10万お支払いします」
「うへぇ、そんなに金積まれても嫌だなぁ…ちなみにその1発の単位は?」
「奏多の射精1回です」
「……わざわざ数えんのかぁ」
しかしアイドルの追っかけをする以上、お金はあればあるほど嬉しい。
前に27-CANの写真集を特典目当てに27冊まとめ買いした時は金欠で餓死するかと思ったし。
(触らなくても見抜きだけでやり過ごせば月22万は稼げる…それに家賃・光熱費・食費がいらなくなるから…)
「どうです?少しは前向きに考えて頂けますか?」
「あー…で、でもいきなりだしなぁ…」
「……なんでしたら最初の1ヶ月だけお試し雇用、という方法も可能です。その1ヶ月で嫌になったなら切ればいい訳ですし」
「ぐ、ぐぬぬ…」
これは不味い。
このままでは佐原さんに言いくるめられてしまうぞ…!
しかし『楽な労働でがっぽり稼げる』というのは非常に魅力的で、俺は唇を噛み締めながら悩み抜く。
(お金は欲しい…でも、男としてのプライドががが…!)
「…流石にすぐには決められませんよね。仕方ありません」
「えっ…」
俺の悩む顔を見かねた佐原さんは小さくため息をつくと、そっと名刺を差し出す。
「もし心が決まった時にはこちらの番号にお電話を」
「あ、は、はい…」
「…お返事、お待ちしていますね」
と、佐原さんが笑みを見せた瞬間…廊下から聞き覚えしかない怒号が響く。
『やしろぉ!!どこでサボってるんだ!もうとっくに鏑木さん撮影に入ってっぞ!!』
「うげっ、ぷ、プロデューサー…」
「かなりの時間拘束してしまって申し訳ございません。…あの方には私からご説明しておきましょう」
そう話すや、佐原さんは控え室のドアを開けてプロデューサーに声をかける。
「すみません、プロデューサーさん。彼にはちょっとお手伝いを頼んでいました」
「あっ、こ、これは鏑木さんのマネージャーさん!…いえ、あんなADでよければ幾らでも使ってやってください!」
(く、クズだ…)
先程までの怒号はどこへやら。
いきなりヘコヘコと媚びへつらうプロデューサーに、俺は心底ドン引きした。
「それにしても今日の鏑木さんは素晴らしいですね!…いや、いつも素晴らしいんですが…それにも増して表情がイキイキして…」
「おや、そうでしたか。…実は先程奏多が……」
『はやく。いまのうちに』
プロデューサーと会話しながらアイコンタクトでそう訴えかけてきた佐原さん。
俺はその好意に甘え、そそくさとその場を離れるのであった。
(プロデューサー止めてくれたのはありがたいけど、元はと言えばあの人らのせいだからな!)
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